自己破産を考えなくてはならない方が相談に来られると、既に債権者から給料の差押えを受けていたり、そこまでには至らなくても裁判を起こされているというケースがあります。
今回は、自己破産を申し立てる前に給料を差し押さえられた場合、その後の自己破産手続において差押えがどうなるのかについてお話しします。
自己破産には、破産管財人が選任される「管財事件」と、破産か在任が選任されない「同時廃止」の2つのパターンがあります。
このうち、同時廃止の場合では、破産手続開始決定により給料の差押えが「中止」されます。
中止された給料の差押えについては、その後に免責許可決定が確定した時点で失効し、それ以降は給料を満額受け取ることができるようになります。
破産手続開始決定から免責確定までは概ね3~4ヶ月程度を要しますが、その間の差押相当額(通常は手取りの4分の1)については、職場が手元にプールするか法務局に供託するため、免責許可決定の確定後、職場から直接プール金を受け取るか、供託先の法務局から支払いを受けることになります。
なお、執行裁判所は破産手続開始決定を知りませんので、同時廃止により強制執行を中止してもらったり、免責許可決定の確定後に給料を受け取れるようにするためには、その都度、破産手続開始決定書、免責許可決定書やその確定証明書を執行裁判所に提出する必要があります(免責許可決定確定までの間に職場が供託していた給料の一部を支払ってもらう場合には、別途、執行裁判所に供託金返還について上申し、払渡額の証明書を取得して法務局に請求します)。
これに対して、管財事件の場合は破産手続開始決定によって差押手続が失効しますので、同時廃止の場合よりも早期に給料を受け取ることが可能になります。
実務的には、破産管財人から執行裁判所へ破産手続開始決定があったことについて上申書を提出してもらい、差押手続を終了させることになりますが、管財事件になることが見込まれるケースの場合には、同時廃止よりも給料を受け取れるようになる時期を早められる可能性がありますので、スピード感をもって準備することが重要です。
以上、破産申立前に既に差押えがされている場合の流れについてご説明しましたが、破産手続の開始決定が出た時点でまだ差押えがなされていなかった場合には、それ以降、新たに差押えをされることはありません。
このように、申立の時点で既に給料を差押えされている場合には職場を巻き込んでしまうことになりますが、適切かつ迅速に自己破産の申立を行えば、給料の差押えに至ることなく手続を進めることができますので、自己破産を検討している場合には早めの対応をお勧めします。
弁護士 平本丈之亮