交通事故における「著しい過失」と「重過失」の意味は?~交通事故⑧~

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 交通事故の案件を扱う際に避けて通れない問題として、どちらの落ち度がより大きいのか、すなわち「過失割合」の問題があります。

 過失割合についてはある程度定型化が進んでおり、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]」(別冊判例タイムズ38号)という書籍によって、公道上での交通事故に関しては、よほど特殊な事故態様でない限り基本的な過失割合は調べやすい状況にあります。

 もっとも、道路状況や事故状況などから基本的な過失割合がわかったからといって、それをそのまま適用するかどうかはまた別の問題であり、実際にはそこからさらに、運転者の事情に応じて過失割合を修正するかどうかを検討していくことになります。

 今回は、このような過失割合を修正する事情として比較的問題となることの多い「著しい過失」「重過失」について説明したいと思います。

 

<設例>

  今回は、信号機のない交差点で起きた直進する四輪車同士の出会い頭の事故で、一方の道路が明らかに広い場合(別冊判タ38号・218ページの事例)をもとに説明したいと思います。

 なお、事案を簡明にするため、事故発生時の条件は以下のとおりとします。

 ・A、Bともに減速せずに交差点に進入した

 ・事故が起きた交差点は見通しがきかなかった

 ・AとBが交差点に進入したタイミングはほぼ同じ 

 ・A、Bともに大型車ではない

 

 

<基本の過失割合> 

 A:B=30:70

 

<「著しい過失」がある場合>

【Aに著しい過失がある場合】

 A:B=40:60(Aに+10%)

 

【Bに著しい過失がある場合】

 A:B=20:80(Bに+10%)

 

<「重過失」がある場合>

【Aに重過失がある場合】

 A:B=50:50(Aに+20%)

 

【Bに重過失がある場合】 

 A:B=10:90(Bに+20%) 

 

<「著しい過失」・「重過失」とは?>

 このように、運転者に「著しい過失」や「重過失」があった場合には基本の過失割合が10%ないし20%が修正されることになりますが、ここでいう「著しい過失」や「重過失」とは、具体的にどのようなものをいうのでしょうか?

 この点について、先ほどご紹介した別冊判タ38号では、「著しい過失」と「重過失」とは以下のようなものを指すとしています。

 

【著しい過失=事故態様ごとに通常想定されている程度を越えるような過失】

①脇見運転などの著しい前方不注視

②著しいハンドル・ブレーキ操作の不適切

③携帯電話などを通話のために使用したり画像を注視しながらの運転

④おおむね時速15㎞以上30㎞未満の速度違反(高速道路を除く)

⑤酒気帯び運転(※) など

※血液1ミリリットルあたり0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上

 

【重過失=故意に比肩する重大な過失】

①酒酔い運転(酒気を帯びた上、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転)

②居眠り運転

③無免許運転

④おおむね時速30㎞以上の速度違反(高速道路を除く)

⑤過労、病気、薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある状態で運転 など

 

 このように、自分や相手の運転の仕方によっては、過失割合が修正される可能性があります。

 保険会社との示談交渉の中でこの点が問題となることもありますので、自分や相手の運転が「著しい過失」や「重過失」に当たらないかどうかについては、示談する前に十分に検討したほうが良いと思います。

 

弁護士 平本 丈之亮