裁判で不倫関係をやめるよう請求することはできる?

 

 不貞に関するご相談を受けていると、慰謝料の請求をしたいという内容のほか、不倫相手に対して配偶者との不倫関係をやめるよう裁判で請求できないかというご質問を受けることがあります。

 

 では、そのような不倫関係の中止を裁判で求めることはできるのでしょうか?

 

・理論的には不可能ではないが、現実的にはなかなか困難

 

 このような差止請求については、実際にその可能性について言及した裁判例(大阪地裁平成11年3月11日判決)がありますが、不貞相手に対して配偶者との同棲や面会を差し止めるよう求めたこのケースにおいて、裁判所は、面会することはそれ自体違法とはいえないとして否定し、同棲についても下記の通り厳しい条件をつけた上で差止請求を否定しています。

 

大阪地裁平成11年3月11日判決

「差止めは、相手方の行動の事前かつ直接の示止という強力な効果をもたらすものであるから、これが認められるについては、事後の金銭賠償によっては原告の保護として十分でなく事前の直接抑制が必要といえるだけの特別な事情のあることが必要である。
 そこで、本件におけるそのような事情の有無についてみると、原告と○○は婚姻関係こそ継続しているものの、平成一〇年五月ころから○○は家を出て原告と別居しており、原告に居所を連絡してもいない。これに加えて、先に認定した経緯をも考慮すると、両者間の婚姻関係が平常のものに復するためには、相当の困難を伴う状態というほかない。そして、原告もまた○○との離婚をやむなしと考えてはいるものの、○○が被告と同棲したりすることはこれまでの経緯から見て許せないということから○○との離婚に応じていないのである。
 そうすると、今後被告と○○が同棲することによって、原告と○○との平和な婚姻生活が害されるといった直接的かつ具体的な損害か生じるということにはならない。同棲によって侵害されるのはもっぱら原告の精神的な平和というほかない。このような精神的損害については、同棲が不法行為の要件を備える場合には損害賠償によっててん補されるべきものであり、これを超えて差止請求まで認められるべき事情があるとまでは言えない。

 

 この判決の枠組みにしたがった場合、配偶者と不貞相手が同棲することによって、他方配偶者が精神的な平和以外に何らかの直接的かつ具体的な損害を受けるときは差止が認められ得るとは一応言えそうですが、具体的にどのようなケースが考えられるかというとなかなか難しく、実際に認めてもらうにはかなり高いハードルがあるように思われます(ちなみに、今回紹介した裁判例以外に、不貞行為の差し止めについて判断した裁判例は見つけられませんでした)。

 

 

・差止請求ができなくても、不倫関係の解消を求めることには意味がある

 

 もっとも、仮に差止請求が認められなくても、不貞相手に不倫関係を解消するよう求めたにもかかわらず相手がこれを無視して関係を継続したときは、そのような態度は慰謝料の増額事由として考慮してもらえる可能性がありますので、関係解消を求めることには意味があると思います。

 

 また、裁判で差止ができなくても、示談交渉や裁判所での和解協議の中で双方が納得して合意できれば、配偶者との接触禁止条項を設けることを通じて不貞関係をやめてもらえることもありますので、慰謝料の請求と併せてそのような条項を希望するときは専門家へ御相談いただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

2021年6月21日 | カテゴリー : 慰謝料, 男女問題 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所