個人再生で3年を超える弁済計画が認められるのはどういう場合か?

 

 個人再生は、住宅ローンや税金などを除く一般の債権者への債務の一部を減免し、残る負債を原則3年間で支払う法的整理手続です。

 

 しかし、債務額や資産が多い、あるいは収入が低いなどといった事情から、原則である3年間では完済できないというケースもあります。

 

 この場合、民事再生法では、最長で5年まで返済期間を延長することができるとされているのですが、それではいったい、どのような条件をみたせば3年を超える期間の再生計画案が認められるのでしょうか?

 

・「特別の事情」が必要

 

 民事再生法上、3年を超える再生計画案が認められるには「特別の事情」が必要とされていますが(民事再生法229条2項2号括弧書、244条)、これをわかりやすくいえば、3年では返済しきれないものの、収入の安定性や家族からの援助の可能性など本人の生活状況に照らし、返済期間を延長すれば支払えるといえることが条件となります。

 

・実際にはある程度広く認められている

 

 このように、3年以上の再生計画案が認められる条件が「特別の事情」と規定されているため、字面をみるといかにも条件が厳しいように見えますが、実際の運用上はそこまで厳しく制限されているというわけでもなく、(もちろん事情次第ですが)比較的緩やかに認められているという印象です。

 

・延長した期間でも履行可能といえることが必要

 

 もっとも、返済期間を延長できるとはいっても、あくまでも延長した期間内で完済できるといえることが必要であるため、たとえば5年間の返済計画案を立案しても、4年目に入った時点で定年退職し、収入が大幅に減少してしまうようなケースだと認められない可能性があります(定年後に年金を受給し、それで払えるといえるのであればできるケースもあります)。

 

 3年を超える再生計画案が認められるかどうかは、本人の収入や勤続年数、職歴、定年がある場合には定年までの残り年数、本人や家族の健康状態、家族の就業状況・収入、再生計画案における返済総額とこれを返済期間で割った場合の毎月の負担見込額、現時点における家計収支の状況、家族構成に照らした将来の支出増加の可能性の有無・程度など様々な要素が絡むため、裁判所に対してはこのような事情を説明し、3年以上の再生計画案であっても履行可能であることを積極的に説明することが重要です。

 

 個人再生は、様々な書類の提出だけではなく再生計画案を作成して提出することが必要であり、清算価値保障原則を満たす内容でなければならないなど手続自体が自己破産に比べて複雑ですが、それ以外にも、3年を超える再生計画案を作成する場合には上記のとおりやや難易度が上がりますので、個人再生に慣れた弁護士への相談をお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮