個人の自己破産と免責審尋について

 

 個人が自己破産する場合の目的は、裁判所から免責許可決定をもらうことですが、裁判所が免責を許可するかどうかを判断する際に、「免責審尋」(めんせきしんじん)という手続が行われることがあります。

 

 今回は、このような免責審尋の意味や、それがどのような場合に行われるのか、また、免責審尋が行われる場合の注意点などについてお話しします。

 

 

免責審尋とは?

 

 免責審尋とは、自己破産した方の借金の責任を免れさせて良いかどうかを判断するため、担当の裁判官と裁判所で面談する手続です。

 

 免責審尋は、財産調査や売却などの換価手続、お金が集まった場合の債権者への分配手続など自己破産の一連の手続が全て終了した後に行われる最後の手続です。

 

 

どのような場合に行われる?

 

 自己破産の手続には、破産管財人が選任される「管財事件」と、選任されない「同時廃止」の2種類がありますが、管財事件の場合は必ず免責審尋が行われます。

 

 他方、「同時廃止」の場合は、借入の内容にギャンブルなどの問題があったり家計管理に問題があるなど、裁判所が直接ご本人の話を聞きたいという場合に行われます。

 

 他方で、盛岡地裁では、そのような点について何の問題もない場合には免責審尋が行われないこともあります。

 

 

免責審尋は一人でいかなければならない?

 

 自分で自己破産を申し立てた場合には、ご本人だけで裁判所に出頭しなければなりませんが、弁護士を代理人とした場合には弁護士も一緒に出頭します。

 

 

免責審尋の時間はどれくらい?

 

 管財事件の場合は、破産者の免責を認めるべきかどうかに関する調査も破産管財人の職務です。

 

 そのため、管財事件では、免責審尋前には破産管財人から裁判所に免責に関する意見書が提出されるため、改めて裁判所から細かく事情を聞かれることは少なく、その場合数分で終了します(稀にですが、あまりにも借入の理由が酷いようなケースだと、直接裁判官から厳しく追及されることもあります)。

 

 これに対して、同時廃止の場合は破産管財人が調査することがないため、裁判官から一通り事情聴取を受けますが、それでもせいぜい5分ないし10分程度であることが一般的です。

 

 

免責審尋では何を聞かれる?

 

 よく聞かれるのは、①借入が増えた経緯・理由、②支払不能になった理由・経緯、③反省点や現在の生活状況、④自己破産を決意してから気をつけていること、⑤今後、どうやって生活を立て直していくつもりか、といった点ですが、ケースによっては借入の内容(件数やおおよその金額)なども聞かれることがあります。

 

免責審尋を欠席したらどうなる?

 

 免責審尋は平日の日中に行われますが、正当な理由(急病や急な怪我など)なく欠席した場合、免責が不許可になる可能性があります。

 

 たとえば、新型コロナウイルスに感染したり、感染者の濃厚接触者となったような場合であれば正当な理由があるとして欠席が認められると思いますが、この場合には一旦期日を延期し、症状からの回復等を確認した上で、改めて免責審尋を実施することになります。

 

 単に仕事があるという理由で欠席すると免責の判断に不利に働く可能性がありますので、その日だけは休みを取っていただくことになります。

 

 

免責審尋の日は、いつ頃決まるのか?

 

 自己破産を申し立て、裁判所から指示された質問事項への回答や資料の追加提出(補正)が終わると、裁判所は破産手続開始決定を出す準備に入りますので、その際に決まります。

 

 免責審尋は自己破産の申立からおおよそ3ヶ月程度先に指定されることが多いため、急に仕事を休まなければならないということはありません。

 

 ちなみに、管財事件になった場合は破産手続がいつ終わるのか分かりませんので、この場合、免責審尋は破産手続の終結まで行われません。

 

 

免責審尋に出席する際の注意点(服装など)は?

 

 特に決まった服装はないため、例えばスーツで出頭するまでの必要はありませんが、最低現、清潔感があり、社会人として失礼にあたらないような服装は心がけていただければと思います。

 

 弁護士に依頼して自己破産の手続を進めているのであれば、弁護士からこの点のアドバイスを受けていただくことも考えられます(当職もたまに質問を受けることがあります)。

 

まとめ

 

 当職が関与したケースでは、これまで免責審尋で失敗して免責不許可になった例はありませんし、そもそも免責不許可となる割合も非常に低いため過度に心配する必要はありませんが、不安に思うことがあるときはここでお話ししたことを参考にしていただければ幸いです。

 

弁護士 平本丈之亮