弁護士の川上です。
最近、「高齢社会に合わせた相続制度の見直し」についての報道がありました。当事務所でお受けするご相談の中でも、遺産相続に関するご相談が相当の割合を占めています。今回は遺産相続の基本的な考え方についてお話しします。
遺産相続というと、「妻が1/2、子が3人だから1/2を3で割ると1/6ずつ」の権利がある、といった「法定相続分」(ほうていそうぞくぶん)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
法律で割合が決まっている以上、それに従わなければならないようにも思われますが、法定相続分はあくまでも遺産の分け方に関する話し合いがまとまらない場合の基準であり、相続人全員が合意できるのであれば、どのような分け方をしようとも自由なのです。
たとえば、亡くなった父親が残した遺産が自宅の土地・建物だけで、二男夫婦が両親と同居しており、長男は県外に自宅を構え、今後戻ってくる予定はないといったケースで、母親と長男が相続の権利を主張せず、全て二男に相続させるということも良く行われています。
この場合、母親は今後も二男夫婦にまかせることを考慮して権利を主張せず、長男は①二男がこれまで両親の面倒を見てくれたこと、②今後も母親の面倒を見てもらうこと、③自分が権利主張すると土地・建物を処分することにもなりかねず、帰省する実家がなくなってしまうおそれがあることなどを考慮し、権利を主張しないというわけです。
なお、話し合いがまとまらない場合、基本的には法定相続分に従って分けることになりますが、法定相続分に従ったのでは不公平が生じる場合、それを修正する制度として「特別受益」(とくべつじゅえき)や「寄与分」(きよぶん)があります。これらについても、追々ご説明して行きたいと思います。