交通事故の慰謝料が増額される場合とは?~交通事故⑦・慰謝料の増額事由~

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 交通事故賠償の分野においては、慰謝料の計算方法や金額がある程度定型化されています(※)。

 しかし、このような慰謝料の計算はいわば標準的な事案を前提としたものですから、例外的に一定のケースでは慰謝料が増額されることがあります。

 そこで、今回は、慰謝料の増額事由としてどのようなものがあるかについて説明したいと思います。

 


 ※関連するコラム等

 「入院・通院に対する慰謝料はどのように計算するのか?~交通事故②・入通院慰謝料~」

 「後遺障害に対する慰謝料はどのように計算されるのか?~交通事故③・後遺障害慰謝料~」

 【死亡事案の場合の目安(赤い本)】

  ・一家の支柱  2800万円

  ・母親・配偶者 2500万円(H28以降) 

  ・その他    2000~2500万円(H28年以降)


 

<加害者が悪質な場合>

 交通事故の慰謝料は事故によって受けた被害者の精神的苦痛を償うものですから、加害者が悪質なために被害者の精神的苦痛が強ければ、その分、償いとしての慰謝料も増えると考えられます。

 具体的な増額事由としては、たとえば、以下のようなものがあります。

 なお、ここで紹介する事情があったことは被害者側で立証する必要があり、また、一部の事情については増額をしなかった裁判例もあるようですので、必ず増額されるとまで言い切れないことには注意が必要です。

 

①加害者が故意に事故を起こした場合

②加害者に重過失がある場合

・無免許運転

・ひき逃げ(救護義務違反)

・飲酒運転

・著しいスピード違反

・ことさらに信号を無視した場合

・薬物などの影響により正常な運転ができない状態だった場合 など

③事故後の加害者の態度が著しく不誠実だったような場合

・事故の証拠を隠滅した

・虚偽の供述や不合理な主張をして事故の責任を争った など

 

<一部の後遺障害で逸失利益が否定された場合>

 先ほど述べたように被害者の悪質性が高いような場合以外でも、以下のような一部の後遺障害について「逸失利益」(=後遺障害によって失われた利益)が否定された場合、その代わりに慰謝料が増額されることがあります。

 

①歯牙障害

②醜状障害(外貌醜状)

骨の変形障害

 

<増額の幅は?>

 これまで述べたような慰謝料の増額事由がある場合にどの程度増額されるのかは、基本的には裁判官の裁量的な判断にかかる部分であり、また、後遺障害事案では逸失利益を認めるかどうかにもかかわってくるところでもありますので、一定の基準があるわけではありません。

 そのため、ここでは参考としていくつかの裁判例を紹介するにとどめます。

 

【加害者が悪質な場合】

・酒気帯び運転の事案(福岡地判平成28年11月9日)

 入院60日、通院約4ヶ月半(実通院日数55日)、後遺障害等級12級13号だった事案について、入通院慰謝料を185万円(赤い本の基準で計算すると概ね170万円前後)、後遺障害慰謝料について315万円(赤い本の基準では290万円)とした。

 

・故意に車両を発進させて被害者に接触し、ボンネットに載せたまま走行して路上に転倒させ、さらに事故後逃走した事案(京都地判平成21年6月24日)

 通院76日だった事案について、通院慰謝料を130万円とした(赤い本の基準で計算すると概ね63万円程度)。

 

・加害者が高速道路において、猛スピードで車線変更をして追越車線上のトラックを左から追い越そうとした際に、走行車線を走行していたバイクに追突して死亡事故を起こした事案(被害者:25歳・独身・男性 静岡地裁浜松支判平成20年9月30日)

 加害者の過失が重大であること、加害者が反省の色をまったく示そうとせず、刑事裁判で約束した写経や月命日の訪問といった謝罪行為を反故にしたことなどを指摘し、死亡による慰謝料を2800万円とした(赤い本の基準では2000~2500万円の範囲)。

 

【後遺障害で逸失利益が否定されたが慰謝料が増額されたケース】

・外貌醜状の事案(東京地判平成28年12月16日)

 顔面に後遺障害等級9級16号の外貌醜状が残った女性の後遺障害慰謝料について、830万円とした(赤い本の基準では690万円)。

 

・歯牙障害の事案(大阪地判平成28年5月27日)

 歯に後遺障害等級14級2号の歯牙障害が残った女性の後遺障害慰謝料について、150万円とした(赤い本の基準では110万円)。

 

・骨盤変形の事案(名古屋地判平成15年12月19日)

 骨盤変形等で後遺障害等級12級5号の障害が残った男性の後遺障害慰謝料について、600万円とした(赤い本の基準では290万円)。

 

 交通事故に遭われた被害者やご遺族の方が、自分達のケースで妥当な慰謝料がいくらであるかを判断することは容易ではなく、特に、今回お話したような増額事由がある場合にはなおさらと思われます。

 慰謝料を含む損害賠償額については保険会社から提案を受けることが多いと思いますが、加害者側の対応に疑問があったり後遺障害について逸失利益を認めないという対応をされたときは慰謝料の増額事由を主張することが有益な場合がありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮