債務整理の方法として個人再生を選択する場合、実際にどのような流れで、どれくらいの期間がかかるのかが気にかかると思います。
そこで今回は、個人再生を弁護士に依頼した場合の具体的な流れについて、当事務所で手掛けることの多い小規模個人再生をもとにご説明したいと思います
なお、これからお話するのは盛岡での運用を前提にした当職の経験に基づくものですので、他庁や他の弁護士が代理するケースにおいては異なる流れを辿る可能性があります。
【STEP1】相談~委任
個人再生を行うには、まずはご相談の中で①債務の件数・内容・大まかな金額、②資産の内容、③収入状況などについて詳しく聞き取りを行い、今後の大まかな方針を立てる必要があります。
これらを確認し、再生計画案の認可決定が下りる可能性があると判断できた場合には、正式に個人再生の申立についてご依頼を受け、準備を開始します。
債務額は最低弁済額を計算するための基準になる場合がありますので、最初の相談の時点で分かっていた方が望ましいのは確かです。 しかし、当職の経験上、債務額よりも、むしろ債権者名の漏れがないかの方が重要です。 正確な金額は後で調査するのでいずれ分かりますが、債権者の漏れがあるとリカバーが困難な場合もあるため、どちらかと言えば、ご相談の際は正確な債務額より債権者名に漏れがないかどうかに気を配っていただいた方が良いと思います(特に知人・親族からの借入や保証人、過去の通信契約の滞納などが漏れやすいところです)。 ちなみに個人再生は、法律上は必ずしも弁護士に依頼しなくても申立可能です。 もっとも、個人再生では、申立のための書類準備のほかにも、負債額や資産状況をもとに最低弁済額(→「個人再生をすると、負債はどれくらい減るのか?~個人再生②・最低弁済額~」)の計算をしたり、それを前提として具体的な再生計画案を作り、期限内に裁判所に提出するといった作業があり、お仕事や家事などをしながらこういった作業を行うことは難しい場合もあると思います。 また、弁護士などの専門家に依頼しない場合には、申立までの準備期間中は債権者からの督促は止まりませんので、そういった事情から自分で申し立てるのが難しいという方は専門家に依頼して進めた方がスムーズに進むと思います。 弁護士への依頼後、まずは弁護士から各債権者に対して受任通知を発送し、住宅ローン以外の債務についてはいったん支払いを停止します。 受任通知が発送されることにより、一般の貸金業者や信販会社などは個別の取り立てを停止しますので、厳しい督促から一時的に解放されて精神的に一息つくことができます。 ただし、受任通知発送の時点ですでに滞納期間が長いケースだと、受任通知後まもなく裁判を起こされることがありますし、ご相談を受けた時点ですでに裁判を起こされていたり給与の差押えまでされているケースもありますので、相談するタイミングには注意が必要です。 受任通知発送の時期とほぼ同時に、個人再生の申立に向けた書類収集などの準備を開始します。 準備していただく書類は多岐にわたり、また、人によって提出するものもまちまちですので、ここは弁護士と二人三脚で十分に準備を行います。 申立てまでの期間も事案によりけりですが、支払能力や家計管理能力に大きな課題がなく、ご本人も迅速に書類を揃えられるケースであれば、通常、受任から2~3ヶ月程度で申し立てが可能となります。 これに対して、依頼時点での家計状況に課題があり(収支がトントンなど返済原資が出ない場合等)、このままでは認可決定が得られない可能性が高いというときには、家計収支の改善に取り組んでいただき時間をかけて支払可能な状況にまでもっていく必要がありますし、また、ご本人が忙しく書類の準備が進まないというケースもありますので、そのような場合だとやむを得ず申立までに期間を要することもあります。 書類が揃い、家計状況にも問題がないことが確認できたら、裁判所に対して個人再生の申立てを行います。 申立後、今度は裁判所が提出書類の審査を行い、不明点や疑問点への報告を求められ、書類の不足があればそれを補い、問題がないと判断されれば再生手続の開始決定が出されます。 申立から再生手続開始決定までの期間も事案と申立時期によってまちまちですが、問題のないケースでは感覚的には1~3週間、長くても1か月程度で出ることが多い印象です(岩手県内の支部の事案ですが、最短で申立から2日で決定が出たケースもありました)。 なお、弁護士が代理人についている場合、基本的にはご本人は裁判所に行く必要はなく、書面審査だけで手続が進んでいくのが通常です。返済能力などに問題があるケースだと裁判所に行く手続(=審尋)が設定されることもありますが、少なくとも当職自身は盛岡地裁管内の裁判所で審尋期日が設定されたことはありません。 再生手続の開始決定が出されると、その後は債権者の債権届出、届出債権に対する異議申述、財産目録・報告書(民事再生法第124条、125条)の提出と手続きが進んでいき、債権額と資産の内容を踏まえて、定められた提出期限までに再生計画案を作成して裁判所に提出するという流れをたどります。 再生手続の開始決定から再生計画案の作成・提出といった一連の作業については弁護士が行います。 その間、ご本人は、開始決定のときに裁判所から指示された金額を毎月積み立て(履行テスト)、住宅ローンがある場合にはこれまで通り支払いを継続する必要がありますが、それ以外には普段通りの生活を送っていただいて問題ありません(新たな借り入れや浪費などしないことは当然の前提です)。 再生計画の開始決定から再生計画の提出までは通常3ヶ月弱程度ですが、やむを得ない事情により提出期限を延長する必要がある場合には事前に裁判所に申請をして認めてもらい、その上で提出することもあります。 再生計画案の提出後、裁判所が再生計画案に自体に問題があるかどうかを審査し、問題があるときは修正します。 提出された再生計画案に問題がないという判断になった場合には、裁判所は再生計画案を債権者の決議に付し(付議決定)、議決権を有する債権者の過半数、かつ、議決権額の過半数の反対がなければ再生計画案が認可されます(小規模個人再生の場合。給与所得者等再生の場合にはそもそもこの書面決議自体がありません)。 このようにして再生計画案が認可されると概ね1か月程度で確定し、その後、再生計画に定められたスケジュールに沿って改めて支払いをスタートすることになります。 ちなみに、認可決定後の返済方法は依頼する事務所によって異なり、ご本人に支払いをお任せするところもあれば返済期間中の支払いまで代行するところもあり、依頼する弁護士との契約内容によって違います。 どちらがいいかはご本人のニーズにもよるため一概には言えませんが、認可決定後の返済期間は短くても3年と長丁場ですから、自分で支払いを管理するのが難しい場合には確定後の支払いの代行まで引き受ける事務所を選んだ方が良いと思います(なお、当事務所では認可決定後の支払い代行も行っています)。 以上、個人再生の大まかな流れについてお話ししました。 個人再生は同じく法的整理手続である自己破産にはない独自のメリットのある手続ですので、債務整理をする際の一つの選択肢としてご検討いただければと思います。 弁護士 平本丈之亮 ※借金問題については、平日以外にも専用のWEB予約カレンダーによる土日相談を受け付けています。なお、カレンダーで予約可能日となっていない土日でもご相談をお受けできることがありますので、お急ぎの場合はお電話かメール予約フォームでお問い合わせください。 お電話:平日9時~17時15分 メール・WEB予約:随時 平日:9時~17時15分 土曜日曜:予約により随時 【STEP2】受任通知・支払停止
【STEP3】申立の準備
【STEP4】申立~開始決定
【STEP5】開始決定~再生計画案の提出
【STEP6】認可決定~返済開始