自己破産できない場合とは?~自己破産⑤・免責不許可事由2~

 

 以前のコラムで、自己破産を認めない理由(=「免責不許可事由」(めんせきふきょかじゆう)」のひとつであるギャンブル、浪費についてお話ししました(「ギャンブルなど浪費がある場合、自己破産できないのか?~自己破産④・免責不許可事由~」)。

 

 それでは、ギャンブルや浪費以外で、自己破産が認められない場合としてはどのようなものがあるでしょうか?

 

 今回は、免責不許可事由全般について説明していきます。

 

代表的な免責不許可事由

 免責不許可事由については、「破産法」という法律で定められているのですが、その中でも代表的なものは以下のとおりです。

 

 ・債権者に害を与える目的で財産を隠したり、債権者に不利益に処分したり、あるいはその価値を減少させた場合 

 

 ・現金を得る目的で、クレジットで買い物をし、品物を安い値段で売り払ったり質入れしたりしたような場合 

 

 ・浪費・ギャンブルなどによって借金を増やしたような場合 

 

 ・既に借金を返すことができない状態にあるにもかかわらず、そうではないかのように債権者を信用させ、お金を借りた場合 

 

 ・自分の財産について「陳述書」や「財産目録」にうその事実を書いたり、嘘の事実を書いた「債権者一覧表」を提出したり、自分の財産について裁判所に嘘を述べた場合 

 

 ・過去7年以内に免責を受けたことがある場合 

 

 ・破産法で課せられた一定の義務(裁判所に対する説明義務、重要財産開示義務など)に違反した場合 

 

 ・「破産管財人」(=破産者の財産をお金に換えて債権者に分配したり、免責不許可事由がないかを調査したりするため、裁判所が選任する弁護士)の職務を妨害したこと 

 

免責不許可事由があると、絶対に免責は認められないのか?

 このように、法律では借金の免除をみとめてもらえない理由が列挙されていますが、これに該当する事情があるからといって、必ずしも免除が認められないわけではありません。

 

 破産法第252条第2項では、免責不許可事由に該当する場合であっても、「裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」と定めており、事情次第では借金の免除を認めても良いとなっています。

 

 この制度を「裁量免責」といい、形式的には免責不許可事由があるケースでも、裁判所のいわば温情によって立ち直りの機会を与えていただくという制度です。

 

 先ほど述べた7年以内の2度目の自己破産の場合も、この裁量免責を求めていくことになりますが、そのためには、破産に至った経緯や、今後の生活の見通し、破産者の反省状況などについて積極的に資料を提出する必要があり、どのような資料をどれだけ提出できるかが勝負の分かれ目になってきます。

 

 当職が過去に取り扱った事案では、7年以内のケースではないものの、ギャンブルが原因で2度目の自己破産を検討したケースにおいて、ギャンブル依存症が疑われる方にギャンブル依存症の立ち直りのためのカウンセリングに通っていただき、カウンセリングの資料を裁判所に提出して、将来同じ間違いを犯さないように積極的に努力していることをアピールし、裁量免責をいただいた例があります。

 

 なお、当職の印象ですが、免責不許可事由としてギャンブルや浪費などの問題がある場合でも、そのことを正直に裁判所に申告すれば裁量免責は認めてもらいやすいですが、裁判所に対して提出する書類に嘘を書いたり、嘘をついたことが後で判明した場合には非常に厳しく見られる気がします。

 

 過去には、本人が一部の通帳の存在を隠し、破産手続中の破産管財人の調査に対しても申告漏れはないと説明していたにもかかわらず、その後の追加調査で隠し口座が発見された例があり、代理人として大変苦い思いをした経験があります。

 

 免責制度は誠実な債務者を救済する制度ですから当然のことですが、自分に不利な事情や隠したいことがあるからといって隠すことは、破産手続を進める上ではデメリットしかないと考えておいた方が良いと思います。

 

自己破産が認められない場合の解決方法は?

 では、免責不許可事由に該当し、どうがんばっても借金の免除が認められなさそうだというケースはどうしたら良いでしょうか?

 

 このような場合には、債権者と長期の分割払いについて交渉する「任意整理」にチャレンジする場合や、借金の一部を免除してもらい、残額を3~5年の長期分割で支払うという法的整理手続である「個人再生」を検討することになります。

 

 また、岩手県では、債務整理資金の貸付を専門に行う生協組織があるため、本人にある程度の返済能力があり、かつ親族の協力が得られるケースでは、そういった機関を紹介する場合もあります。

 

 いずれにせよ、自己破産を認めてもらえるかどうか自分では判断が難しいという場合には、弁護士や最寄りの消費生活センターなどに債務整理の方法をご相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮