夫に認知した子どもがいることは、婚姻費用や養育費の計算に影響するのか?

 

 夫の不貞行為によって子どもが生まれ、認知するケースがありますが、では、このようなケースで(元)妻が婚姻費用や養育費を請求した場合、夫側に認知した子どもがいることは婚姻費用や夫婦間の子どもの養育費の計算において影響するのでしょうか?

 

認知した子がいると婚姻費用や養育費に影響する

 

 認知した子どもを夫婦間の子どもと同じように扱った場合、その分扶養すべき者が増えるため婚姻費用や夫婦間の子どもに対する養育費は減ることになります。

 

 なお、このようなケースのうち、認知した子が不貞行為によって生まれたような場合、夫婦間の子どもを養育する妻の側から、夫がこのような主張をすることは信義則に反し許されない、すなわち、(元)妻からの婚姻費用や養育費の計算にするにあたっては認知した子どもはいないものとして計算すべきである、という考え方もあります(岐阜家裁中津川出張所平成27年10月16日審判 ※ただし抗告審である後記名古屋高裁決定により取り消し)。

 

 しかしながら、出生の経緯がどうあれ、同じ父親の子どもである以上、夫婦間の子どもかそうでないかによって扶養義務の程度に差を設けることは相当ではないと考えられます。

 

 近時の裁判例でもこのような考え方が採用されており(名古屋高裁平成28年2月19日決定、東京高裁令和元年11月12日決定など)、不倫相手の子どもがいても、その子どもがいるものとして婚姻費用や養育費を計算することが主流の考え方ではないかと思われます(もっとも、夫が認知しただけで実際に扶養義務を果たしていない場合も同じように考えるべきかは不明です)。

 

東京高裁令和元年11月12日決定

「その子の生活費を扶養義務を負う親が負担するのは当然であり、当該子がいることを考慮して婚姻費用分担額を定めることが信義則に違反するとはいえず、」

 

具体的な計算方法は?

 

 以上のように、義務者に認知した子がいる場合、婚姻費用や夫婦間の子どもの養育費の計算に影響を与えますが、このようなケースはいわゆる簡易算定表が想定している事態ではないため、単純に算定表を当てはめることはできずに手計算が必要となります。

 

 この計算は複雑であり、また、婚姻費用と養育費では計算方法が異なりますので、この点は別のコラムでご説明します。

 

弁護士 平本丈之亮