後遺障害に対する慰謝料はどのように計算されるのか?~交通事故③・後遺障害慰謝料~

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 前回のコラムで(→「入院・通院に対する慰謝料はどのように計算するのか?~交通事故②・入通院慰謝料~」 )、交通事故の慰謝料には、怪我で入院や通院したことに対する「入通院慰謝料」と、後遺障害が残ったことに対する「後遺障害慰謝料」、被害者が亡くなった場合の「死亡慰謝料」がある、とお話ししました。

 

 入通院慰謝料については既にご説明しましたので、今回は「後遺障害慰謝料」について、良くある相談事例をもとにご説明していきます。

 

<後遺障害慰謝料とは?>

 交通事故で受傷した場合、不幸にも様々な後遺障害が残ることがありますが、これに対する肉体的・精神的苦痛を償うために金銭が支払われることがあり、この場合の慰謝料を「後遺障害慰謝料」と呼んでいます。

 

<どこが問題となりやすいか?>

 実務上、後遺障害慰謝料は損害保険料率算出機構(またはJA共済連(※))が認定する1級から14級までの「後遺障害等級」に応じて金額が算定されますが、その金額が低く抑えられているように感じられるケースがあります。

※なお、JA共済連については、平成28年10月から平成30年10月までに後遺障害等級の認定業務を損害保険料率算出機構に全て移管する予定となっているようです。

 

<事例1>(事例は架空のものですが、保険会社の主張自体は実際にあったものをベースにしています)

 交通事故で怪我をしたので治療をしたが、首にむち打ちの症状が残り、事故から半年後に医師から症状固定と診断された。

 そこで、後遺障害等級の認定を申請したところ、14級9号(局部に神経障害を残すもの)に該当するとの認定がなされた。

 その後、保険会社から提示された示談案の中で、後遺障害慰謝料について以下のような金額が提示された。

 これに対して弁護士に相談したところ、以下のような計算になると言われた。

 


  ①保険会社の示談提示額

   580,000円

  

  ②弁護士の計算  

   1,100,000円


 

<事例2>(この事例も架空のものですが、保険会社の主張自体は実際にあったものをベースにしています)

 交通事故で怪我をしたので治療をしたが、骨折に伴う骨の変形が残り、事故から1年後に症状固定と診断された。

 そこで、後遺障害等級の認定を申請したところ11級7号(脊柱に変形を残すもの)に該当するとの認定がなされた。

 その後、保険会社から提示された示談案の中で、後遺障害慰謝料について以下のような金額が提示された。

 これに対して弁護士に相談したところ、以下のような計算になると言われた。

 


  ①保険会社の示談提示額

   970,000円

  

  ②弁護士の計算

   4,200,000円


 

<どうしてこのような違いが生じるのか?>

 このような違いが生じるのは、交通事故賠償においては、損害額の計算についていくつか異なる基準があるためです(→「保険会社からの示談案は果たして妥当か?~交通事故①・3つの基準~」)。

 上の事例1、事例2のどちらについても、保険会社は自社の内部の基準(「任意基準」)をもとに後遺障害慰謝料を計算しています。

 これに対して、弁護士は「裁判基準」「弁護士基準」と呼ぶ場合もあります。)と呼ばれる基準をもとに計算したため、保険会社の提示額と大きな差が生じたのです。

 

<裁判基準とは?>

 裁判基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称「赤い本」)と呼ばれる書籍に記載されている基準であり、交通事故賠償の損害額を計算する際、弁護士、裁判官であれば必ず参照するものです。

 このように、赤い本に記載されている基準は影響力が強いのですが、そうは言ってもあくまで一つの目安にすぎませんので、実際に裁判になった場合には、必ずしもここに書いてある金額どおりになるというわけではありません。

 たとえば、裁判の中でで後遺障害等級が争われた結果、損害保険料率算出機構などが認定した後遺障害等級よりも低い程度の後遺障害しか認められなければ、それに応じて慰謝料額も減らされることになります。

 しかし、弁護士が交渉する際には、裁判になればこのとおりになる可能性が高いことを前提に保険会社と裁判基準に沿った金額で交渉し、これと同程度の水準で示談できることも多くあります。

 

<被害者の注意点>

 後遺障害慰謝料は、他の損害項目に比べて比較的妥当性を判断しやすい費目ではあります。

 しかし、普段のご相談の中では、保険会社の任意基準による計算額があまりにも低すぎるのではないかと思われる事例もあり、本来補償されるべきところまで補償されないまま示談に至っているケースもあるのではないかと思っています。

 示談をした後でこれを覆すのは困難ですので、保険会社から示談案が出された場合には、示談をする前に弁護士に相談することをご検討ください。

 

弁護士 平本丈之亮

 

<参考(裁判基準)>

等級 金額 等級 金額
第1級 2800万円 第8級 830万円
第2級 2370万円 第9級 690万円
第3級 1990万円 第10級 550万円
第4級 1670万円 第11級 420万円
第5級 1400万円 第12級 290万円
第6級 1180万円 第13級 180万円
第7級 1000万円 第14級 110万円