これまでの自己破産のコラムの中で、何度か「破産管財人」(はさんかんざいにん)というキーワードが出てきました。
破産管財人は破産の手続の中で重要な役割を果たしていますが、これから自己破産を申し立てようと考えている人や破産手続中の人にとっては、破産管財人というものが一体どういう人で、どのようなことをするのか分からないという方もいらっしゃるかと思います。
当職もこれまで数多くの破産管財人を務めてきましたが、今回はその経験を踏まえ、主に個人破産を前提に、破産管財人がどういうことをするのかについてQ&A方式でお話ししたいと思います。
弁護士が選任されます。
ざっくり言うと、①財産がある場合、②借り入れの理由に問題がある場合です。
どの程度の財産や問題があれば破産管財人が選ばれるかはケースバイケースとしか言えませんが、財産について言えば、20万円を超える評価の財産があるかどうかが一応の目安にはなります。
破産管財人がつかない事案(同時廃止)では、郵便代を含め申立の費用は概ね2万円弱程度ですみますが、破産管財人がつく事案では規模に応じて追加の予納金が必要になります。
当職の経験では、非事業者の個人であれば10~30万円、個人の事業者では20~50万円程度ですが、資産や負債の規模が大きくなれば、それに従って予納金も高額になります。
追加で納める予納金は、破産手続を進めていく上で必要な各種費用や管財人の報酬にあてられます。
大きく分けて、①資産の調査・管理・回収・債権者への配当と、個人の破産事件の場合であれば、①に加えて、②自由財産拡張の申立・上申に対する意見を述べること、③免責不許可事由の有無を調査して裁判所に報告することです。
大きいところでいえば、破産者宛の郵便物が破産管財人宛に転送されます。
これは破産者の資産調査の一環として行われるものですが、転送された郵便物から隠しごとがばれることもあります。
また、破産に至った理由や経緯について説明するため、破産管財人の事務所に出向いていただく必要があります。
先ほど述べた転送郵便物の調査のほか、破産管財人は、金融機関に対して口座の有無を確認したり保険会社に保険の有無を確認するなど、必要に応じて関係各所に対する調査が可能です。
このように、たとえ口座や保険などを隠していても管財人がその気になって調査すればすぐにばれてしまいますし、ばれた場合には資産隠しと評価され免責が不許可になるリスクがありますので注意が必要です。
破産者には破産管財人に対する協力義務・説明義務がありますので、これを拒否したり虚偽の説明をすると犯罪になります(破産法268条1項、同40条第1項1号)。
また、当然ながら、誠実な債務者ではないとして、破産管財人は裁判所に免責は許可すべきでないという意見を出すことになります。
破産手続では、一定の範囲の財産(概ね99万円以下の範囲)を手元に残せる場合があるのですが(「自己破産すると、保険は解約しなければならないのか?~自己破産②~」)、これを自由財産の拡張といいます。
自由財産の拡張については、破産者から財産の一部を残して欲しいという申立・上申があった場合に、破産管財人がその適否を調査して裁判所に意見を述べ、裁判所が判断するという流れになっています。
このように最終的な判断は裁判所が行うのですが、実際には破産管財人の意見が重視される傾向がありますので、どうしても一部の財産を残したいというときは、その財産の必要性を破産管財人に理解してもらえるかどうかが鍵となります。
いかがだったでしょうか?
このように、破産の手続では破産管財人の役割がとても大きいということをご理解いただけるかと思います。
これから自己破産を考えている方にとっては、破産管財人がつく可能性があるかどうかで進め方や費用が大きく変わりますので、財産や借り入れの理由などで問題がありそうだという場合には、積極的に弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士 平本 丈之亮