個人破産と債権者集会について~自己破産⑭~

 

 自己破産のご相談を受けていると、債権者集会について尋ねられることがあります。

 ひとくちに債権者集会といっても、どういう場合に開催され、具体的にどのような手続が行われるのかはイメージが沸かないと思いますので、これから自己破産を検討している方や債権者集会を迎える予定の方について、よくあるご質問についてお答えしたいと思います(対象はいわゆる個人破産です)。

 

Q1 どういう場合に開かれるのか?

 破産管財人が選任される場合です。

 資産がなく借入の理由にも大きな問題がない場合には、「同時廃止」といって破産管財人が選任されませんが、このケースでは債権者集会も開かれません。

 もっとも、借入理由に問題がある場合、同時廃止となり債権者集会は開かないものの、裁判所に出頭して裁判官との面談(免責審尋)が必要になる場合はあります(なお、免責審尋に債権者は出頭しません)。

 

Q2 破産手続開始決定からどれくらいで開かれるのか?

 ケースバイケースですが、概ね破産の決定から3ヶ月程度後に開催されます。

 

Q3 債権者はどの程度出席するのか?

 ケースバイケースですが、債権者が金融業者や信販会社などのみであればほとんど債権者は出席しません。

 個人でも事業を営んでいた場合には取引先が出席する場合があり、家賃の滞納がある場合に大家さんが出席することもありますが、どちらかといえばレアケースです。

 

 出席率が高いのは、個人からの借入がある場合です。

 出席する理由は借入の理由や金額によって様々であり、直接意見を言いたいという強い希望がある場合から、特に何か言いたいことがあってきたわけではなく裁判所から手紙が届いたから来ただけという場合までありますが、一銭も返さずに破産していたり借りてすぐ破産した場合等問題があると、債権者集会が紛糾することもあります。

 

Q4 時間はどれくらいかかるか?

 債権者が出席しない場合には、概ね10分程度です。

 債権者が出席している場合には、破産管財人が破産に至る経緯や財産状況などを丁寧に説明し、債権者からの質問に対して応答することになりますので、この場合には30分程度かかることもあります。

 

Q5 どのような服装が望ましいか?

 特に決まりはありませんが、ラフな格好やだらしない格好はお勧めしません。

 先ほど述べたとおり債権者が出席しないことも多いですが、身だしなみも債権者に対する誠意の表れですので、債権者が来る来ないにかかわらず、自分なりにきちんとした外見を心がける必要があります。

 

Q6 破産者は債権者集会で何か発言を求められるのか?

 債権者が出席している場合には、少なくとも債権者に対して謝罪をすることが望ましいところですが、代理人弁護士がついている場合、基本的にはそれ以外は代理人が対応するのが通常です。

 債権者が出席しない場合で、かつ、破産手続が次回に続行される場合には、特に発言しないままその日の集会が終わることもまれではありません。

 

 他方、その日で破産手続が終了する場合だと、債権者集会後に引き続き行われる免責審尋において、裁判官から借入の経緯や反省点、生活再建に向けて取り組んでいることなどについて質問があり、自分自身の言葉で伝えることが求められます。

 ここは代理人の弁護士に任せることができずご自分で対応する必要がありますので、免責審尋が行われそうなタイミングでは、裁判所に提出した書類を見直したり反省点などを改めて考えておくなど準備をしておくことが重要です(まれに弁護士に依頼したことで安心してしまい当事者意識が薄くなる方もいらっしゃいますが、そのような方は裁判官に見抜かれて厳しく追及されることもありますので最後まで抜かないよう注意が必要です)。

 

Q7 債権者集会が続行される場合、次の集会期日はいつ頃になるか?

 ケースバイケースですが、通常3ヶ月程度です。

 

Q8 債権者集会を欠席するとどうなるのか?

 正当な理由のない欠席は説明義務に違反するとして免責不許可事由に該当するため、大きな問題となります。

 急な体調不良などやむを得ない場合は、緊急性の程度にもよりますが可能な限り診断書などを提出したうえで、次回の債権者集会には必ず出頭するようにします。

 なお、仕事の都合などは基本的には正当な理由にあたりません。

 

 

 

 いかがだったでしょうか?

 債権者集会は破産管財人が選任されるケースでは避けて通れない手続ですので、ここでお話ししたことや代理人弁護士からのアドバイスなどからイメージをつかんでいただき、誠実に対応していただきたいと思います。

 

弁護士 平本丈之亮 

 

スマートフォン(スマホ)の課金で作った借金で自己破産はできるのか?~自己破産⑬~

 

 スマートフォンの普及によって、多くの方が気軽にゲームなどを楽しむことができるようになりました。

 一方、このように気軽に始めることができることから、近時、ソーシャルゲーム等への課金によって多額の負債を抱え、支払不能に陥る方がいらっしゃいます。

 このような場合に、自己破産はできるのか、というのが今回のテーマです。

 

自己破産は可能だが、破産管財人が選任される可能性がある

 このようないわゆる「スマホ課金」も、ギャンブルと同様に浪費であるため、免責不許可事由に該当します。

 もっとも、免責不許可事由があっても、実際に免責が不許可になる割合は非常に低いため、スマホ課金が原因で借金を作ってしまった場合でも自己破産できる可能性は高いといえます。

 しかし、借金の理由が浪費であることから、借金の金額などの事情によっては破産管財人の選任が必要となり、そのような事情がない場合に比べて裁判所に対して納めなければならない費用が高額になる可能性があります。

 

申立までの準備をきちんと行う必要がある

 スマホ課金が免責不許可事由に該当する以上、原因であるゲーム等をそのまま継続することは免責にとってマイナスになるため、ゲーム等をやめることが必要です。

 また、なぜそのような過大な課金をしてしまったのか、その原因について自分なりにきちんと考えて、借金を作った原因や反省点などを陳述書に記載し、反省が本物であることを裁判所に示す必要もあります。

 弁護士などに依頼した場合には、第三者の視点からご自身の問題を指摘してもらったり反省すべき点などについて議論し、それらを形にする手助けをしてもらえますので、不安がある場合には依頼を検討していただくことになります。

 

免責が認められない可能性が高い場合の対応

 スマホ課金によって作った借金があまりに高額であったり、それ以外にも複数の免責不許可事由があるなど、どうしても免責が認められなさそうであるというケースもまれに存在します。

 このような場合には、次善の策として個人再生を選択することになります。

 個人再生については、基本的には借り入れの理由は問題視されないことが多いため、自己破産が困難であると判断した場合にはこちらの利用を検討することになります。

 なお、自己破産で免責が許可される可能性が高いと思われるケースでも、自分の浪費によって破産するのは債権者に対して申し訳ないなどの理由から、一部でも返済するためにあえて個人再生を選ぶ方もいらっしゃいますが、支払能力があるのであれば、初めから個人再生を選択しても問題はありません。

 

携帯電話が使えなくなる可能性に注意

 スマートフォンでの課金については、通信料と合算して支払うキャリア決済が一般的ですが、スマホ課金によって支払い不能に陥ると、多くの場合サービス料金だけではなく通信料についても支払いができない状況に陥っています。

 このような事態にまで至ると、最終的には携帯電話の通信契約自体が強制解約されてしまう可能性もあり、不利益も大きくなります。

 したがって、通信料の滞納も発生しているようなケースで自己破産などの法的手続きを行う場合には、最悪、そのような事態が生じる可能性があることを考慮して別の通信契約をどのように確保するかもあらかじめ検討しておくことが必要です。

 もっとも、新しい通信契約を確保するために、破産直前に別の通信会社との間で携帯本体を分割払いで購入したりすると、結局その分割債務も破産債権として破産手続に入れざるを得なくなり同じことの繰り返しになる可能性がありますし、支払いの意思がないにもかかわらず契約したとして手続上問題になる危険がありますので、どのようなやり方で通信契約を確保するかについては専門家に相談することをお勧めします。

 

 当職自身、スマートフォンの課金が借金の大きな割合を占める債務整理のご相談を受け、自己破産や個人再生で解決した例が複数あります。

 通信契約は生活インフラであるため比較的慎重な対応が必要になりますが、きちんと準備して見通しをもって臨めば他の借金のケースと同じように解決できますので、お困りの場合はまずは最寄りの弁護士などへご相談ください。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

 

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個人の自己破産の手続にかかる期間は?~自己破産⑫~

 

 自己破産を検討しているときに、どれくらいで手続が終わるのかとても気になると思います。

 個人の自己破産には、破産管財人がつかない簡易なケース(同時廃止)と、破産管財人がつくケース(管財事件)の2つのパターンがありますが、今回はその2つのそれぞれについて、概ねどれくらいで最後の手続まで終わるのかについてお話しします。

 

同時廃止

【申立までの期間】 1~3か月

 破産管財人がつかない簡易なケースは、基本的に財産がない場合で、かつ、借り入れの理由にも大きな問題がないパターンですので、準備期間にはそれほど時間はかかりません。

 もっとも、裁判所に提出する書類の中に、申立前2か月間の家計の収支を記載した収支表を添付する必要があり、経験上、この収支表をきちんと作るのに苦労するパターンが多くあるため、その他の書類の準備と合わせて少なくとも2か月間は準備期間を要することが多い印象です。

 

 もっとも、すでに給料の差押えがなされているなど緊急性が高い事案だと、それよりも短い期間で申し立てする場合もありますが、1か月未満で申し立ての準備ができる方はまれですので、事実上、1か月くらいはかかることが多いと思います。

 他方、2か月間というのもその他の書類をきちんと準備できる標準的なスケジュールであり、仕事をしながらの準備等でどうしても時間がかかることも多いため、当職の経験では3か月程度かかる場合もあります。

 

 このように、破産申立までの期間についてはご本人の状況にかかる部分も大きいため、早期の申立てを希望する場合には準備に力を入れて行うことが必要となります。

 

【破産申立から破産手続開始決定まで】 1週間~1か月程度

 この期間は裁判所が書類の審査をするものであり、申立時に提出した書類に不備がないかどうか、記載内容に不明な点がないかどうかによってまちまちですが、経験上、長くても1か月程度です。

 弁護士が関与する場合には、あらかじめどこが裁判所で問題になるかを予想し、申立の段階から必要な書類を提出したり上申書を作成して事情を説明して時間の短縮を図りますので、ここが弁護士に依頼するメリットの一つでもあります。

 

【破産手続開始から免責決定まで】 概ね3か月

 裁判所の審査が終わり、問題がなければ破産手続が開始され、それと同時に手続が廃止されますが(これが同時廃止)、その後、免責を検討するまでに概ね3ヵ月程度かかります。

 この期間については、完全に書面審査だけで終わる場合もあれば、免責審尋と言って裁判官の面接を受けるケースもありますが、同時廃止ということは概ね問題がないと裁判所が判断した場合ですので、ここまでくれば免責決定まではあと一息というところまで来ています。

 

【免責決定の確定まで】 概ね1か月

 免責決定が出ても、その後に官報公告と債権者の異議申立期間があるため、確定まで概ね1か月程度かかります。

 もっとも、債権者が貸金業者、信販会社などであれば異議を出してくることはほぼありませんので、あまり気にしなくても大丈夫なことが一般的です。

 

管財事件

【申立までの期間】 まちまち

 管財事件であっても、書類の準備そのものは同時廃止の場合とあまり変わりません。

 にもかかわらず申し立ての期間がまちまちなのは、管財事件の場合、申立費用が高額になる場合があるからです。

 

 管財事件の場合、非事業者であっても10~30万円程度(場合によっては50万円程度)の予納金を収める必要があり、自己破産を検討している方がこれを短期間で準備することは困難なことがあります。

 この場合、予納金を分割で準備することになりますが、そのためにかかる期間はご本人や家族の経済力に左右されるため、どうしても期間が読めないということになります。

 そのため、自己破産をするときに管財事件になる場合には、どれくらいの予納金が必要になるかを検討し、それをどのように準備するかをスケジューリングする必要がありますので、弁護士への相談が望ましいと思います。

 

【破産申立から破産手続開始決定まで】 1週間~1か月程度

 この点は同時廃止とあまり変わりません。

 もっとも、当初の予定よりも高額な予納金を求められることもありますので、その場合にはもう少し時間がかかることになります。

 予納金が不足した場合に裁判所がどこまで待ってくれるかは正直裁判官次第のため明確な指針はありませんので、ケースバイケースで対応し、残念ながら申立を一旦取り下げざるを得ないこともあります。

 

【破産手続開始から免責決定まで】 3か月以上(まちまち)

 管財事件の場合、概ね破産手続開始決定から3か月後に債権者集会が開かれ、財産の売却などが不要なケースであればそこで免責決定まで行くこともあります。

 他方、不動産の売却等の財産処分や配当を行うケースの場合には、3か月で終わらずにもっと時間がかかりますが、そのような事案もどの程度の時間がかかるかはケースバイケースです。

 

【免責決定の確定まで】 概ね1か月

 この点は同時廃止と変わりません。

 

 いかがでしょうか?

 ひとくちに自己破産といっても、その人の事情によって裁判所での手続きにかかる期間はまちまちですが、申立てまでにかかる準備期間や破産手続開始決定までの期間は事前準備によって短縮することができますので、準備は念入りに行うことをお勧めします。

 

 弁護士 平本丈之亮

 

 

 

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自己破産をするときにやってはいけないこと~自己破産⑪~

 

 個人の借金問題に関する債務整理の方法は、大きく分けると①任意整理、②自己破産、③個人再生がありますが、このうち自己破産と個人再生は法的整理と言われるとおり、法律に基づいた債務整理の方法です。

 いずれも適切なやり方をすれば、借金をなくしたり自宅を確保しながら負債を圧縮したりできる強力な手続ですが、その反面、知らずにやってしまうとそのような恩恵を受けられなくなったり、そこまでいかなくても手続面で不利な扱いを受ける行為というものがあります。

 今回は、法的整理のうち、自己破産を考えている方向けのお話として、どのようなことをしてはいけないのかについてお話したいと思います(なお、自己破産でやってはいけないことは基本的には個人再生でもやってはいけないことと思っていただいて差し支えありません)。

 

資産隠しや手続の直前に財産を移転すること

 自己破産における免責の制度は、誠実な債務者に立ち直りの機会を与えることを目的としていますので、財産をどこかに隠したり、処分を逃れるために親族や知人などに財産を渡したり名義を変えるような不誠実な者に対しては免責は許可されません。

 このような行為は、そもそも調べれば分かることがほとんですし、仮に発覚せずに手続きが終わったとしても、その後で資産隠しが判明した場合には免責が取り消されますので行うべきではありません。

 

虚偽の債権者名簿を提出すること

 これまで世話になったので返したいといった理由から、親戚など親しい人に対する負債を申告しなかった場合、単にその債権者に対する借金が免責されないだけではなく、借金全体について免責が認められなくなる可能性がありますので、債権者については正直にすべて申告することが必要です。

 

陳述書に虚偽の記載をしたり裁判所からの問い合わせに虚偽の事実を述べること

 自己破産をする場合、裁判所に「陳述書」という書類を作成して提出することになっていますが、その中で借入の経緯や過去に処分した財産などを記載する箇所があります。

 また、自己破産の申立をした後、裁判所が疑問に思ったことについて回答を求められることがあります。

 このような裁判所に提出する書類や問い合わせに虚偽を記載したり述べることも許されません。 

 たとえば、ギャンブルや浪費等の免責不許可事由があっても、きちんと申告すれば、(そのような事情がない場合に比べて費用が高くなる可能性はありますが、)最終的に免責が許可されることの方がよほど高いため、正直に申告することが重要です。

 

一部の債権者にだけ特別に支払いをしたり財産に担保を設定すること

 これも親戚などからの借り入れがあった場合にありがちなケースですが、このような特別扱いをした場合、本来なら破産管財人がつくような事案ではないのに破産管財人が選任されて余分な費用がかかるほか、破産管財人によって財産の取戻しが行われることになり(否認権)意味がないばかりか、かえって相手にも迷惑をかけるだけで無意味な行いです。

 

免責審尋や債権者集会に正当な理由なく出席しないこと

 自己破産を申し立てると、免責を許可するかどうかを判断するために裁判所に出頭する手続(免責審尋)が開かれることがあるほか、破産管財人が選任されるケースでは債権者集会に出席する必要があります。

 免責審尋や債権者集会において裁判官や債権者からの質問等に答えることは債務者の誠実さに直結するものであり、これらの手続に出席しないと免責不許可になる危険性が高くなります。

 もっとも、病気等の正当な理由があれば、事前に相談したうえで出席しなくても手続を進められる場合がありますので、やむを得ない事由があるときは事前に代理人弁護士や裁判所と良く相談することが重要です。

 

破産管財人の調査を拒否したり妨害すること

 破産管財人が選任されるケースでは、破産管財人が破産者の財産状況や借入に至る経緯等を調査し、財産があればこれをお金に換えて債権者に分配する手続きが行われますが、その過程において、破産管財人から破産者に質問がなされたり、資料の提出を求められたり、財産の処分にあたって現地への立ち合いなどの協力を求められることがあります。

 破産者がこのような破産管財人からの調査要求を拒否したり妨害した場合、破産法上の義務に違反するため、免責が許可されなくなる危険性があります。

 

誠実さが重要

 以上のとおり、自己破産においては破産者の誠実さが非常に重視されていることがお分かりいただけたかと思います。

 今回お話したような事情は法律を詳しく知らなくても問題があることは明らかですが、もしも判断に迷うことがあった場合には一人で悩むことなく、弁護士への相談や依頼をご検討いただければと思います。

 

 弁護士 平本丈之亮

 

特別定額給付金・子育て世帯臨時特別給付金と差押・自己破産

 

 新型コロナウイルス感染症が市民生活に大きな影響を与えていることに鑑み、各地で特別定額給付金と子育て世帯臨時特別給付金の支給手続が始まっています。

 今回は、このような特別定額給付金・臨時特別給付金が差押えや自己破産との関係でどのように取り扱われる可能性があるのかについてお話ししたいと思います。

 

特別定額給付金・臨時特別給付金は差押禁止財産=自由財産

 本年4月30日、「令和二年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律」が公布、施行されました。

 この法律によれば、以下の2つは差押が禁止されますが、差押えが禁止されるということは破産手続上も処分を必要としない「自由財産」として扱われるということですので、この2つは自己破産をしても処分されることはありません(個人再生手続における最低弁済額の算出のための清算価値にも含まれないと思われます)。

 

 ①国民一人当たり一律10万円の特別定額給付金 

 

 ②児童手当を受給する世帯に対し,児童一人当たり1万円を上乗せする子育て世帯臨時特別給付金 

 

受給権だけではなく、実際に交付された金銭も差押えが禁止される

 この法律では、支給を受ける前の段階の権利(受給権)だけではなく、支給された後の金銭についても差押えが禁止されています。

 そのため、既にお金を受け取っている人であっても差押えや破産によってこれらの給付金を処分されることはありません。

 

預金としての保管には注意が必要

 以上のように、特別定額給付金と子育て世帯臨時特別給付金は差押えが禁止されますが、既に支給を受けて口座に振り込まれると預金債権に転化します。

 差押禁止債権が預金債権に転化した場合、差押禁止債権としての性質を受け継がないのが原則であるというのが裁判所の考え方であり、給付金を預金として保管している場合には口座の差押えという形で不利益を受ける危険性がありますので、リスクを減らすには現金で保有しておくのが無難と思われます。

 

万が一給付金が入った口座が差し押さえられてしまったら?

 とはいえ、10万円から数十万円ものお金を現金で持っているのは難しい場合もあり、預金として保管せざるを得ない方も多いと思います。

 もし、給付金の入っている口座の差押えが行われてしまった場合には、「差押禁止債権の範囲変更の申立」を行い、預金の原資が給付金であることを立証することによって事後的に差押えを免れることができる可能性があります。

 もっとも、一旦給付金が口座に入金され、その後、給料など他の収入と混じり合ってしまった場合には、どこまでが給付金なのか分からなくなってしまうことがあり、このことが理由で変更の申立が認められなくなる可能性もありますので、口座に保管せざるを得ないという場合には、せめて、他に収入が入らない口座に入れておくことが望ましいと思います。

 

差押債権者が税務署や自治体の場合

 これに対して、差押えを行ったのが一般債権者ではなく税務署や自治体などの場合、差押禁止債権の範囲変更の手続きは利用できません。

 万が一このようなことがあった場合には、過去に本HPでご紹介した裁判例に基づき滞納処分は違法であるとして争う余地も残されているとは思いますが、そもそも一旦滞納処分がなされた後で交渉などするにしても時間がかかり、本当に必要なときに使えないというデメリットが大きすぎますので、やはり現金での保有が無難であると思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

2度目の自己破産で免責を受けることはできるのか~自己破産⑩~

 

 ご相談を受けていると、過去に自己破産をしているが、2度目の自己破産を考えているというケースに出会うことがあります。

 では、一度破産している方が、改めて自己破産して免責を受けることはできるのでしょうか?

 

免責決定の確定から7年以内だと原則として免責は受けられない

 法律上、免責決定が確定してから7年以内であることが免責不許可事由とされているため(破産法第252条1項10号イ)、その期間内だと原則として2度目の免責は認められません。

 もっとも、再び破産しなければならなくなった理由がやむを得ないものである場合、たとえば病気や会社の倒産で失職したため生活のために借りざるを得なかったような場合には、例外的に2度目の免責が認められることもあり得ます。

 ただし、原則として認められないところを例外的に認めてもらおうということですから、本当にやむを得ない事情があるかどうかを慎重に判断するため、裁判所から破産管財人をつけてくださいと言われる可能性は高く、自己破産するための費用が余分にかかることは覚悟が必要です。

 

7年以上経過している場合には免責不許可事由にあたらないが、厳しく見られる傾向がある

 以上に対して、一度目の破産から7年が経過している場合には、法的には免責不許可事由にはあたりません。

 もっとも、過去に破産をしているにもかかわらず再び破産する場合には、家計管理などに何らかの問題があるのではないかとみられ、法的には免責不許可事由に該当しないものの、調査のため破産管財人の選任を求められる場合が多くあります。

 他方で、2度目の破産に至った事情がやむを得ないものであり、一度目の破産から相当の期間が経過しているようなケースでは、破産管財人をつけないで免責を受けることができたということもありましたので、この点はケースバイケースです。

 

 このように、一口に2度目の破産と言っても様々な事情があるため、必ず免責が受けられる、受けられないと述べることはできませんが、上記のとおり事情によっては認められる余地はありますし、仮に免責が認められない場合でも任意整理や個人再生など他の債務整理の方法によって解決できる場合もありますので、迷われた場合には専門家にご相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

生活保護と自己破産について~自己破産⑨~

 

 失業、病気等により収入が減少し、借金の支払いはおろか、当面の生活すら困難となる場合がありますが、このような状態に陥った場合、生活の維持と借金の整理という2つの大きな問題に挟まれ、どうやって解決したらいいか途方に暮れてしまう方もいらっしゃいます。

 今回は、そのような状況に陥った場合に取り得る選択肢の一つとして、生活保護と自己破産の関係についてお話してみたいと思います。

 

生活保護を受けてから自己破産をすることはできる

 そもそも、生活保護を受けている方が自己破産できるのか、と疑問に思われる方もいらっしゃいますが、自己破産をすることは問題なく、むしろ、生活保護を受給する方に支払えないほどの借金がある場合には、保護費を支払いに充てることは望ましくないため、自己破産が適当です。

 

自己破産をした人も生活保護を受けられる

 逆に、自己破産した人は生活保護すら受けられないのではないかと言われる方もいますが、これも誤解であり、自己破産をしたから生活保護を受けられないということはありません。

 

順番は生活保護→自己破産の方が良い

 では、生活保護と自己破産が両立するとして、どちらを先にすれば良いのかというと、この点は生活保護を先に受給した方が良いと思います。

 というのも、生活保護を受給している場合、法テラスを利用して弁護士に自己破産の手続を依頼する際、法テラスが立て替える弁護士費用と申立費用実費の返還が事件終了まで猶予され、さらに、法テラスに免除申請をすることでこれらの支払いをしなくてもよくなる場合があるためです(ただし、必ず免除になるわけではなく、最終的には法テラスの判断になります)。

 それ以外にも、何らかの事情(免責不許可事由がある、売却できない不動産の共有持分があるなど)によって破産管財人の選任が必要になった場合、20万円を上限に法テラスが破産管財人の費用も立て替えてくれ、これも猶予や免除の対象になりうるというのも大きなメリットです。

 

 このように、生活保護を受給している状態で自己破産の手続を行うことにはメリットがありますので、債務整理とは別に生活再建にも同時に取り組まなければならない状態となった場合には、今回ご紹介した方法を前向きに検討していただきたいと思います。

 

借金問題で生活保護や自己破産を考えた場合、どこに相談したらよいか?

 では、生活が成り立たないため生活保護を考えたい、また、自己破産も検討しているという場合、どこに相談したらよいでしょうか?

 この点については、住居確保給付金や生活保護等の各種制度への繋ぎ、再就職に向けた就労支援など、生活上の困りごとについて幅広く相談できる窓口として、各地に自立相談支援機関というものがあります。

 盛岡市であれば、盛岡市くらしの相談支援室がこの自立相談支援機関となっていますが、具体的にご自分の地域でどこが相談窓口になっているかは各自治体のホームページに記載されていますので、相談を検討するときには確認していただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

免責不許可になる割合は?~自己破産⑧~

 

 債務整理を考え、自己破産を決断したときに次に気になるのは、自分の借金が本当に免除されるかどうかだと思います。

 以前のコラム(「自己破産できない場合とは?~自己破産⑤・免責不許可事由2~)でもお話ししたように、自己破産しても借金が免除されない場合はありますが、では、実際上、免責が不許可になるのはどれくらいの割合なのでしょうか?

 

 この点について、日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会では、3年に一度、破産事件についての調査を行っています。

 直近の調査(2017年)は2016年6月1日から11月30日までの間における各地の破産記録から無作為に抽出した1238件についてのものであり、1年間のすべての破産記録を調査したわけではありませんが、これによると、免責不許可となったのは7件(0.57%)だったそうです(取り下げや死亡による終了などの割合も除くと,許可率は96.77%)。

 

 なお、過去の調査結果は以下の通りであり、これをみると、調査対象が全ての事件ではないことを考慮しても、多くの事件で免責が許可されていると言って良い状況と思われます。

 

 2014年調査 0%

 2011年調査 0.08%

 2008年調査 0.17%

 2005年調査 0.26%

 

 このように、免責については広く許可が出ている状況ですが、他方で、裁判所から免責について否定的な見解を示されて申立の取り下げを促された結果、個人再生に方針を変更したとか、安全策をとって最初から個人再生の方向で進めたなど、免責不許可という事態が表面化しなかっただけというケースもそれなりにあるのではないかと思っています

 免責不許可となる可能性がどの程度あるのかはその人自身の抱えている問題によって大きく変わり、この調査結果だけでは結論を出せませんので、ご自分で破産を申し立てることを検討している方でも、気になる方は一度弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

自己破産しても手元に残せるものとは?~自己破産⑦・自由財産~

 

 「自己破産をすると、全ての財産を処分しなければならない」。

 自己破産というと、このように考える方が大半だと思います。

 しかし、実際にはこのようなイメージは不正確なものであり、自己破産をしても手元に残すことができるもの(=「自由財産」といいます)はそれなりにあります。

 今回は、自己破産をしても手元に残せるものは何か、というテーマについてお話していきます。

 

現金

 破産手続では、99万円までの現金は自由財産として扱われますので、99万円までは手元に残すことができます(破産法第34条第3項1号、民事執行法第131条3号)。

 ただし、預金を破産申立直前に下ろして現金にした場合や破産申立直前に保険を解約して現金にしたような場合、現金としてはカウントされず元の預金や保険として扱われますので、直前に預金を下ろしたり保険を解約して99万円にしても意味はありません。

 

預金

 合計で20万円までであれば自由財産として扱われます。

 

家財道具

 自己破産をすると、家具や布団、テレビや冷蔵庫など、家財道具を一切合切処分しなければならないのではないかと思われる方がいらっしゃいますが、実は家財道具の多くは差押禁止財産(=自由財産)とされていますので、個人の破産手続の中で処分されることはほぼありません(少なくとも、当職は個人の破産事件で家財道具を処分されたという経験はありません)。

 ただし、高価な貴金属、最新型で高額な家電製品など、客観的に見て財産価値のあるものについては、その評価額次第で処分されてしまうことはあり得ます。

 

不動産

 不動産に関しては、基本的に処分されてしまうことを覚悟しなければなりません。

 ただし、ほとんど価値のない農地、山林や雑種地など売却できる可能性がないものは、破産管財人の判断で処分されない場合もあります(これを財団からの放棄といい、放棄された不動産は結果として処分されないまま残ります)。

 また、そのようなケースではない場合でも、破産者の親族が資金を用意して、不動産の評価相当額や住宅ローンの残額を支払うことで不動産の処分を避けられる例もあります。 

 このように、不動産については例外的に残せる場合もいくつかあるのですが、通常、不動産は高額であり資金を用意するのも簡単ではないため、宅地や建物などについては自己破産すると手放さなくてはならないのが一般的といえます。

 そのため、住宅ローンを組んでいる方である程度安定した収入のある方については、まずは自己破産ではなく「個人再生」(→「自宅を残して負債を整理する方法はあるか?~個人再生~」)を検討することになります。

 

(軽)自動車

 自動車関係については、ローンが残っているかどうか、初年度登録から何年経過しているか、普通自動車か軽自動車か、国産か外国車かなどによって自由財産となるかどうかの結論が変わってきます。

 この点は、別のコラム(→「自己破産すると、自動車はなくなるか?~自己破産①~」で詳しく説明していますので、興味のある方はそちらをご覧下さい。

 

退職金・保険関係

 退職金や保険については、概ね20万円を超える価値があるかどうか、あるいは退職金の性質によって結論が変わります。この点は資産価値をどのように評価するのかが絡むところですが、以下のコラムで詳しく説明していますので、そちらをご覧下さい。

 

「自己破産すると、保険は解約しなければならないのか?~自己破産②~」

「自己破産すると、退職金はどうなるか?~自己破産③~」

 

自由財産にあたらない財産を残すには?~自由財産の拡張

 このように、自己破産の手続では手元に残せるものと残すことが難しいものがありますが、では、そのままでは手元に残すことができないような資産(20万円を超えるような資産がある場合)はすべて処分されてしまうのでしょうか?

 実は、このような場合には「自由財産の拡張」という制度を利用し一定の限度で資産を手元に残すことが可能となる場合があります。

 

 自由財産の拡張は、原則として、現金を含めて総額99万円の範囲内であれば比較的広く認められています。

 この制度を利用した場合、たとえば、現金が20万円、預金が30万円、保険の解約返戻金が50万円、というケースでは、資産の合計が100万円になりますので、99万円を超えた1万円を破産管財人に納め、残りの99万円分は手元に残すことが可能になります。

 また、いくつかの財産のうちどの財産を残すか選択することも基本的には可能ですので、たとえば現金が19万円、預金が30万円、保険1の解約返戻金が50万円、保険2の解約返戻金が50万円というようなケースでは、保険1と保険2のどちらかを選んで残すということも可能です。

 

 なお、自由財産の拡張の対象にならない財産(これを拡張不相当の財産といいいます)もあり、典型的なところでいうと、①不動産、②破産手続開始後に破産管財人の調査によって発見された隠匿財産などがこれにあたります。

 

例外的に99万円を超える拡張が認められる場合もある

 さきほど述べたように、自由財産の拡張が認められるのは原則として99万円の範囲内です。

 しかし、例外的に99万円を超えて拡張が認められるケースもあります。

 たとえば、破産者が脳梗塞などの病気で働くことができず、今後、継続的に高額の医療費がかかり、他の財産ではそのような医療費をまかなうことができないようなケースが典型例です。

 当職自身も、申立代理人、破産管財人の双方の立場で99万円を超える拡張が問題になったケースを何度も担当したことがありますが、ご本人が病気のケースだと、金額次第ではあるものの裁判所も比較的拡張を認める傾向にあると思われます。

 当職の経験上、これまでに99万円を超える拡張が認められたケースとしては、入院給付金や生命保険の解約返戻金などがあります。

 また、財産の原資が給与や年金などその全部ないし一部が本来は差押禁止財産であった場合には、たまたま破産申立の直前で振り込まれて預金になってしまい99万円を超えたようなケースでも、本来は差押禁止財産だったことを考慮して超過分の拡張が認められることがあります。

 

 以上ご説明したとおり、自己破産をしても一定の範囲で財産を残せる場合があり、【自己破産=すべての資産の没収】ではないことがお分かりいただいたと思います。

 当職のもとに債務整理のご相談にいらっしゃった方の中には、保険などの資産を全て処分して支払いに回し、まったく財産がなくなった段階で初めてご相談に訪れる方もおり、タイミング次第は財産を残せたかもしれないという残念なケースもあります。

 このように、自己破産するタイミングによっては残すことができる資産が大きく変わることがありますが、では適切なタイミングはいつなのかという点をご本人が判断するのは難しいところですので、自己破産を含め債務整理を検討されている場合には、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士 平本丈之亮

 

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破産管財人の役割とは?~自己破産⑥・破産管財人~

 

 これまでの自己破産のコラムの中で、何度か「破産管財人」(はさんかんざいにん)というキーワードが出てきました。

 破産管財人は破産の手続の中で重要な役割を果たしていますが、これから自己破産を申し立てようと考えている人や破産手続中の人にとっては、破産管財人というものが一体どういう人で、どのようなことをするのか分からないという方もいらっしゃるかと思います。

 当職もこれまで数多くの破産管財人を務めてきましたが、今回はその経験を踏まえ、主に個人破産を前提に、破産管財人がどういうことをするのかについてQ&A方式でお話ししたいと思います。

 

Q1 破産管財人には、誰が選ばれるのか?

 弁護士が選任されます。

 

Q2 どういう場合に選ばれるのか?

 ざっくり言うと、①財産がある場合、②借り入れの理由に問題がある場合です。

 どの程度の財産や問題があれば破産管財人が選ばれるかはケースバイケースとしか言えませんが、財産について言えば、20万円を超える評価の財産があるかどうかが一応の目安にはなります。

 

Q3 破産管財人がつく場合とつかない場合で、費用は違うのか?

 破産管財人がつかない事案(同時廃止)では、郵便代を含め申立の費用は概ね2万円弱程度ですみますが、破産管財人がつく事案では規模に応じて追加の予納金が必要になります。

 当職の経験では、非事業者の個人であれば10~30万円、個人の事業者では20~50万円程度ですが、資産や負債の規模が大きくなれば、それに従って予納金も高額になります。

 追加で納める予納金は、破産手続を進めていく上で必要な各種費用や管財人の報酬にあてられます。

 

Q4 破産管財人は具体的にはどういうことをするのか?

 大きく分けて、①資産の調査・管理・回収・債権者への配当と、個人の破産事件の場合であれば、①に加えて、②自由財産拡張の申立・上申に対する意見を述べること、③免責不許可事由の有無を調査して裁判所に報告することです。

 

Q5 破産管財人が選ばれると、普段の生活にはどういう影響があるか?

 大きいところでいえば、破産者宛の郵便物が破産管財人宛に転送されます。

 これは破産者の資産調査の一環として行われるものですが、転送された郵便物から隠しごとがばれることもあります。

 また、破産に至った理由や経緯について説明するため、破産管財人の事務所に出向いていただく必要があります。

 

Q6 破産管財人はどのような調査ができるのか?

 先ほど述べた転送郵便物の調査のほか、破産管財人は、金融機関に対して口座の有無を確認したり保険会社に保険の有無を確認するなど、必要に応じて関係各所に対する調査が可能です。

 このように、たとえ口座や保険などを隠していても管財人がその気になって調査すればすぐにばれてしまいますし、ばれた場合には資産隠しと評価され免責が不許可になるリスクがありますので注意が必要です。

 

Q7 破産管財人に対する調査を拒否したらどうなるか?

 破産者には破産管財人に対する協力義務・説明義務がありますので、これを拒否したり虚偽の説明をすると犯罪になります(破産法268条1項、同40条第1項1号)。

 また、当然ながら、誠実な債務者ではないとして、破産管財人は裁判所に免責は許可すべきでないという意見を出すことになります。

 

Q8 自由財産の拡張について、破産管財人は何をするのか?

 破産手続では、一定の範囲の財産(概ね99万円以下の範囲)を手元に残せる場合があるのですが(「自己破産すると、保険は解約しなければならないのか?~自己破産②~」)、これを自由財産の拡張といいます。

 自由財産の拡張については、破産者から財産の一部を残して欲しいという申立・上申があった場合に、破産管財人がその適否を調査して裁判所に意見を述べ、裁判所が判断するという流れになっています。

 このように最終的な判断は裁判所が行うのですが、実際には破産管財人の意見が重視される傾向がありますので、どうしても一部の財産を残したいというときは、その財産の必要性を破産管財人に理解してもらえるかどうかが鍵となります。

 

 

 いかがだったでしょうか?

 このように、破産の手続では破産管財人の役割がとても大きいということをご理解いただけるかと思います。

 これから自己破産を考えている方にとっては、破産管財人がつく可能性があるかどうかで進め方や費用が大きく変わりますので、財産や借り入れの理由などで問題がありそうだという場合には、積極的に弁護士に相談することをお勧めします。

 

弁護士 平本 丈之亮