個人の自己破産の手続にかかる期間は?~自己破産⑫~

 

 自己破産を検討しているときに、どれくらいで手続が終わるのかとても気になると思います。

 

 個人の自己破産には、破産管財人がつかない簡易なケース(同時廃止)と、破産管財人がつくケース(管財事件)の2つのパターンがありますが、今回はその2つのそれぞれについて、概ねどれくらいで最後の手続まで終わるのかについてお話しします。

 

同時廃止

申立までの期間:1~3か月

 

 破産管財人がつかない簡易なケースは、基本的に財産がない場合で、かつ、借り入れの理由にも大きな問題がないパターンですので、準備期間にはそれほど時間はかかりません。

 

 もっとも、裁判所に提出する書類の中に、申立前2か月間の家計の収支を記載した収支表を添付する必要があり、経験上、この収支表をきちんと作るのに苦労するパターンが多くあるため、その他の書類の準備と合わせて少なくとも2か月間は準備期間を要することが多い印象です。

 

 もっとも、すでに給料の差押えがなされているなど緊急性が高い事案だと、それよりも短い期間で申し立てする場合もありますが、1か月未満で申し立ての準備ができる方はまれですので、事実上、1か月くらいはかかることが多いと思います。

 

 他方、2か月間というのもその他の書類をきちんと準備できる標準的なスケジュールであり、仕事をしながらの準備等でどうしても時間がかかることも多いため、当職の経験では3か月程度かかる場合もあります。

 

 このように、破産申立までの期間についてはご本人の状況にかかる部分も大きいため、早期の申立てを希望する場合には準備に力を入れて行うことが必要となります。

 

破産申立から破産手続開始決定まで:1週間~1か月程度

 

 この期間は裁判所が書類の審査をするものであり、申立時に提出した書類に不備がないかどうか、記載内容に不明な点がないかどうかによってまちまちですが、経験上、長くても1か月程度です。

 

 弁護士が関与する場合には、あらかじめどこが裁判所で問題になるかを予想し、申立の段階から必要な書類を提出したり上申書を作成して事情を説明して時間の短縮を図りますので、ここが弁護士に依頼するメリットの一つでもあります。

 

破産手続開始から免責決定まで:概ね3か月

 

 裁判所の審査が終わり、問題がなければ破産手続が開始され、それと同時に手続が廃止されますが(これが同時廃止)、その後、免責を検討するまでに概ね3ヵ月程度かかります。

 

 この期間については、完全に書面審査だけで終わる場合もあれば、免責審尋と言って裁判官の面接を受けるケースもありますが、同時廃止ということは概ね問題がないと裁判所が判断した場合ですので、ここまでくれば免責決定まではあと一息というところまで来ています。

 

免責決定の確定まで:概ね1か月

 

 免責決定が出ても、その後に官報公告と債権者の異議申立期間があるため、確定まで概ね1か月程度かかります。

 

 もっとも、債権者が貸金業者、信販会社などであれば異議を出してくることはほぼありませんので、あまり気にしなくても大丈夫なことが一般的です。

 

管財事件

申立までの期間:まちまち

 

 管財事件であっても、書類の準備そのものは同時廃止の場合とあまり変わりません。

 

 にもかかわらず申し立ての期間がまちまちなのは、管財事件の場合、申立費用が高額になる場合があるからです。

 

 管財事件の場合、非事業者であっても10~30万円程度(場合によっては50万円程度)の予納金を収める必要があり、自己破産を検討している方がこれを短期間で準備することは困難なことがあります。

 

 この場合、予納金を分割で準備することになりますが、そのためにかかる期間はご本人や家族の経済力に左右されるため、どうしても期間が読めないということになります。

 

 そのため、自己破産をするときに管財事件になる場合には、どれくらいの予納金が必要になるかを検討し、それをどのように準備するかをスケジューリングする必要がありますので、弁護士への相談が望ましいと思います。

 

破産申立から破産手続開始決定まで:1週間~1か月程度

 

 この点は同時廃止とあまり変わりません。

 

 もっとも、当初の予定よりも高額な予納金を求められることもありますので、その場合にはもう少し時間がかかることになります。

 

 予納金が不足した場合に裁判所がどこまで待ってくれるかは正直裁判官次第のため明確な指針はありませんので、ケースバイケースで対応し、残念ながら申立を一旦取り下げざるを得ないこともあります。

 

破産手続開始から免責決定まで:3か月以上(まちまち)

 

 管財事件の場合、概ね破産手続開始決定から3か月後に債権者集会が開かれ、財産の売却などが不要なケースであればそこで免責決定まで行くこともあります。

 

 他方、不動産の売却等の財産処分や配当を行うケースの場合には、3か月で終わらずにもっと時間がかかりますが、そのような事案もどの程度の時間がかかるかはケースバイケースです。

 

免責決定の確定まで:概ね1か月

 

 この点は同時廃止と変わりません。

 

 いかがでしょうか?

 

 ひとくちに自己破産といっても、その人の事情によって裁判所での手続きにかかる期間はまちまちですが、申立てまでにかかる準備期間や破産手続開始決定までの期間は事前準備によって短縮することができますので、準備は念入りに行うことをお勧めします。

 

 弁護士 平本丈之亮

 

 

 

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