以前、同一方向に進行する自転車と四輪車の接触事故に関する過失割合についてご紹介したことがありましたが、今回は、自転車と四輪車との接触事故のうち、自転車が路外から出て道路を横断しようとした際、直進してきた四輪車と接触した事故の過失割合について、別冊判例タイムズ38号をもとに説明します。
【自転車:自動車=30:70】 以下のようなケースでは、このような基本的な過失割合が修正されることがあります。 自転車に対して+5% 夜間は見通しが悪くなりますが、自転車側からは前照灯をつけた自動車は発見しやすく、他方、四輪車からは自転車の発見が必ずしも容易ではないため、自転車側の過失が加重されます。 なお、「夜間」とは、日没時から日の出までの時間をいいます。 自転車に対して+10% 「幹線道路」とは、歩車道の区別があり、車道幅員が概ね14メートル以上(片側2車線以上)で、車両が高速で走行する通行量の多い国道や一部の都道府県道などが想定されています。 このような道路では、路外から自転車が進入する際、自転車は通常の道路に比べて直進車の動静により強く注意を払うべきであり、他方で直進する四輪車は接触を回避する余地が少ないため、自転車側の過失が加重されます。 自転車に対して+10% 少し分かりにくい表現ですが、要するに、自動車が通り過ぎる直前に道路に出たり、自動車が通り過ぎた直後に道路に出たことで事故が起きた場合です。 このような横断行為は非常に危険な行為であるため、その分、自転車側の過失が加重されます。 自転車に+10~20% 自転車側に「著しい過失」、「重過失」がある場合には、上記のとおり修正がなされます。 自転車の「著しい過失」・「重過失」の具体例 1 著しい過失 =事故態様ごとに通常想定されている程度を越えるような過失 ①酒気帯び運転(※1) ②2人乗り ③無灯火 ④並進(※2) ⑤傘を差すなどの片手運転 ⑥脇見運転等の著しい前方不注視 ⑦携帯電話等で通話しながらの運転や画像を注視しての運転 など ※1 血液1ミリリットルあたり0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上が罰則の対象ですが、罰則の適用のない程度の酒気帯びも対象となります。 ※2 複数の自転車が並んで走行すること 2 重過失 =故意に比肩する重大な過失 ①酒酔い運転(酒気を帯びた上、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転) ②いわゆる「ピストバイク」など制動装置の不良 など なお、高速走行している自転車(原動付自転車の制限速度である時速30㎞程度)については、もはや自転車ではなく単車として扱われ、別の基準が適用されることとされています。 自転車に対して-10% 児童や高齢者は交通弱者であり保護すべき必要性が高いため、自動車側がより注意するべきであると考えられるためです。 なお、「児童等」とは概ね13歳未満の者を言い、6歳未満の幼児も含みます。 「高齢者」とは、概ね65歳以上の者を意味します。 自転車に対して-20~25% 「自転車横断帯」とは、道路標識等により自転車の横断の用に供するための場所であることが示されている部分をいいますが、ここから若干外れていても、概ね1~2メートル以内の場所を通行していた程度であれば、自転車横断帯を通行していた場合と同視して良いとされています。 自転車に対して-15~20% 自転車横断帯がなく横断歩道しかない場所でも、そのような場所を通行する場合、自転車は横断歩道によって横断した方が安全と考えて通行する実情があり、自動車は歩行者と同様に注意してくれるであろうと期待して通行していることから、自転車横断帯ほどではないにしても、自転車側の過失割合が減算されます。 自転車に対して-10~20% 自動車側に「著しい過失」、「重過失」がある場合には、上記のとおり自転車側の過失割合が減算(自動車側に加算)されますが、その程度には幅があることから、修正要素にも幅がもたされています。 自動車の「著しい過失」・「重過失」の具体例 1 著しい過失 =事故態様ごとに通常想定されている程度を越えるような過失 ①脇見運転などの著しい前方不注視 ②著しいハンドル・ブレーキ操作の不適切 ③概ね15㎞以上30㎞未満の速度違反 ④酒気帯び運転(※) など ※ 血液1ミリリットルあたり0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上が罰則の対象ですが、罰則の適用のない程度の酒気帯びも対象となります。 2 重過失 =故意に比肩する重大な過失 ①酒酔い運転(酒気を帯びた上、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転) ②居眠り運転 ③無免許運転 ④概ね時速30㎞以上の速度違反 など 弁護士 平本 丈之亮