おまとめローンの注意点と債務整理への影響

 

 借入件数が多くなり支払いが難しくなった場合、債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)をするという方法のほか、おまとめローン(借り換え)によって債務を一本化するという選択肢があります。

 

 おまとめローンは、上手に活用することができれば、信用情報に傷をつけることなく支払いを可能にできるメリットがありますが、他方で、途中で支払不能になった場合、その後の債務整理において選択肢が狭まってしまう可能性があります。

 

 そこで今回は、債務整理が必要となる場面において、おまとめローンにどのようなリスクがあるのかについてお話ししたいと思います。

 

保証人を巻き込むリスク

 

 おまとめローンの金額等にもよりますが、おまとめローンを利用する場合、保証人を求められることがあります。

 

 万が一、おまとめローンを含む債務について支払不能になった場合、自己破産や個人再生をしたとしても保証人の責任は免除されないため、保証人に多大な迷惑をかけることになります。

 

 そのため、おまとめローンを利用するかどうかを検討するときは、保証人を求められる可能性があるかどうか、また、本当におまとめローンを最後まで完済できるのかを慎重に考える必要があります。

 

再生計画否決のリスク(小規模個人再生)

 

 また、債務整理の手法の一つである個人再生のうち、小規模個人再生については、債務者数か債務額の過半数について反対があると再生計画が否決されてしまいますが、おまとめローンを利用したことで単独過半数を占める債権者が生じた場合には、その債権者の反対によって小規模個人再生がうまくいかなくなる可能性があります。

 

 このような事態が想定される場合には、もう一つの方法である給与所得者等再生を検討することになりますが、債務者が「給与所得者等」であることや収入の変動の幅が小さいという要件(※)があることや、2年分の可処分所得以上の返済を要する関係で小規模個人再生よりも必要返済額が増えてしまう可能性があります。

 

※給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、その額の変動の幅が小さい(=年収換算で5分の1未満の変動が一応の目安)こと

 

個人再生で住宅資金特別条項を利用できないリスク(不動産担保ローンがある場合)

 

 また、個人再生の大きなメリットは自宅を残しながらそれ以外の債務を圧縮できるところにありますが、そのためには再生計画に住宅資金特別条項というものをつけなければなりません。

 

 ところが、この住宅資金特別条項をつけるには、自宅に住宅ローン以外の担保がついていないことが要件となっているため、おまとめローンの融資条件に自宅への担保権の設定が含まれていた場合、住宅資金特別条項を利用できなくなってしまいます。

 

 

 以上の通り、おまとめローンを利用する場合、その条件として保証人をつけたり自宅への担保権の設定が必要とされると、支払いできずにいざ債務整理をしなければならないという段階で思わぬ足かせとなることがあります。

 

 そのため、おまとめローンの利用を検討するときは、信用情報を傷つけずに借金を一本化できるメリットと、上記のような支払不能時におけるリスクを慎重に検討し、おまとめ後にきちんと支払いをできる状態になるかどうかを考えたうえで進める必要があります。

 

弁護士 平本上之亮