会社員や公務員など退職金のある方が自己破産する場合、退職金はどのように扱われるでしょうか?
これは、債務整理の方法として自己破産を検討する場合に問題となることの多いテーマの一つです。
そこで、今回は自己破産と退職金をテーマにお話ししたいと思います。
この場合、支給額全額が自己破産による処分の対象となります。
ただし、受け取った金額が20万円以下であれば、そもそも処分されません。
また、20万円を越えてしまう場合でも、他の資産と合算して、合計で99万円までであれば「自由財産拡張」(じゆうざいさんかくちょう)という制度を利用し、手元に残せる場合があります(なお、病気で高額の医療費がかかるなど特別な事情があれば、99万円を超えてさらに手元に残せる場合もあります)。
このような場合は、退職した場合に支給される金額の8分の1が自己破産による処分の対象となります。
たとえば、自己破産した時点で退職したら400万円の退職金が支給される見込みの場合には、その8分の1である50万円が処分されます。
もっとも、退職金が自己破産で処分されるといっても、実際に退職することを求められることはなく、資産としてカウントした金額(上の例では50万円)を、給料などを使って裁判所に納める形となることが通常です。
これに対して、支給見込額が160万円以下であれば、その8分の1は20万円以下となりますので、自己破産による処分対象にはならないことになります。
なお、8分の1が20万円を超える場合でも、他の資産と合算して99万円までは手元に残せる場合があるというのは、上の事例の場合と同じです。
この場合には、退職金の4分の1が自己破産による処分の対象です。
たとえば、近々400万円の退職金が支給される見込みの場合には、その4分の1である100万円が処分の対象となります。
これに対して、支給見込額が80万円以下であれば、その4分の1は20万円以下となりますので、処分の対象にはならないことになります。
20万円を超える場合でも、他の資産と合算して99万円までは手元に残せる場合があるというのは、上の2つの事例の場合と同じです。
退職金の中でも、上記のようなものについては、そもそも法律で差押が禁止されているため、自己破産手続の中でも処分されることはありません。
以上のとおり、自己破産をするタイミングや退職金の種類によって、退職金を残せるかどうか大きく変わることがお分かりになるかと思います。
支払不能であることが明らかであれば、早期に自己破産することがかえって老後の安定につながるケースもありますので、自己破産する場合にはタイミングを誤らないよう注意が必要です。
弁護士 平本丈之亮