離婚後に相手の財産隠しが判明した場合、どうするか?

 

 離婚事件の中でシビアに争われることの多いものとして財産分与がありますが、その中で問題になることがあるのが相手方の財産隠しです。

 

 もしも離婚当時、相手方が夫婦共有財産に該当する財産を隠しており、そのことが後で発覚した場合、隠されていた方としてはどのような対処が可能か、というのが今回のテーマです。

 

・財産分与の取り決めがなかった場合

 

 【離婚から2年以内】 

 

 まず、離婚時に財産分与の取り決めが何もなかった場合、離婚から2年以内であれば、新たに判明した財産を含めて財産分与の請求をすることが可能です。

 

 もっとも、どのような財産であっても財産分与の請求ができるというわけではなく、あくまで夫婦が共同で築き上げたと評価できるもの(夫婦共有財産)に限られますから、隠していた財産がいわゆる特有財産であった場合には財産分与として請求することはできません。

 

 【2年が経過してしまった場合】 

 

 この場合は財産分与の請求期間が経過してしまったため、改めて財産分与を請求するという方法は難しいところです。

 

 ただし、相手方が財産を隠していた場合には、本来財産分与として認められた可能性のある金額について、損害賠償を請求できる可能性があります(これを認めた裁判例として、浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決があります)。

 

・財産分与の取り決めをしていた場合

 

 以上に対して、財産分与の合意をしたが、その中に本来入るべき財産が入っていなかったという場合には、その財産が重要なものであり、その財産の存在を事前に知っていれば当初の合意はしなかったといえる事情があるときは、財産分与に関する合意が錯誤によって無効(2020年4月1日以降は取消)となる可能性があります(→「財産分与をやり直すことはできるか?」

 

・事前の情報収集が重要

 

 以上の通り、相手が財産隠しをしたとしても、後日そのことがわかった場合には救済されるケースもあります。

 

 もっとも、このようなケースは幸運にも隠し財産の存在が判明したからこそ可能だったものであり、そもそも見つからなければ請求することはできないという限界がありますので、実際に離婚するにあたっては、事前にどれだけ相手方の財産に関する情報を得られるかの方がより重要となります。

 

 弁護士 平本丈之亮