辞めたいけど辞められない~辞職(退職)の自由②・期間の定めのない場合~

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 前回のコラム(「辞めたいけど辞められない~辞職(退職)の自由①・期間の定めのある場合~」)では、契約期間のある雇用契約を交わした労働者が辞める場合について説明しました。

 今回は、期間の定めのない雇用契約を交わした場合についてお話しします。

 

<民法第627条>

 期間の定めのない雇用契約については、民法第627条に定めがありますが、具体的な辞め方は労働者の給与形態によって以下のように異なっています。

 

<時給制・日給制>

 アルバイトが典型例ですが、この場合は2週間の予告期間を置くことで自由に辞職することができます(民法第627条1項 ※)。

 


※ 民法第627条1項

 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。


 

<日給月給制>

 一日あたりの給料が決まっていて、勤務日数に応じて1ヶ月に1回、まとめて給料が払われれる場合ですが、この場合も民法第627条1項が適用され、2週間の予告期間を置くことで辞職が可能です。

 

<完全月給制(欠勤しても減給されない場合)>

 管理職ですとこのような給与体系になっていることがありますが、この場合は民法第627条2項(※2)が適用されます。

 もっとも、条文をただ読んだだけではわかりにくいので、これをもう少しかみ砕いてみると、以下のようになります。

 たとえば、給料が毎月末日締めで、4月に辞職の申出をしたとすると、辞職の効力は以下のようになります。

 

 【給与計算期間の前半に辞職の申出をした場合】

  =その給与計算期間の末日に辞職の効力が生じる。

  →4月15日までに辞職の申出をした場合

  →4月30日で辞職の効力が生じる。

 

 【給与計算期間の後半に辞職の申出をした場合】

  =その給与計算期間の次の給与計算期間の末日に辞職の効力が生じる。

  →4月16日~4月30日までの間に辞職の申出をした場合

  →5月31日で辞職の効力が生じる。

 


※2 民法第627条2項

 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。


 

<月給日給制(欠勤すると減給される場合)>

 この場合、①欠勤すれば減給される点は日給月給制と同じであるため、2週間前に辞職の申出をすれば足りるという見解(民法第627条2項は完全月給制にだけ適用されるという考え方)と、②月給制である以上、辞めるには2週間以上の期間が必要になる(民法第627条2項は完全月給制以でなくても適用されるという考え方)、という見解があります。

 ざっと調べた範囲ではどちらの見解が優勢か判然としませんでしたが、法的にみて、より問題になりにくい辞め方というものを追求するなら、②の見解を前提に、給与計算期間の前半のうちに辞職の申出をしておくのが無難と思われます。

 このように考えても、たとえば上記の事例でいうと、4月15日に辞職の申出をしておけば、仮に②の考え方でも4月30日に辞職の効力が生じますので、①の考え方と比べてあまり差が生じないことになります。

 

<6ヶ月以上の期間で給与額を決めた場合>

 あまり一般的な給与形態ではないかもしれませんが、この場合には、民法第627条3項(※3)により、3ヶ月以上前の予告が必要とされていますので注意が必要です。

 


※3 民法第627条3項

 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。


 

<就業規則で辞職の申出期間について規定がある場合>

 たとえば、日給月給制の社員について、「退職するには退職する半年以上前に申し出て会社の許可を得ること」などといった定めがある場合、どのように考えるべきでしょうか?

 就業規則と民法第627条との関係については、労働者の退職の自由を不当に拘束しない限り、2週間を超える予告期間を求める就業規則も有効とする見解がありますが、過去の裁判例では、民法第627条の規定よりも長い予告期間を定めた就業規則を無効と解したものがあります(東京地裁昭和51年10月29日判決  ※4)。

 なお、会社の承諾を得なければならないとする点は、辞職の自由を著しく制限するものであるため、どちらの見解でも無効と思われます。

 上記の事例は、先ほどの裁判例の見解によれば当然に就業規則は無効となりますが、仮に一定の範囲では有効とする見解でも、6ヶ月もの予告期間を置くことは業務の引き継ぎの必要性などを考慮しても長すぎますので、労働者の辞職の自由を不当に拘束するものとして無効になる可能性が高いと考えます

 


※4 東京地裁昭和51年10月29日判決

以上によれば、法は、労働者が労働契約から脱することを欲する場合にこれを制限する手段となりうるものを極力排斥して労働者の解約の自由を保障しようとしているものとみられ、このような観点からみるときは、民法第六二七条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。
 従って、変更された就業規則第五〇条の規定は、予告期間の点につき、民法第六二七条に抵触しない範囲でのみ(たとえば、前記の例の場合)有効だと解すべく、その限りでは、同条項は合理的なものとして、個々の労働者の同意の有無にかかわらず、適用を妨げられないというべきである。
 なお、同規定によれば、退職には会社の許可を得なければならないことになっているが(この点は旧規定でも同じ。)、このように解約申入れの効力発生を使用者の許可ないし承認にかからせることを許容すると、労働者は使用者の許可ないし承認がない限り退職できないことになり、労働者の解約の自由を制約する結果となること、前記の予告期間の延長の場合よりも顕著であるから、とくに法令上許容されているとみられる場合(たとえば、国家公務員法第六一条、第七七条、人事院規則八-一二・第七三条参照)を除いては、かかる規定は効力を有しないものというべく、同規定も、退職に会社の許可を要するとする部分は効力を有しないと解すべきである。」


 

<就業規則の方が有利な場合>

 これに対して、民法第627条よりも労働者にとって有利な就業規則を定めることは問題なく許されますので、そのような場合は就業規則が優先的に適用されることになります。

 すると、たとえば「退職するには退職する10日前までに申し出ること」などという就業規則は、2週間の予告期間を求める民法第627条1項よりも労働者にとって有利ですから、このような定めは有効であり、辞める際には就業規則を前提に対応すれば足りると思われます。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

2018年3月26日 | カテゴリー : コラム | 投稿者 : kwkm-@dm1n