自己破産すると、保険は解約しなければならないのか?~自己破産②~

 

 債務整理の相談を受けていると、自己破産を考えているが、生命保険など加入している保険を解約しなければならないのか、というご相談を受けることがあります。

 

 そこで今回は、自己破産の手続の中で保険契約がどのように取り扱われるかを御説明します。

 

掛け捨ての保険(医療保険、自動車保険など)

 この種の保険では、基本的に解約する必要はありません。

 

 ただし、多数の保険に加入した結果、保険料負担によって家計がマイナスになっているようなケースでは、保険に加入していること自体が浪費と捉えられる可能性もあり、また、自己破産の目的である経済的な立ち直りを実現するため、事実上、解約せざるを得ない場合もあり得ると思います。

 

解約するとお金が返ってくる保険(生命保険、学資保険など)

 解約してお金が戻ってくる保険の場合、20万円を超える金額が返ってくるときは、原則として解約されてしまいます

 

 これに対して、そもそも20万円以下の解約返戻金しか戻ってこない場合や、破産手続中あるいは破産手続が終わった後に新たに加入した保険については、処分の対象外となります。

 

 解約返戻金が発生する保険については、解約されてしまうと保険料や健康上の問題などから、新規に同じような保険に加入するのは大変だというケースもあり、破産者にとって酷な場合もあります。

 

 そこで、このような場合には、保険を破産者の手元に残すことを裁判所に申請する「自由財産拡張」(じゆうざいさんかくちょう)という制度を利用して、20万円を超える解約返戻金がある場合でも保険を解約せずに自己破産できる場合があり、実務上、広く活用されています。

 

破産手続中に保険金の支払事由が発生すると、受け取ることができない場合がある

 ただし、ここで一つ注意が必要なのが、破産手続前に加入した保険について、破産手続の進行中に保険金の支払事由が発生した場合です。

 

 このような場合、破産前に締結した保険契約によって発生する保険金請求権は破産財団に帰属し、破産管財人が取得した上で債権者への配当に回すことになります(自由財産の拡張は可能ですが手元に残す金額は制限がかかります。)ので、手続中にそのようなことがあった場合には破産管財人に速やかに報告して対応を検討する必要があります。

 

 

 どのような場合に保険を残せるか、また、残せるとしてもどこまで残せるのかはケースバイケースですが、今回ご紹介したとおり必ずしも解約しなくても良い場合があります。

 

 支払いに困ってしまい、保険を解約して戻ってきたお金も返済に注ぎ込んだ後で御相談に来られる方もいらっしゃいますが、適切な時期に相談に来られていれば手元に残せたというケースがありますので、保険加入中の方で自己破産などの債務整理をお考えの方は解約する前に弁護士にご相談下さい。

 

弁護士 平本丈之亮