遺産分割については、必ずしも弁護士に依頼する必要はなく、多くの場合、相続人の間で円満には話し合いがなされて解決しています。
しかし、遺産分割は限られた遺産を分けるものであるため本来相続人間の利害が対立する関係にあり、生前の関係も相まってひとたびトラブルが生じると深刻化することがあります。
そのため、紛争が起きる可能性があったり既に紛争が発生している場合には弁護士に相談や依頼をして紛争の予防・解決を図ることが望ましい場合がありますので、今回はその点についてお話ししたいと思います。
【相続人同士の関係が疎遠な場合】
一口に相続人といってもその関係は様々であり、場合によっては疎遠なこともあります。
関係が疎遠になる理由は色々ですが、被相続人が再婚していて以前の配偶者との間に子どもがいる場合や、二次相続・三次相続が発生して相続人の数が増えてしまった場合などが良くあるパターンです。
このようなケースでは、相続人同士の信頼関係が乏しいため意見の相違が生じることがありますので、疎遠な親族と折衝する場合の注意点についてあらかじめ弁護士のアドバイスを受けることが有益であり、また、直接疎遠な相続人に働きかけるのではなく弁護士をクッションとして挟むことによって余計な軋轢を避けることができ、利害調整の過程で生じる精神的ストレスを軽減できるメリットがあります。
【相続人の間で遺産の分割を巡って意見の対立が起きそうな場合】
このパターンでは未だ紛争が生じているわけではないものの、今後、協議の段階で紛争化する可能性が具体的に予想されているという場合ですので、あらかじめどのような点が問題となるかを弁護士と検討したうえで協議に臨むことによって、紛争化を避けたり深刻化を防止することが期待できます。
【相続人の間で既に遺産の分割を巡って意見の対立が起きている場合】
このケースではもはや相続人間で円満に分割協議を成立させることが困難であり、法的知識を駆使して相手と折衝したり調停や審判を見据えた対応が必要となりますので、弁護士に相談や依頼をすることが有益です。
ただし、弁護士に依頼せず直接自分で協議を進めたり調停を申し立てる方もいらっしゃいますので、最終的に依頼するかどうかはご本人の時間的余裕や遺産規模などの諸事情を勘案して決めていただくことになります。
【被相続人の財産を管理していた者のお金の使い方に疑問がある場合】
高齢の親の面倒を見ていた相続人がいる場合で良く見られるパターンですが、使途不明金の問題を遺産分割の内容に反映させることは難易度が高く、この点を巡って協議や調停が難航する場合が後を絶ちません。
使途不明金の問題は、本来、現存する遺産の分割とは別個の問題であり、相続人間で折り合いがつかない場合には裁判手続によって解決すべき問題ですが、遺産分割の協議や調停の枠内でどこまでこの問題を扱うべきかといった点や、仮に訴訟を提起した場合にどの程度認められる可能性があるのかといった点について専門的な判断が要求されるため、適切な見通しをもって進めていかなければ最終的な解決までに長期間を要することになります。
そのため、このような使途不明金問題がある場合には、弁護士への相談や依頼を検討していただいた方が良いと考えます。
遺産分割は相続人間の利害調整が必要であり、事案によっては大きなストレスとなる場合がありますので、上記のようなケースでお困りのときは一度弁護士へのご相談を検討していただければと思います。
弁護士 平本 丈之亮