個人再生の認可決定後、支払いできなくなったらどうする?

 

 個人再生は、債権の一部を減免してもらい、残りの借金を3年から5年以内で支払っていくことを内容とする法的手続ですが、自己破産と違って一定期間支払いを継続していくことが予定されている手続であるため、何らかの事情で支払いができなくなるケースもあります。

 

 認可決定された再生計画に基づく支払いを怠った場合、裁判所が評価した債権額の10分の1以上の債権を有する債権者は再生計画の取消を申し立てることできますが(民事再生法189条1項2号、同3項)、そうなった場合、それまで支払った分は無駄にはならないものの(同法189条7項)、元々の債務が復活してしまうという大きな不利益を受けることになります。

 

 そのため、事情によって再生計画の履行が困難となったときは何らかの対策をとる必要がありますが、今回は、再生計画の遂行が難しくなったときにどのような方法があり得るかお話ししたいと思います。

 

・再生計画の変更

 

 再生計画を遂行することが困難となった場合、一定の条件をみたせば、当初の再生計画の最終期限から2年以内に限り支払期限を延長することができます。(民事再生法234条1項)。

 

 なお、解釈上、全体で2年以内の範囲に収まれば延長回数自体は2回以上でも認められるとされていますが、変更できるのは期間のみであり金額の減免は認められていません。

 

 再生計画の変更が認められるには、①やむを得ない事由により、②再生計画を遂行することが著しく困難となったことが必要であり、具体的には債務者のコントロールが及ばない事情によって当初の計画では弁済を継続することは困難だが、期間を延長すれば何とかやりくりできそうだという場合を意味しますが、適用条件が厳しいため実際の利用件数は多くないようです。 

 

・ハードシップ免責

 

 また、再生計画の遂行が極めて困難な場合には「ハードシップ免責」(民事再生法235条)という制度により残債務の免除が認められますが、以下のとおり条件は非常に厳しいものとなっています。

 

①債務者の責めに帰することができない事由により再生計画の遂行が極めて困難となったこと

 

②各債権の4分の3以上の弁済を終えていること

 

③免責することが再生債権者の一般の利益に反しないこと

 

④再生計画の変更が極めて困難であること

 

 再生計画の変更は再生計画の遂行が「著しく困難」となったことが必要であるのに対し、ハードシップ免責では再生計画を遂行することが「極めて困難」となったことが要求されており(①)、再生計画の変更よりも条件が厳しく制限されています。

 

 また、③の要件についても、当初の再生計画案における清算価値を下回らないことが必要であることを意味することから、たとえば、当時の清算価値が200万であったため再生計画案に基づく米債総額が200万円になったようなケースだとこの条件を満たすたすことはできません(他方、負債の5分の1が200万円で、清算価値が100万だったため弁済総額が200万になったようなケースであればこの要件をクリアできます)。

 

 このように、ハードシップ免責は非常に条件が厳しいことから、この制度によって免責が得られる例は少ないと思います。

 

・再度の個人再生

 

 以上のような方法以外にも、再生計画の認可決定確定後に支払いが困難となった場合、再度の個人再生の申立が可能です(民事再生法190条)。

 

 再度の個人再生手続が開始されると、当初の認可決定によって減免された債務は元に戻りますが、それまでの間に行った弁済は有効です(民事再生法190条1項但書)。

 

・自己破産

 

 以上のいずれも難しい場合、そのままでは支払いができないわけですから、最終的には自己破産をせざるを得ないものと思われます。

 

 再生計画履行中に破産手続開始決定があった場合、個人再生によって減免された債権は既に支払った分を除いてもとに戻りますが(民事再生法190条1項)、破産手続によって免責されれば支払いをする必要はなくなります。

 

 

 以上の通り、個人再生の認可決定後に支払いが困難となった場合には法的な対処法がいくつかありますが、再生計画の変更などは要件が厳しくなっているため、早めに弁護士に相談していただきたいと思います。

 

弁護士 平本丈之亮