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前回(「相続法の改正について・その1~配偶者(短期)居住権」)に引き続き、今回も相続法の改正についてお話していきます。
今回取り上げるのは、親族の特別の寄与制度(改正民法第1050条)についてのお話です。
<親族の特別の寄与制度とは?>
この制度は、相続人以外の親族が、亡くなった方(被相続人)に対して無償で療養看護などの特別の貢献をし、そのことによって遺産が維持されたり増えたような場合に、「特別寄与料」を請求することを認める制度です。
<要件①~親族(相続人などを除く)>
この制度の対象となるのは、相続人(・相続放棄者・相続欠格者・排除者)以外の、被相続人の「親族」(=6親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族(民法752条))です。
相続欠格者や排除者などはレアケースだと思いますので通常は相続人以外の親族が対象ということになりますが、具体的には以下のような場合が想定されています。
例1 被相続人=義理の母親 特別寄与者=長男の妻
長男である夫の死亡後、長男の妻が義理の母親の面倒を見ていたケース(夫が義母より先に亡くなると、妻は義母の相続について相続権がない)
例2 被相続人=兄 特別寄与者=妹
兄には妻子がいたが折り合いが悪かったので別居しており、代わりに妹が兄の面倒を見ていたケース(兄の相続人は妻子のため、妹は兄の相続について相続権がない)
例3 被相続人=義理の父親 特別寄与者=妻の連れ子
義理の父親が母と結婚したが、母の連れ子とは養子縁組していなかったところ、母の死後に連れ子が義理の父親の面倒を見ていたケース(母の連れ子には義理の父親の相続権はない)
【内縁の妻は対象外】
また、法律で「親族」の範囲が決まっているため、内縁の妻が内縁の夫の母親の看病をしていた場合にはこの制度の対象にはなりません。
<要件②~療養看護その他の労務を提供したこと>
特別寄与料が認められるには、被相続人のために療養看護その他「労務を提供したこと」が必要です。
労務の提供が必要ですので、金銭的に援助した場合は対象になりません(この点で、相続人自身の「寄与分」の制度とは異なります)。
<要件③~無償であること>
労務の提供は「無償」であることが必要です。
したがって、面倒を見る代わりに金銭的な対価を得ていた場合(生活費を負担してもらっていた場合など)や、被相続人の所有する建物に住まわせてもらっていたなどの場合には対象にならない可能性があります。
<要件④~財産の維持又は増加に「特別の寄与」をしたこと>
「特別の寄与」、すなわち、親族間で通常期待される程度を超える貢献をしたことが必要であり、ここでいう「特別」とは、貢献の程度が一定程度を越えることを意味するとされていますが、どの程度のことをすれば特別の寄与をしたことになるかは現時点では何とも言えないところです。
また、たとえ無償で労務を提供していたとしても、財産の維持・増加に寄与したとはいえない場合には、この制度による特別寄与料の請求はできないことにも注意が必要です(たとえば、交通事故で死亡し、多額の賠償金が支払われた場合などが考えられます)。
<特別寄与料は誰にどうやって請求するのか?>
特別寄与料は、相続人に対して請求できる権利ですが、それぞれの相続人に対しては、法定相続分(あるいは指定相続分)の割合で請求することができます。
具体的な請求方法について、法律では、まずは相続人と話し合いをすることとしていますが、折り合いがつかないときやそもそも話し合いができないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を求める審判の申立をすることができ、家庭裁判所に金額を決めてもらうことができます。
なお、この申立は、遺産分割と同時に行う必要はありません(遺産分割の審判が係属しているときに、裁判所の裁量で遺産分割と同時進行とされる場合はあると思いますが、あくまで遺産分割とは別の問題です)。
<特別寄与料には上限がある>
特別寄与料は無制限に認められるものではなく、【相続開始時の遺産額-遺贈の額】が上限となっています。
したがって、たとえば相続開始時の遺産が全体で1000万円だったが、その中から700万円を誰かにあげるという遺言があった場合には、特別寄与料の上限は300万円となります。
要するに、親族の特別寄与料よりも、被相続人の最後の意思である遺贈の方が優先されるということです。
<期間制限に注意>
特別寄与料の請求は、①又は②のいずれかまでに家裁に申立をすることが必要ですが、期間が短いので注意を要します。
①相続開始及び相続人を知ったときから6ヶ月
②相続開始から1年間
<施行時期>
この改正については、2019年7月1日が施行日となっています。
弁護士 平本 丈之亮
平成30年7月6日、相続に関する法律を改正する法律案が2つ成立しました(「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」・「法務局における遺言書の保管等に関する法律」)。
この改正の内容は多岐にわたりますが、改正によって相続手続に大きな変更がありましたので、これから数回に分け、重要な改正についてご説明していきたいと思います。
今回は、第1回目として、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」についてご説明したいと思います。
配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは、夫や妻が亡くなったときに、配偶者である妻あるいは夫が被相続人所有の建物に住んでいた場合、その建物を無償で使うことができるという権利です(固定資産税など通常の経費は負担が必要です)。
【どのような場合に権利が発生するのか?】
配偶者居住権が発生するケースは以下の場合とされています。
①遺産分割手続(協議・調停・審判)
②遺贈・死因贈与
このように、配偶者居住権は相続の発生によって当然に取得できるというものではなく、被相続人の意思表示によるか(遺贈・死因贈与)、相続人との間の話し合い(協議・調停)、あるいは裁判所の判断(審判)が条件となっています。
また、家裁での審判の場合は、①共同相続人がこの居住権を付与することについて合意している場合、②配偶者が居住権の取得を希望し、かつ、建物を取得することになる者の不利益を考慮してもなお配偶者の生活維持のため特に必要な場合のいずれかに限定されており、ハードルが高くなっています。
【共有物件の場合は?】
建物が元々被相続人と第三者との共有だった場合には、第三者の負担が大きいため配偶者居住権は取得できません。
これに対して、元々被相続人と配偶者の共有だった建物については、配偶者居住権を取得できる可能性があります。
【配偶者居住権の財産評価について】
配偶者居住権は、財産的価値のある建物を無償で使用できる権利ですから、居住権自体に財産的価値があります。
そのため、建物以外にも預金などの遺産があるケースであれば、居住権の価値を適正に評価して、居住権を得る配偶者と他の相続人との間が公平になるように分配内容を調整していくことが必要となります。
また、土地建物以外にめぼしい財産がないケースでも、配偶者居住権を設定するのであれば、遺産としては、配偶者居住権、居住権の負担のついた建物所有権、そして敷地がありますから、相続人間での公平を保つためにはやはり居住権の評価が重要となります。
もっとも、居住権は目に見えないものであることや、新しく創設された制度であるため、現時点で具体的な評価方法は確立されていません。そのため、将来的には居住権の財産価値を巡って紛争になることも予想され、弁護士としてはこの点が気になるところです。
配偶者短期居住権
以上で説明したところは、あくまで遺産分割や遺言などによって配偶者が権利を取得するというお話でした。
もっとも、遺産分割の手続が終わり建物の所有者が決まるまでの間、配偶者としては一体どこに住めばいいのか困るケースもあるでしょうし、遺贈などによって建物が配偶者以外の人に相続された場合には、配偶者に退去までの準備期間を与えて保護する必要があります。
そこで、相続によって不安定な立場におかれる配偶者を保護するために新設されたのが配偶者短期居住権です。
【どのような場合に発生するのか?】
配偶者短期居住権は、配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に無償で住んでいた場合に、法律上当然に発生します。
配偶者居住権のように、遺産分割手続や遺言の結果発生するわけではありません。
【存続期間は?】
配偶者短期居住権は、先ほどの配偶者居住権と異なり、相続開始後のある程度の範囲に限り居住権を保護しようというものですので、その観点から期間制限が設けられています。
配偶者短期居住権が発生するケースは、①遺産分割が必要な場合と、②遺産分割が不要な場合の2パターンがあり、いずれのパターンかによって存続期間が異なります。
・遺産分割が必要な場合
特に遺言などがなく、単純に建物について遺産分割手続をする場合です。
この場合、配偶者には、①と②のいずれか長い方まで居住権が認められます。
①遺産分割が成立するまで
②相続開始から6ヶ月のいずれの期間まで
したがって、たとえば遺産分割協議が終了するまで1年かかれば、短期居住権は1年間となり、その間、配偶者は賃料を支払う必要はありません(固定資産税など通常の経費負担が必要なのは配偶者居住権と同じです)。
また、遺産分割協議が3ヶ月で成立し、配偶者以外の相続人が建物を取得したとしても、配偶者は残り3ヶ月はその建物に無償で住み続けることができます。
・遺産分割が不要な場合
配偶者の住んでいた建物が、被相続人の遺言によって他の者に遺贈された場合が典型例です。
この場合、配偶者は建物それ自体について権利を持ちません(遺留分を侵害するような遺贈だった場合、従前、遺留分を侵害された者は建物に対して一定の持分を取得するとされていましたが、改正法によって、このようなケースでも建物に対する権利が発生するのではなく、あくまで遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求権が発生することになりました)。
しかし、遺贈などによって突然住居を失うことになると配偶者にとって酷なことがあることから、この場合には、権利を取得した者から退去の申し入れがあったときから6ヶ月間、配偶者はその建物に居住することができます。
施行日
この制度が施行されるのは、2020年4月1日からとなっています。
弁護士 平本丈之亮