離婚後、子どもを引き取った側(権利者)が再婚したものの再婚相手と養子縁組はさせなかった場合、再婚相手は子どもに対する扶養義務を負っていないため、義務者は養育費の支払義務を免れないことが一般的です。
しかし、再婚相手が裕福で実際上も子どもを養育しているにもかかわらず、形式として養子縁組をしていないというだけで義務者の負担を軽減できないとすることは事案によっては義務者に酷な場合もあります。
そこで、このような場合、再婚相手の収入を権利者本人の収入とみなして養育費の減額を認める余地はないのが問題になることがありますが、今回はこのような考え方を採用した裁判例を紹介します。
養育費の減額が認められるには合意当時予測できなかった事情の変更があり、当初の合意の内容が実情に適合せず相当性を欠くに到ったことが必要とされていますが、上記裁判例では権利者が裕福な者と再婚して自身の子どもが事実上の養子として養育される状況にあるという事態は事情の変更にあたると認めています。
その上で、本件では再婚相手の基礎収入のうち、事実上の養子に振り分けられるべき生活費の部分を権利者自身の収入に合算(上乗せ)することにより養育費の減額を認める、という判断を下しています。
このケースは再婚相手が経済的に余裕があると思われる医師であったことや、減額を求められた権利者側が再婚相手の確定申告書等の収入資料を開示しなかったという特殊な事情があり(裁判所は再婚相手の職業や権利者の態度等から再婚相手の事業収入を算定表上の上限額である1567万円はあるはずと事実認定。)、再婚したが養子縁組していないというケースすべてに妥当するかは何とも言えないところですが、同種事案があった場合には参考になるものと思われるため紹介した次第です。
弁護士 平本丈之亮