別居することになった場合、離婚するまでの生活費として重要になるのが婚姻費用であり、離婚後の子どもとの生活のために重要となるのが養育費です。
では、いざ婚姻費用と養育費を請求しようと思った場合、いったいどうやって請求すれば良いのでしょうか?
【裁判所外での請求に決まった方式はない】
実は、婚姻費用を裁判所外で請求する方法に、こうでなければならないという決まった方法はありません。
そのため、相手方が誠実に話し合いに応じる可能性が高いのであれば、口頭でもメールでも良く、方法は問いません。
【請求した時点の証拠化が重要】
もっとも、実際のケースでは金額や支払いの期間などを巡って交渉しなければらならないことも多いですし、残念ながら請求しても何かしら理由をつけて相手が話し合いに応じないケースもあります。
このように交渉で解決せず、最終的に裁判所での審判にまで至るケースでは、請求した時点に遡って支払いを命じてもらえることが多いのですが、そこで問題となるのが、果たしていつ請求したのかということです。
つまり、口頭での請求だと実際にいつ請求したのかが不明確であるため、協議が整わず裁判所に問題が持ち込まれた場合、請求したことが証拠上明確になった時点、すなわち調停時までしか遡ってもらえないことがあります。
そのため、裁判所での解決を求める前に任意で交渉する場合には、少なくとも、いつ婚姻費用を請求したのかを明確に証拠化しておくことが重要となります。
この点については、内容証明郵便で婚姻費用を請求した場合にその時点まで遡って支払いを命じた裁判例(東京家裁平成27年8月13日決定)がありますので、少なくとも内容証明郵便で請求しておけば安心です。
もっとも、証拠として残す方法はなにも内容証明郵便に限らず、例えば電子メールなどであっても、それが相手に到達した事実と到達日を証明できればそこまで遡ってもらえる可能性がありますので、最低限、そのような形で証拠化しておくことをお勧めします。
【離婚と同時に取り決めする場合】
この場合は離婚と同時に養育費の支払いがスタートするため、請求の時期や請求方法については特に気をつけることはありません。
ただし、ご相談を受けていると、口頭で養育費の合意をしたものの離婚協議書などの形にしていないことがあり、そのようなケースだと改めて養育費の請求をやり直さなければならないこともあるため、離婚と同時に養育費を合意する場合には形にしておくことが重要です。
【離婚後に請求する場合】
このケースでは基本的に婚姻費用と同様に考えてよく、当事者間での交渉からスタートする場合にはまずは請求したことを明確に証拠化し、解決が難しければ調停・審判という流れに至ることになります。
なお、様々な事情から婚姻費用と養育費について相手と交渉することができない場合もあると思いますが、その場合には交渉を省いて調停を起こしても手続上は問題ありません。
むしろ、別居に至る経緯や離婚の際の事情によっては、交渉を挟むことがかえってトラブルを招く場合もあり得ますので、そのようなケースであれば初めから調停を起こすことを考えることになります。
今回は、婚姻費用や養育費を請求する方法や注意点についてお話ししました。
交渉からスタートする場合には請求したことを証拠化しておくこと、取り決めしたことはきちんと形にしておくことが重要ですので、それらの点に気を付けていただきたいと思います。
弁護士 平本丈之亮