離婚手続には、大きく分けて、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚があります(そのほかにも審判離婚がありますが、他に比べてマイナーなため割愛します)。
このうち裁判離婚は、協議も調停もダメという場合の最後の手段ですが、実際に裁判まで行く方は離婚全体でみれば少なく、多くの方は協議離婚か、それがダメでも調停離婚までで解決しています。
ところで、具体的にこれから離婚の話し合いに入るという段階において、まずは協議離婚で進めるのが良いのか、それとも最初から離婚調停で進めるのが良いのかはなかなか悩ましい問題です。
まずは協議離婚から
もっとも、当職が協議離婚と離婚調停のどちらにするか悩んでいるというご相談を受けた場合、概ね以下のような条件をみたすのであれば、まずは協議離婚での解決を目指し、うまくいかなかったら調停を起こしてはどうですかとお伝えします。
①離婚自体について争いがない
②親権に争いがない
③面会交流についても深刻な争いがない
③DVによる身の危険がない
|
以上のような条件をみたす場合、協議すべき内容は慰謝料や財産分与、養育費などの金銭面の問題や、子どもの面会交流の頻度等にとどまることが多くなりますが、このようなケースであれば調停をせずとも、当事者の話し合いによる早期解決が相応に見込めるためです。
ただし、当事者の協議で離婚するといっても、財産分与などの金銭の支払いを約束したり養育費の定めをするような場合には、相手の不払いへの対策あるいは離婚後の追加請求等のトラブル防止のため、最低でも離婚協議書は作成するようにし、できれば、さらにそれを公正証書にしておくことがお勧めです。
また、「協議によって解決できそう」という見通しはあくまで協議に入る前の想像によるものでしかなく、実際に協議に入った途端、配偶者の態度が急変するということは残念ながらありますので、無駄な時間を極力省くためには、どの時点で打ち切るべきかを常に考えながら協議を進める必要があります。
離婚調停が望ましいケース
他方で、以下のような場合には協議では良い結果が得られる可能性が低いことから、最初から離婚調停を起こすことも検討した方が良いと思います。
①相手が離婚を明確に拒否している
②親権や面会交流について深刻な争いがある
③DV事案
④金銭面で支払いを拒否する態度を明確にしている
⑤離婚の可否・条件について態度がコロコロ変わる
|
上記のようなケースはおよそ当事者間の協議で折り合いがつかず、協議にかけた時間が無駄になる可能性が高いため、訴訟提起も見据えたうえで早期に公の手続で進めることが望ましいと思います(特に③のケースは、単なる時間のロスだけではなく危害防止のため裁判所を関与させる必要が高いケースです)。
また、一方配偶者が協議の段階では強気であっても、いざ調停に移行すると相手の離婚意思が堅いことを悟って諦めたり、調停委員の説得で態度が軟化するケースも一定程度ありますので、その観点からも、上記のようなケースでは早期の離婚調停を検討してよいと思います。
どちらも一長一短がある
協議離婚の方が解決スピードや手間の点で離婚調停よりも優れていますが、他方、協議には終わりがないことや、当事者での話し合いであるためについつい感情的になりがちであり、かえって問題がこじれてしまう可能性がある、といった弱点もあります。
この点、離婚調停は、たとえ不成立に終わっても裁判手続に進むことができるようになることや、間に調停委員を挟むことで、直接協議する場合に比べて冷静に話を進めることができることなど、協議離婚にはない独自の強みもあります。
協議離婚で進めるのがいいのか、それとも離婚調停で進めるのがいいのかは、結局のところ夫婦の事情によって異なり、どちらがいいとは一概に決めることはできませんので、どうしても迷うときは専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
弁護士 平本丈之亮