遺言書の探し方

 

相続のご相談で、亡くなった親が遺言を作成していたかどうか調べたいというご質問を受けることががあります。

 

遺言を作成する場合、遺言をした方は関係者に遺言の存在を明かしていることも多いところですが、中には家族との関係を気にして生前に遺言の所在や内容を明確にしないまま亡くなってしまい、残された相続人が困るケースもあります。

 

公正証書遺言

 

平成元年以降に作成された遺言公正証書については遺言検索システムで管理されているため、公証役場で遺言公正証書の有無を検索することが可能ですが、この制度を利用する場合、①遺言者の除籍謄本等ご本人が死亡した事実を証明する書類、②相続人の戸籍謄本、③本人確認書類、を提出することになります(検索そのものについては費用はかかりません)。

 

この検索システムを利用した場合、公証役場から遺言検索照会結果通知書(遺言検索システム照会結果通知書)が発行され、これに遺言公正証書の有無が記載されます。

 

ただし、最寄りの公証役場で検索できるのは遺言公正証書の有無と保管先の公証役場などの基本的な情報にとどまりますので、遺言の内容を確認するには、別途、遺言を作成した公証役場に遺言公正証書のコピー(謄本)を申請する必要があります。

 

自筆証書遺言

 

令和2年から自筆証書遺言保管制度が始まったことにより遺言保管所(法務局)において自筆証書遺言の保管の有無などを確認することが可能となり、申請すると保管の事実の有無が記載された遺言書保管事実証明書が発行されます。

 

こちらの請求についても遺言者の死亡の事実を証明する書類の提出が必要ですが、それ以外にも請求者の住民票や相続人の戸籍謄本等の本人確認書類が求められるほか、手数料として800円分の収入印紙や、郵便で受け取るときは返信用封筒と切手が必要となります。

 

自筆証書遺言が遺言保管所に保管されている場合には、別途、遺言書情報証明書の交付請求を行うことで遺言書の内容を確認することができますが、遺言書保管制度によって保管された自筆証書遺言については家庭裁判所での検認手続が不要となります。

 

他方、遺言保管所に保管されていない自筆証書遺言書については、残念ながらこれといった決定的な探し方はありませんので、これまでどおり故人の自宅を捜索したり取引先の金融機関に貸金庫の有無を確認するなど地道な捜索活動が必要となります。

 

 

遺言は被相続人の最後の意思ですので、せっかく作成した遺言が行方不明になってしまわないよう、遺言の存在については慎重に調査していただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

2025年2月18日 | カテゴリー : コラム, 相続 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所