以前のコラムで、駐車場内の交差部分で車両同士が接触した場合の過失割合についてお話ししました(→「駐車場の交差部分での出会い頭事故の過失割合~交通事故⑩~」)。
駐車場内の通路では、四輪車だけではなく多くの人が歩行することが予定されていますが、もしも駐車場の通路で四輪車と歩行者が接触した場合に過失割合がどうなるかというのが今回のテーマです。
車両:歩行者 90:10
駐車場内の通路は歩行者が通行することが想定されているため、駐車場の通路を通行する四輪車には、人の往来があることを常に予見し歩行者の通行を妨げない速度・方法で進行する高度の注意義務があるとされています。
他方、歩行者としても、駐車場の通路上を四輪車が通行することは予見するべきであり、慎重に安全を確認しながら歩行することが要求されるため、歩行者にも一定の過失があると判断されて上記のような割合になります。
以下のような事情がある場合には、基本の過失割合が修正されます。
【歩行者の急な飛び出し】
歩行者に+10
この場合、歩行者の落ち度が大きいためです。
【歩行者用通路標識上の接触】
四輪車に+20
歩行者が白線等で示された歩行者用の通路を通行していた場合です。
このような場合、歩行者の通行が特に保護されるべきであるため、歩行者に有利な方向に修正がなされます。
【歩行者が児童・高齢者】
四輪車に+5
【歩行者が幼児・身体障害者等】
四輪車に+10
歩行者が児童等のいわゆる交通弱者の場合には通行を保護すべき必要性が強く、その分、運転者側の責任が重くなるためです。
・幼児・児童・高齢者・身体障害者等の意味
「幼児」=6歳未満
「児童」=6歳以上13歳未満
「高齢者」=概ね65歳以上
「身体障害者等」=以下の①~④に該当する人
①身体障害者用の車いすで通行している人
②杖を持ち、又は盲導犬を連れている目の見えない人
③杖をもつ耳が聞こえない人
④道路の通行に著しい支障がある肢体不自由・視覚障害・聴覚障害・平衡機能障害がある人で杖を持っている人
【四輪車の著しい過失】
車両に+10
【四輪車の重過失】
車両に+20
四輪車の運転者に「著しい過失」、「重過失」がある場合には、上記のとおり修正がなされます。
「著しい過失」、「重過失」の具体例は以下の通りです。
【著しい過失=事故態様ごとに通常想定されている程度を越えるような過失】
①脇見運転などの著しい前方不注視
②著しいハンドル・ブレーキ操作の不適切
③携帯電話などを通話のために使用したり画像を注視しながらの運転
④酒気帯び運転(※1)
⑤一時停止標識違反
⑥通行方向表示違反(逆走)
⑦四輪車が通路を進行する他の車両の通常の進行速度を明らかに上回る速度で進行していた場合(※2)
⑧差右折時や後退時などに、進行方向の見通しが悪い場所で徐行しなかった場合
など
※1 血液1ミリリットルあたり0.3ミリグラム以上又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上が罰則の対象ですが、罰則の適用のない程度の酒気帯びも対象となります。
※2 速度超過の程度によっては重過失と評価される可能性もあります
【重過失=故意に比肩する重大な過失】
①酒酔い運転(酒気を帯びた上、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転)
②居眠り運転
③無免許運転
④過労、病気、薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある状態で運転
など
弁護士 平本丈之亮