債務者の財産を調査する手続の拡大・その2~財産開示手続の拡充~

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 以前のコラム(「債務者の財産を調査する手続の拡大~改正民事執行法の話~)で、令和元年5月に民事執行法が改正され、債務者の財産を調査するための手段として第三者から直接情報を取得する手続が新設されたことをご紹介しました。

 もっとも、今回の改正では、第三者からの情報取得手続の新設のほかにも、従来から存在する「財産開示手続」にも改正が施され以前よりも財産調査の実効性が高まることが期待できるようになりましたので、今回はこの点についてご紹介したいと思います。

 

<財産開示手続とは>

 まず、そもそも「財産開示手続」とはどのような制度かということですが、これは強制執行可能な状態にある債権者の申立により、裁判所が債務者を呼び出し、非公開の手続で債務者自身に自分の財産を陳述させる手続です。

 しかし、この制度については、かねてから①申し立てできる人(申立権者)の範囲が狭い、②不出頭や陳述を拒否した場合の罰則が30万円以下の過料と軽い、という問題点が指摘され、債務者の財産を調査するための手段としては実効性に乏しいという批判がありました。

 今回の改正はこのような批判に応えるものであり、具体的には以下のような改正がなされました。

 

<申立権者の拡大>

 従来の財産開示手続では、強制執行可能な公正証書(=執行証書)を持つ人が申立権者から外れていたため、たとえば婚姻費用や養育費の債権者など、本来であれば手厚く保護すべき人が利用できないという難点がありました。

 そこで、今回の改正では、上記のような公正証書を有する者も申立が可能になり、このような問題点が解消されることになりました(なお、それ以外にも、支払督促や仮執行宣言付判決を取得した人も申立が可能となりました)。

 

<罰則の引き上げ>

 従来の制度では、陳述拒否などの罰則が30万円以下の過料であり、いわば逃げ得を許す余地を認めるものであり軽すぎるとの批判がありました。

 そこで、今回の改正では罰則が引き上げられ、正当な理由のない不出頭や宣誓拒絶、また、正当な理由のない陳述拒否・虚偽陳述について、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金の刑事罰が科せられることになり、財産開示手続の実効性を高めるための工夫がなされました。

 

<財産開示手続の要件>

 このように実効性が強化された財産開示手続ですが、この手続を利用するためには、法律上、以下のいずれかの要件を満たすことが必要となっています(この要件は法改正前からのものです)。

 

①申立前6ヶ月以内の強制執行又は担保権の実行によって、金銭債権の完全な満足を得られなかったこと

②既に分かっている財産に対して強制執行を実施しても、金銭債権の完全な満足を得られないことの疎明があったこと

 

 ①については、実際に何らかの財産について強制執行などを実施したものの、完全な回収が得られなかった場合を意味します。

 これに対して②は、債権者が通常行うべき調査を行い、その結果判明した財産に強制執行等を実施しても完全な回収が得られないことが一応確かであると認められることをいい、実際に強制執行等を行うことはまでは必要ではありません。

 もっとも、②については、どこまでの調査をすれば疎明があったと言えるかが不明確な部分もありますので、一度強制執行を試みる手間はあるものの、①の方がわかりやすく使い勝手が良い場面も多いかと思われます。

 

<給与情報や不動産情報を得るには財産開示手続が必要>

 今回の民事執行法の改正では、第三者からの情報取得手続として、債務名義(執行証書、調停調書、審判書、和解調書、判決書など)を有する金銭債権者は登記所から不動産情報を取得できるようになり、また、特に婚姻費用や養育費など要保護性の高い債権について債務名義を有する者は市町村等から給与情報の開示を得られるようにもなりましたが、そのような情報取得手続を利用するには、3年以内に財産開示手続が実施されていることが必要であるとされました。

 これに対して、同じく第三者からの情報取得手続である預貯金情報や有価証券情報についてはこのような条件はありませんので、財産開示手続を前置する必要はありません。

 

 

 今回の一連の法改正により、債権回収のためのメニューが以前よりも充実することになります。

 特に、これまで事実上回収を断念してきた婚姻費用や養育費の債権者にとっては、財産開示手続や勤務先に関する情報取得制度の利用によって、(相手がきちんと働いていればという条件付きではありますが、)給与への差押えによる回収可能性が高まると思いますし、実際に強制執行まで至らずとも、これらの開示手続の申立をきっかけに支払いにつながる場面も増えてくるのではないかと思われますので、公正証書や調停などで取り決めた養育費等が滞っているような場合には積極的な活用を検討してほしいと思います。

 なお、改正後の財産開示手続は、本年4月1日から施行されます。

 

弁護士 平本 丈之亮