非親権者の再婚と養育費の関係~離婚⑩~

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 前回までのコラムでは、親権者(=権利者)が再婚した場合における養育費への影響についてお話ししました。

 子どものいる夫婦が離婚後に再婚するケースとしては、大きくわけて以下の4パターンがありますが、今回は、子どもを引き取らなかった側(非親権者=義務者)が再婚した場合と養育費への影響について、③と④のケースをまとめて取り上げます。

 また、最後に、これと似たようなケースとして、義務者と再婚相手との間で子どもが生まれた場合についても取り上げます。

 

①親権者(=権利者)が再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組した場合

(←前々回のコラム

②親権者(=権利者)が再婚し、子どもは再婚相手と養子縁組しない場合

(←前回のコラム

③非親権者(=義務者)が再婚し、再婚相手の連れ子と養子縁組した場合

(または、再婚相手との間で子どもが生まれた場合)

④非親権者(=義務者)が再婚し、再婚相手の連れ子と養子縁組しない場合

 

 

<再婚+養子縁組→養育費減免の可能性あり>

  子どもを引き取らなかった側(非親権者=義務者)が再婚し、再婚相手の連れ子と養子縁組した場合、義務者は、①前の配偶者との間の子どものほかに、新たに②再婚相手、③養子、を扶養する義務を負います。

 このように、義務者が再婚して連れ子と養子縁組した場合には、義務者は扶養しなければならない人数が増えるため、前のパートナーとの間で取り決めた養育費が減額される可能性があります。

 

 ただし、一旦取り決めた養育費の減免が認められるには、取り決めをした当時、義務者が予想できなかった事情の変更があった場合に限られるとされていますので、たとえば、離婚の当時すでに再婚相手と交際していたとか、離婚後、短期間のうちに再婚相手と交際を開始して再婚したようなケースだと、そもそも再婚と養子縁組は義務者の予想の範囲内であったとして養育費の減免が認められないことがありますので、その点には注意が必要です。 

 

 

<再婚のみ→養育費に影響なし>

 これに対して、義務者が再婚したものの再婚相手の連れ子と養子縁組しなかった場合には、原則として、前のパートナーとの間の子どもの養育費に影響はありません。

 このようなケースでは、義務者は法的に連れ子を扶養する義務を負わないからです。

 

 

<再婚+養子縁組→養育費はどの程度影響を受けるか?>

 では、義務者が再婚して養子縁組したことが、前のパートナーとの間の子どもの養育費を減免する理由になると認められたとして、果たしてどれくらいの影響があるのでしょうか?

 この点は再婚相手にどの程度の収入があるかによって異なりますが、ここから先は具体例をもとに実際に計算してみて、どのような変化が生じうるのかを説明していきたいと思います(計算式は簡易算定表のもとになった標準算定方式を用います)。

 

【設例】

A 権利者:元妻 

  年間総収入:250万円(給与)

B 義務者:元夫

  年間総収入:500万円(給与)

C 権利者と義務者との間の子ども

  1名(10歳)

D 再婚相手

E 再婚相手の連れ子

  1名(15歳)

 

 

【再婚する前のCの養育費】

 まず、BがDと再婚する前のCに対する養育費については、標準算定方式では以下のような式で算出します。

 

Cへの養育費(年額)

 =義務者の基礎収入

 ×Cの生活費指数

 ÷(Bの生活費指数+Cの生活費指数)

 ×Bの基礎収入

 ÷(Bの基礎収入×Aの基礎収入)

 

<基礎収入>

 総収入から税金や職業費、住居費、医療費等を除いたもの。

 実務上は総収入に一定の「基礎収入割合」(%)をかけて計算する。

 250万円の給与所得者であれば概ね39%、250万円だと概ね38%

 のため、AとBの基礎収入はそれぞれ以下の通りとなる。

 

 A 250万円×39%=97万5000円

 B 500万円×38%=190万円

 

<生活費指数>

 両親の間で子どもの養育費を按分計算する際に用いる指数で、生活保護基準

 や教育費に関する統計から以下の通り導き出される。

 

 義務者(B):100 

 15歳未満の子(C):55

 15歳以上の子(E):90

 

 

 上記の式をもとに計算すると、BのCに対する養育費は以下の通りです。

 

 190万円

 ×55÷(100+55)

 ×190万円

 ÷(190万円+97.5万円)

 =44万5554円

 (月額3万7129円) 

 

 

【再婚相手が無収入の場合】

 これに対して、義務者BがDと再婚して連れ子Eと養子縁組したが、再婚相手Dが無収入だった場合には、Bは、再婚と養子縁組によって新たにDとEを扶養する義務を負うことになるため、Cの元々の養育費から、DとEの生活費に振り分ける分を差し引くことになります。

 具体的には、このようなケースでは、Cの養育費について以下のような計算式によって修正を図ります。

 

Cへの養育費(年額)

 =Bの基礎収入

 ×Cの生活費指数

 ÷(Bの生活費指数+Cの生活費指数

    Dの生活費指数+Eの生活費指数

 ×Bの基礎収入

 ÷(Bの基礎収入×Aの基礎収入)

 

<生活費指数>

 義務者(B):100

 15歳未満の子(C):55

 15歳以上の子(E):90

 再婚相手(D):55

 

 なお、再計算にあたって使用するDの生活費指数は55としますが、これは、通常、成人の生活費指数は100として計算するところ、再婚相手は義務者と同居していて住居費がかからず、教育費も発生しないためです。

 

 上記の式をもとに計算すると、再婚と養子縁組後のCに対する養育費は以下の通りです。

 

 190万円×55

 ÷(100+55+55+90

 ×190万円

 ÷(190万円+97.5万円)

 =230,202円

 (月額1万9183円) 

 

 

【無収入でも収入がある場合と同視される場合もある(潜在的稼働能力)】

 なお、再婚相手Dが無収入であっても、働くことに支障がない(連れ子Eが大きいなど)場合には無収入として扱うのではなく、稼働能力を考慮して、収入がある場合と同視して計算されることがあります。

 

 

【再婚相手に十分な収入がある場合】

1.再婚相手Dの生活費は考慮しなくて良い

 次に、Dが自分の生活費を賄うだけの十分な収入を得ている場合(あるいは収入があると同視できる場合)には、BがDを扶養する必要はありませんので、Cの養育費を計算するにあたってDの生活費は考慮しません(=Dの生活費指数は加算しない)。

 

2.養子Eの生活費は考慮するが、制限される可能性あり

 また、このような場合には、Dに十分な収入がある以上、Eの生活費については養親となったBと実親のDがそれぞれ負担をするべきであるという理由から、Eの生活費指数について、Dが無収入のケースよりも減らすべきである、という考え方があります。

 他方で、Dに収入があったとしてもEの生活費指数を修正する必要まではないという考え方もあるようです。

 このように、この点は議論があるところですが、非常に細かい話ですので、ここでは、Dに十分な収入があることはEの生活費指数を減らす方向で考慮する、という考え方をもとに計算例を示します(具体的には、Eの生活費指数90を養親の収入と実親の収入で按分し、90から実親の収入に対応する指数分を差し引きます)。

 

【設例】

A 権利者:元妻

  年間総収入:250万円(給与)

B 義務者:元夫

  年間総収入:500万円(給与)

C 権利者と義務者との間の子ども

  1名(10歳)

D 再婚相手

  年間総収入:500万円(給与)

E 再婚相手の連れ子

  1名(15歳)

 

Cへの養育費(年額)

 =Bの基礎収入

 ×Cの生活費指数

 ÷(Bの生活費指数+Cの生活費指数

           +Eの生活費指数

 ×Bの基礎収入

 ÷(Bの基礎収入×Aの基礎収入)

 

<生活費指数>

 義務者(B):100

 15歳未満の子(C):55

 15歳以上の子(E):45→※

 再婚相手(D):0 

  ∵Dは自分の収入で生活できる

 

<Eの生活費指数の修正>・・・※

 義務者Bと再婚相手Dそれぞれの収入で養子Eの生活費割合を按分し、

 元の指数からDが負担すべき部分を差し引く

 

 Eの生活費指数

 -Eの生活費指数

   ×{Bの収入÷(Bの収入+Dの収入)}

 =90

  -90×{500万円

   ÷(500万円+500万円)}

 =45  

 

 190万円

 ×55÷(100+55+45

 ×190万円

 ÷(190万円+97.5万円)

 =345,304円

 (月額2万8775円

 

 

[再婚相手に収入はあるが不十分な場合]

 このケースでは、Cの養育費を考えるにあたって、Eの生活費指数を加算するとともに、Dの生活費指数も加算します。

 ただし、不十分とはいえ、一応、Dにも収入があるため、Dの収入を計算に反映させる必要があります。

 Dの収入をどのような形で反映するかは考え方が分かれているようですが、ここでは分かりやすい計算方法として、Dの基礎収入をBの基礎収入に合算して計算する方法をもとに、計算例を示します。

 なお、Dに収入があるとすると、先ほど述べた場合と同じように、Eの生活費指数も減らす必要があるではないかが一応問題になりそうですが、結局のところDは自分の生活費を賄うだけの収入を得ておらず、Eの生活費を負担できる状態ではないのですから、収入が不十分な場合にはEの生活費指数まで修正する必要はありません。

 

A 権利者:元妻

  年間総収入:250万円(給与)

B 義務者:元夫

  年間総収入:500万円(給与)

C 権利者と義務者との間の子ども

  1名(10歳)

D 再婚相手

  年間総収入:50万円(給与)

E 再婚相手の連れ子

  1名(15歳)

 

Cへの養育費(年額)

 =(Bの基礎収入+Dの基礎収入

 ×Cの生活費指数

 ÷(Bの生活費指数+Cの生活費指数

  Dの生活費指数+Eの生活費指数

 ×Bの基礎収入

 ÷(Bの基礎収入×Aの基礎収入)

 

<基礎収入>

 A 250万円×39%=97万5000円

 B 500万円×38%=190万円

 D 50万円×42%=21万円

 

<生活費指数>

 義務者(B):100

 15歳未満の子(C):55

 15歳以上の子(E):90

 再婚相手(D):55

 

(190万円+21万円

 ×55

 ÷(100+55+55+90)

 ×190万円

 ÷(190万円+97.5万円)

 =255,646円

 (月額2万1303円) 

 

 

<再婚相手との間に子どもが生まれた場合も同じ>

 以上述べてきたところは、義務者が再婚相手の連れ子と養子縁組した場合ですが、義務者と再婚相手との間で子どもが生まれた場合も、養子縁組した場合と同じような計算で修正を図ることになります。

 

 

弁護士 平本丈之亮