個人再生をする場合、財産処分はしなければならないのか?~個人再生⑦~

 

 個人再生は、自己破産と同様に法律に基づいた債務整理の手続(=法的整理)です。

 

 このように「法的整理」という点だけを聞くと、個人再生も自己破産と同じように自分の財産処分をしなければならないのではないか、と不安に思われる方がいらっしゃいます。

 

 この点は個人再生のメリットというコラムでも少しお話ししているところですが、今回は個人再生と財産処分との関係についてもう少し詳しくお話ししたいと思います。

 

住宅

 

 自己破産の場合、残念ながら住宅は失うことが一般的です。

 

 これに対して個人再生の場合は、「住宅資金特別条項」という特別の条項を再生計画案に盛り込むことにより、住宅を確保しながら他の債務の減免が認められていますので、財産処分の必要はありません。

 

 なお、住宅価値と住宅ローンを比較して住宅価値の方が高い場合(=アンダーローン)でも、その差額分を一括で支払う必要性はなく、差額分を資産として計上し、分割での返済計画の場面で考慮すれば足ります。

 

 これに対して、住宅価値よりも住宅ローンの方が高い場合(=オーバーローン)の場合は、住宅価値は0と評価され、返済額の計算にも影響はありません。

 

自動車

 

 自動車については、信販系のローン付で購入したかどうか、また、債務整理の時点でローンが残っているかどうかによって結論が異なります。

 

 ローン付で購入し、債務整理を始める段階でもローンが残っている場合には、銀行系や信金系、労働金庫などのカーローンを利用した場合を除き、基本的には契約に従って自動車は失うことが一般的です(所有権留保)

 

 これに対し、ローンが残っていない場合には、個人再生を申し立てても自動車を売却する必要はなく、自動車の価値を返済計画の中で考慮すれば足りることになります。

 

保険

 

 保険についても、特に解約の必要はありません。

 

 もっとも、解約返戻金が多額であり、他の財産と合算した結果、財産総額が高額になってしまう場合には、その影響で債権者に支払わなければならない最低弁済額が高額になることがありますので、そのようなケースではあえて保険を解約して解約返戻金を頭金にあて、残りを3~5年の分割にする形で再生計画案を作成しなければならないこともあります。

 

 また、その他にも、保険料が過大な負担となって返済原資が捻出できないケースでも、やむを得ず解約せざるを得ないことがあります。

 

退職金

 

 個人再生をするからといって退職する必要はありませんので、退職金を直接債権者への支払いにあてることはありません。

 

 退職した結果、支払能力を失ってしまえば支払いができなくなり、本末転倒な結果になるからです。

 

 退職によって退職金が発生する場合の扱いについてには、既に支給が決まっているようなレアケースを除き、その時点での退職金支給見込額の8分の1を資産として計上し、返済額を計算すれば足りることになっています。

 

預金・積立金など

 

 このようなものも基本的には財産処分の必要はなく、他の資産と同様に債権者への返済額を計算するための資料として扱えば足ります。

 

 もっとも、資産を全て合算した結果、返済総額が高くなりすぎてこのままでは支払いができないというケースでは、保険のところで述べたのと同様に、預金などを頭金に充てて返済計画を成り立たせるよう工夫せざるを得ないことはあります。

 

財産処分をしなくても良いのが個人再生の大きなメリット

 

 以上のとおり、個人再生については、一定の例外はあるものの、多くの財産は実際に処分することなく、負債の一部について減免が認められる手続です。

 

 個人再生というと住宅を確保できることや負債の減免というメリットにのみ目が行きがちですが、住宅以外の財産処分が不要である点も大きなメリットですので、住宅以外に残したい財産があるようなときは個人再生について検討する価値があります。

 

弁護士 平本丈之亮