寺院等に支払った永代供養料は、中途解約によって返還してもらえるのか?

 

 お墓にまつわる契約の中に、遺骨や遺品の永代供養を寺院や霊園に依頼するというものがあります。

 

 このような永代供養も寺院等との間における契約の一種ですが、永代供養は長年にわたって遺骨等を供養をしてもらうことを内容とするものであるため、契約時に高額の永代供養料をまとめて支払うことがあります。

 

 もっとも、当初はその寺院等に永代供養をお願いするつもりであったものの、途中で事情が変わってしまい永代供養の契約を中途で取りやめたいという場合もあり、そのような場合に先払いした永代供養料の返還を巡ってトラブルとなるケースもあります。

 

中途解約によって、永代供養料の返還を求めることはできるのか?

 この点については裁判例があり、永代供養の契約は法的には「永代供養」という役務提供を行うことを約する準委任契約であるとして、民法651条によっていつでも中途解除することができると判断されたものがあります(東京地裁平成26年5月27日判決、大阪地裁令和2年12月10日判決)。

 

 もっとも、このような裁判例を前提にしたとしても、準委任契約の解除の効力は将来の部分にのみ生じることから、最終的に返還を求めることができる範囲は未履行の部分に限られます。

 

 そして、上記裁判例を前提とすると、対象者がお亡くなりになって既に永代供養が始まった後に解除する場合には、契約時に支払った永代供養料の全額ではなく、そのうちの一部のみが返還されることになります(上記東京地裁判決も同様の考えに立っていますが、このケースでは生前に解除しているため全額の返還請求が認められています)。

 

永代供養料の不返還特約があった場合は?

 寺院等と個人との間で締結された永代供養に関する契約は消費者契約にあたるため、いったん支払った永代供養料は一切返還しないとの特約は消費者契約法第9条1号の適用を受けることになります。

 

 消費者契約法第9条1号は「解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」内容の契約条項を無効としていますが、上記大阪地裁判決では、解除の時期が具体的な役務提供等を受ける前の段階であったことから、返還しない旨の規定は平均的損害を超える内容の契約条項にあたり無効と判断しています。

 

 なお、上記大阪地裁判決のケースは、納骨堂で遺骨等を保管する契約と永代供養の2つの契約が混合したものであると認定されていますが、寺院に支払った額の中には、①納骨堂の利用や供養に対する報酬部分のほかに、②納骨堂を利用して供養を受けることができる地位を付与されて宗教的感情を満足させる効果が生じたことに対する対価部分の両方が含まれているとして、②の部分は地位取得に対する対価であるから解除によっても返還義務は生じないと判断し、支払った額全体の7割の限度で返還請求が認められています(裁判所は、納骨堂での保管契約は諾成的寄託契約に該当し、民法第662条に基づいていつでも解約可能、永代供養は先ほど述べたとおり準委任契約に該当するため民法651条によって解約可能、としています)。

 

 

 永代供養料は高額になることもあり、上記のような裁判例が存在するように解約に伴ってトラブルになることがありますので、永代供養をお願いする場合には途中で解約するようなことがないかを慎重に検討する必要があり、また、途中で解約した場合は永代供養料の返還についてどのような処理がなされるのかをあらかじめ寺院等に確認しておくことをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

2021年6月12日 | カテゴリー : コラム, 消費者 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所