不貞行為を隠されて離婚してしまった場合、その後に改めて慰謝料の請求ができるか?

 

 配偶者が不貞行為に及んだときは離婚の際に慰謝料の支払いを伴うことが多く見られますが、離婚協議の際、一方配偶者が不貞の事実を隠したまま慰謝料の支払いを免れようとするケースがあります。

 

 では、離婚の時点では不貞行為があったことを隠されたため分からなかったが、その後に不貞行為が判明した場合、元配偶者に対して改めて慰謝料の請求ができるのでしょうか?

 

・離婚協議書を作成せず離婚した場合

 

 この場合は、通常、慰謝料を含む離婚給付について何も取り決めをしていないことが多いでしょうから、離婚後に不貞行為が発覚した場合には改めて慰謝料の請求が可能なケースが多いと思われます。

 

 

・離婚協議書を作成した場合

 

 離婚協議書を作成して離婚する場合には、作成した離婚協議書の中で「清算条項」(今後、理由の如何を問わず互いに何らの請求をしないといった文言)を記載しているケースが多く存在することから、このような清算条項があった場合、それでも改めて慰謝料の請求をすることが可能かが問題となります。

 

 この点については、このような清算条項は錯誤によって無効(民法改正前の事案であるため「無効」ですが、改正後のケースでは錯誤の効果は「取消」になります。)であるとして、以下のとおり慰謝料の請求を認めた裁判例も存在します(東京地裁平成28年6月21日判決)。

 

 ただし、離婚協議書を作る場合にもいろいろなパターンがありますから、たとえば弁護士に依頼して協議をまとめたような場合だと、相手の不貞行為の可能性も検討した上で清算条項を加えたのだから錯誤までは認められないと判断される可能性もあると思われます。

 

 

東京地裁平成28年6月21日判決

「幼子がいる夫婦の有責配偶者からの離婚請求は一般的には認められないこと、そのような離婚には慰謝料の支払を伴うことに照らすと、被告Aが被告Bとの継続した不貞関係や婚外子の妊娠の事実を隠して、清算条項を含む本件協議離婚書を原告Cに示し署名させたことは、被告Aが、慰謝料の支払いを免れて被告Bとの再婚を果たすためであったものと認められ、その清算条項は、原告Cの要素の錯誤により無効であるから、原告Cは、被告らに対し、不貞行為による慰謝料の請求ができるものとするのが相当である。

 

 

・協議書の作成は慎重に

 

 いったん清算条項を記載した協議書を作成してしまうと、たとえ後で錯誤により取消ができる可能性があるといっても、相手方が任意に支払いに応じることは期待できないことが多いと思います。

 

 今回ご紹介した判決のように運良く判明すれば後で慰謝料を請求できることもあるかとは思いますが、そもそも離婚後は相手の情報が手に入らなくなるため不貞行為の事実をつかむこと自体が難しくなりますので、怪しいと思ったときは焦って離婚に応じることなく、ある程度じっくりと時間をかけて協議することも大事です。

 

弁護士 平本丈之亮

 

2022年7月28日 | カテゴリー : 慰謝料, 離婚 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

非弁護士が関与して作成された不貞慰謝料の和解契約が公序良俗に反して無効とされたケース

 

 以前のコラムにおいて、不貞行為による慰謝料の合意をしても、そのような合意が無効となったり取り消されたりする場合もある、ということをお話ししました。

 

 不貞行為に基づく慰謝料の請求については、たとえ被害を受けた側であっても社会的に相当な方法によることが必要ですが、今回は、弁護士ではないにもかかわらず職業的に不貞関係に関する和解交渉について依頼を受け、交渉を行っていた者が関与していたケースにおいて、諸般の事情から和解契約が公序良俗に反して無効と判断されたケースを紹介します。

 

東京地裁令和3年9月16日判決

【関係者】

A:不貞行為を行った者(既婚者)

B:Aの配偶者(原告)

C:Bから有償で依頼を受けて和解交渉に関与した者(非弁護士)

D:Aと交際した者(被告)

 

【裁判所が認定した主な事実関係や評価など】

①Cは、職業的に不貞関係に係る和解交渉について有償で依頼を受け、本人と一緒に又は本人に代理して具体的交渉を行っていた者であり、本件についても、単なる立会人としてではなく具体的な交渉を含めて関与していた。

 

②Cは全く面識のないBの勤務先を訪問し、路上で突然声をかけるなどして交渉の場に同行させた。

 

③Cは、約8時間にわたってBと一緒にDと交渉を行った。

 

③②、③のような行動は交渉の場となった飲食店がある程度開放的な場所であったことを前提としても、一般人であるDにとって十分恐怖感を覚えるようなものであったといえる。

 

④和解合意書はBとCが準備したものであり、合意された慰謝料は500万円と一般的な不貞慰謝料に比して相当高額である。

 

⑤和解合意書にはDの父親の氏名や連絡先も記載させた。

 

⑥和解契約締結後、BとCは、ホテルの音声を出されるのは耐えられないと思うなどといったメッセージをDに送信しており、これは、Aとの関係やこれに関してDが望まない事実が公になる旨をあえて伝え、合意内容の履行を促すことを目的としたものといえる。

 

→「本件和解契約は、単にCが弁護士法に違反して関与したにとどまらず、Cにおいて具体的な交渉を含めて積極的に関与したものである上、その交渉態様は事後的な対応も含めて相当性を欠くものといわざるを得ないから、このような経緯で締結された本件和解契約は、公序良俗に反するものとして無効というべきである。」

 

 弁護士ではないものが報酬を得る目的で業として法律事務を取り扱うことは弁護士法72条で禁止されていますが(非弁行為)、不貞行為を理由とした慰謝料請求に関する交渉は法律事務にあたりますので、職業的に有償で依頼を受けて交渉に関与した場合は弁護士法に違反することになります。

 

 この裁判例では、和解交渉に関与した者が弁護士法に違反していることのみを理由として和解契約の効力を否定したわけではありませんが、関与者が弁護士法に違反していたことに加え、その関与の度合いが積極的なものであったことや、そもそもの交渉態様が相当性を欠くことを指摘して和解契約は無効と判断しています。

 

 和解の効力を否定した結論自体は正当であると思いますが、非弁護士がこのような示談交渉に関与した場合、裁判例が指摘したように社会的にみて相当性を欠く手段による請求行為がなされることがありますし、その結果、本来、取得し得ないはずの不当な利益を獲得させることにもつながりかねませんので、弁護士法72条に違反する者が和解交渉に関与した場合には、その者の関与の積極性や交渉態様如何にかかわらず、端的に公序良俗に反して無効と判断されるべきではないかと考えます。

 

 なお、この裁判例では、和解契約の効力が否定されただけではなく、結局DにはAが既婚者であったことについて故意も過失もなかったとして慰謝料請求自体も棄却されていますが、本件とは異なり、交際相手に故意過失があることが明らかで慰謝料を請求できる正当な権利が認められるケースでも、そのような違法な交渉を行った場合には権利実現にとってマイナスに働くことも想定されます。

 

 たとえば、違法な交渉を行ったばかりに、その後の裁判での慰謝料請求が権利濫用として否定されてしまうリスクや、そこまでいかずとも、社会的に不相当な方法によって請求したという事実が裁判において慰謝料額を低減させる事情として斟酌される可能性もありますので、慰謝料請求を検討している方は、知らない間に違法行為に巻き込まれたり、それによる不利益を受けないように細心の注意が必要と思われます。

 

 また、慰謝料を請求された側としても、素性の知れない第三者が関与している場合にはその場で合意するのではなく、いったん持ち帰って検討することが必要となりますが、万が一合意してしまったとしても、今回紹介した裁判例のように事情次第では和解が無効と判断される場合もありますので、そのようなときは弁護士へご相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

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「不貞行為の慰謝料の示談が無効になったり取り消されることはあるのか?」

 

2022年3月26日 | カテゴリー : 慰謝料, 男女問題 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

不貞行為に基づく慰謝料と自己破産

 

 不貞行為に基づく慰謝料請求をしたところ、稀に不貞相手が自己破産をしてしまうことがあります。

 

 不貞行為をされた側としては、自己破産によって責任を免れることには納得がいかないのが通常と思いますが、このような慰謝料は自己破産によって免責の対象となるのでしょうか?

 

慰謝料は自己破産による免責の対象となるのか?

 

 自己破産による免責の対象は、裁判所における破産手続開始決定前の原因に基づいて発生した債権(破産債権)ですが、自己破産の申立前に行われた不貞行為に基づく慰謝料請求権は破産債権にあたるため、基本的には自己破産の免責の対象となります。

 

免責されない「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」の意味

 

 もっとも、破産法では、自己破産によっても責任が免除されない「非免責債権」が規定されていますので、不貞行為に基づく慰謝料の請求権が非免責債権に該当すれば、たとえ自己破産をしても責任は免れないことになります。

 

 破産法上の非免責債権のうち、慰謝料が該当するかどうかが問題となるのは、破産法253条1項2号に定める「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」ですが、ここでいう「悪意」とは、法律の世界での一般的な「悪意」、つまりは何かを知っていること(=故意)ではなく、他人を害する積極的な意欲、すなわち「害意」をいうものと解されています。

 

 このような解釈を前提にすると、不貞行為者に「悪意」があったといえるためには、単に不貞行為の相手が既婚者であることを知っているだけでは足りず、家庭の平和を侵害するべく婚姻関係に不当に干渉するような意図が必要であることになります(下記裁判例参照)。

 

東京地裁令和2年11月26日判決

「破産法253条1項2号は、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」を非免責債権とする旨を規定しているところ、同号にいう「悪意」は、単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲、すなわち「害意」をいうものと解するのが相当である。ここで、不貞行為が不法行為となるのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであることに鑑みると、夫婦の一方と共に不貞行為を行った者が、当該夫婦の他方が有する婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するとの認識を有するだけでは、故意が認められるにとどまる。このような者に害意を認めるためには、当該婚姻関係に対し社会生活上の実質的基礎を失わせるべく不当に干渉する意図があったことを要するものというべきである。」

 

慰謝料は免責の対象となる可能性がある

 

 このように、慰謝料請求権が非免責債権に該当するかどうかは不貞関係当時の不貞相手の主観によりますが、不貞行為に及んだ者がことさらに結婚関係を破壊する意図を持っていたことを立証することは容易ではないため、実際上、慰謝料請求権が非免責債権に該当すると判断されるケースはあまり多くはないように思われます(上記判決でも、そのような害意があったとまでは認められないとして、不貞行為者側からの破産免責の抗弁が認められています)。

 

慰謝料を請求する際の注意点

 

 以上ご説明したとおり、たとえ慰謝料請求権があるといっても、相手に自己破産されてしまえば免責されてしまうことがあります。

 

 慰謝料を請求する場合、許せないという気持ちから高額な請求をしたり強硬な態度を取りがちですが、相場からかけ離れた金額に固執したり、あるいは相手の支払能力に疑問があるのに高額な金額の一括払いしか応じないなどの対応に終始した場合、必要以上に相手を追い詰めて自己破産されてしまうリスクが生じます。

 

 したがって、慰謝料を請求する場合には、相手に対する情報(収入・社会的地位・財産状況など)をもとに自己破産されてしまう可能性がどの程度あるのかを見極めることが重要であるほか、慰謝料額は妥当な金額にとどめたり、相手の経済状況如何では分割払いも検討するなどの柔軟な対応を検討する必要があります。

 

弁護士 平本丈之亮

裁判で不倫関係をやめるよう請求することはできる?

 

 不貞に関するご相談を受けていると、慰謝料の請求をしたいという内容のほか、不倫相手に対して配偶者との不倫関係をやめるよう裁判で請求できないかというご質問を受けることがあります。

 

 では、そのような不倫関係の中止を裁判で求めることはできるのでしょうか?

 

・理論的には不可能ではないが、現実的にはなかなか困難

 

 このような差止請求については、実際にその可能性について言及した裁判例(大阪地裁平成11年3月11日判決)がありますが、不貞相手に対して配偶者との同棲や面会を差し止めるよう求めたこのケースにおいて、裁判所は、面会することはそれ自体違法とはいえないとして否定し、同棲についても下記の通り厳しい条件をつけた上で差止請求を否定しています。

 

大阪地裁平成11年3月11日判決

「差止めは、相手方の行動の事前かつ直接の示止という強力な効果をもたらすものであるから、これが認められるについては、事後の金銭賠償によっては原告の保護として十分でなく事前の直接抑制が必要といえるだけの特別な事情のあることが必要である。
 そこで、本件におけるそのような事情の有無についてみると、原告と○○は婚姻関係こそ継続しているものの、平成一〇年五月ころから○○は家を出て原告と別居しており、原告に居所を連絡してもいない。これに加えて、先に認定した経緯をも考慮すると、両者間の婚姻関係が平常のものに復するためには、相当の困難を伴う状態というほかない。そして、原告もまた○○との離婚をやむなしと考えてはいるものの、○○が被告と同棲したりすることはこれまでの経緯から見て許せないということから○○との離婚に応じていないのである。
 そうすると、今後被告と○○が同棲することによって、原告と○○との平和な婚姻生活が害されるといった直接的かつ具体的な損害か生じるということにはならない。同棲によって侵害されるのはもっぱら原告の精神的な平和というほかない。このような精神的損害については、同棲が不法行為の要件を備える場合には損害賠償によっててん補されるべきものであり、これを超えて差止請求まで認められるべき事情があるとまでは言えない。

 

 この判決の枠組みにしたがった場合、配偶者と不貞相手が同棲することによって、他方配偶者が精神的な平和以外に何らかの直接的かつ具体的な損害を受けるときは差止が認められ得るとは一応言えそうですが、具体的にどのようなケースが考えられるかというとなかなか難しく、実際に認めてもらうにはかなり高いハードルがあるように思われます(ちなみに、今回紹介した裁判例以外に、不貞行為の差し止めについて判断した裁判例は見つけられませんでした)。

 

 

・差止請求ができなくても、不倫関係の解消を求めることには意味がある

 

 もっとも、仮に差止請求が認められなくても、不貞相手に不倫関係を解消するよう求めたにもかかわらず相手がこれを無視して関係を継続したときは、そのような態度は慰謝料の増額事由として考慮してもらえる可能性がありますので、関係解消を求めることには意味があると思います。

 

 また、裁判で差止ができなくても、示談交渉や裁判所での和解協議の中で双方が納得して合意できれば、配偶者との接触禁止条項を設けることを通じて不貞関係をやめてもらえることもありますので、慰謝料の請求と併せてそのような条項を希望するときは専門家へ御相談いただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

2021年6月21日 | カテゴリー : 慰謝料, 男女問題 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

不貞の調査費用について、損害賠償請求はできるのか?

 

 不貞行為に基づく損害賠償請求をしたいというご相談を受けた場合、慰謝料以外に調査会社に対して支払った調査費用を請求できないか、というご要望を受けることがあります。

 そこで今回は、この点について判断した近時の裁判例をいくつかご紹介します。

 

肯定例

 【東京地裁平成30年1月10日判決】 

 調査自体の必要性は否定できないものの、ほかに有力な証拠も存在しており必要不可欠なものとまではいいがたいこと、調査報告書が立証のために必要であったとはいいがたいことなどから調査費用の一部のみを損害として認めた事例

 

 【東京地裁平成29年4月25日判決】 

 交際の相手方を特定できておらず配偶者が不貞行為を否定していた等の事情から、交際状況と相手方を把握して損害賠償請求権を行使するために必要なものであったとして、調査に要した費用の一部を不貞行為と相当因果関係のある損害であると認めた事例。

 

 【東京地裁平成28年10月27日判決】 

 調査会社による調査の必要性自体は否定できないが調査結果は立証方法の一つにすぎないこと、原告は複数回の調査を調査会社に依頼しており調査の全てにつきその必要性があったか否かは明らかでないこと、調査内容は被告の行動を調査して書面により報告するというものでありそこまで専門性の高い調査とはいえないことなどから調査費用の一部のみを損害と認めた事例

 

 【東京地裁平成28年2月16日判決】 

 原告が不貞行為を問いただした際、配偶者が不貞関係を認めず調査を行わざるを得なかったことを理由として原告主張の調査費用相当額を損害として認めた事例

 

否定例

 【東京地裁令和2年10月7日判決】 

 不貞行為の存否は専門家の専門的調査、判断を要するようなものではないこと、相手方が性的関係を持ったことを否定しなかったことなどの事情から、調査費用が不貞行為と相当因果関係のある損害であるとは認められないとした事例(ただし、多額の調査費用をかけて不貞行為の有無を調査したことは慰謝料額を算定するにあたっての一事情として考慮すべきとされた。)

 

 【東京地裁令和2年7月14日判決】 

 調査会社の調査結果の一部には不貞行為をうかがわせる事実がを含まれているが、不貞行為を推認させる事実を立証する証拠とはいえないとして,不法行為との相当因果関係を否定した事例

 

 【東京地裁令和元年12月18日判決】 

 調査が不貞関係把握のために有効だとしても、調査費用が一般に不貞行為から生ずる損害とまでは言い難いとし、このような出費をしたことが慰謝料算定の一事由として考慮することがあり得るとしても、調査費用それ自体は不法行為と相当因果関係がある損害と評価することはできないとした事例

 

 【東京地裁平成30年2月1日判決】 

 いかなる証拠収集方法を選択するかは専ら請求者の判断によるものであり、不貞行為との間に相当因果関係は認められないとした事例

 

 【東京地裁平成29年12月19日判決】 

 調査費用が不貞関係の把握のために有効であることは確かであるとしても、一般に不貞行為という不法行為から生ずる費用とまでは言い難く相当因果関係があるとは認め難いとした事例

 

 【札幌高裁平成28年11月17日判決】 

 配偶者が自ら不貞行為を認めていたなどの事情にかんがみると調査を利用しなければ不貞行為の相手方を知ることが不可能であったとまではいえないことや、調査の内容等も判然としないことから、調査費用を損害として認めなかった事例

 

 以上のように、調査費用が損害に含まれるかについては裁判例の中でも判断が分かれているようですが、否定例の中でも、そもそも損害に含まれるものではないという考え方のほか、その事件では立証に不可欠とまではいえないから否定する、という風に事案次第では認める余地があるとする考え方で分かれています。

 他方、肯定例においても、その調査が立証上、どの程度必要性があったのかという個別の事情に即して損害の範囲を判断しており、支出した調査費用がそのまま全額認められる例は多くないように思われました。

 すべての裁判例を網羅できているわけではありませんが、以上のような裁判例が存在することからすると、調査費用については裁判で認められないか、認められたとしても支出した費用の一部に制限される可能性がありますので、調査会社に調査を依頼することを検討するときは、どこまで依頼するか(=どこまで費用をかけるか)について、しっかりと考える必要があると思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

2021年1月28日 | カテゴリー : 慰謝料, 男女問題 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

不貞にまで至らない男女間の交際等が不法行為になると判断されたケース

 

 男女間トラブルで典型的なものはいわゆる不倫問題ですが、相談をお受けしていると、「不倫」というキーワードは出てくるものの、実際には性交渉にまでは至っておらず不適切な交際にとどまっていたり、あるいは疑わしいが性交渉があったことの立証までは困難というケースがあります。

 もっとも、性交渉にまで至っていない場合であっても、ケースによっては不法行為として損害賠償を命じられる場合もあるため、今回は、この点に関する裁判例をご紹介します。

 

東京地裁平成28年9月16日判決

 この事案では、原告が、自分の配偶者と親密な関係にあった者(A)に対して慰謝料の請求をしましたが、裁判所は性交渉をもった疑いは払拭できないものの、そのような事実が存在したとまで認めるに足りる証拠はないとしました。

 しかし、これに続き、性交渉までは認められないとしても、Aと原告の配偶者が以下のような関係にあったことは社会通念上許容される限度を逸脱していたとして慰謝料の支払いを命じました。

 

裁判所が指摘した事実関係

・Aと配偶者は、携帯電話で頻繁に連絡を取り合い、2人で食事に出かけたりカラオケ店に入店したりしていたほか、休日に自動車で外出したりしていた。

・Aと配偶者は、腕を組んだり、手をつないだりして歩くこともあった。

・Aと配偶者の交際関係は1年半近くにわたって継続していた。

・2人は抱き合ったりキスをしたりしていたほか、Aが服の上から配偶者の身体を触ったこともあった。

 

東京地裁平成29年9月26日判決

 このケースにおいて、原告は、性交渉の存在を理由に慰謝料の請求をしたのではなく、「配偶者を有する通常人を基準として、同人とその配偶者との婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流、接触」も不貞行為に含まれると主張し、配偶者(B)とLINEでやりとりをした複数の者に対して慰謝料を請求しました。

 これに対して裁判所は、このような原告の主張について以下のように述べ、一部の被告に対する慰謝料の請求を認めました。

 

「原告は、不法行為法上の違法を基礎付ける不貞行為は、性交渉及び同類似行為に限られず,配偶者を有する通常人を基準として,同人とその配偶者との婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流,接触も含まれる旨主張するが、不貞行為とは、通常、性交渉又はこれに類似する行為を指し,原告主張の異性との交流,接触が不貞行為に該当するということはできず,採用できない。原告の主張は、不貞行為に該当しないとしても、上記婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流、接触も不法行為に該当すると主張する趣旨を含むものと思料されるところ、判断基準として抽象的に過ぎ、そのまま採用することはできないが、不貞行為が不法行為に該当するのは婚姻関係の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するからであることからすると、原告主張の具体的事実について、その行為の態様、内容、経緯等に照らし、不貞行為に準ずるものとして、それ自体、社会的に許容される範囲を逸脱し、上記権利又は利益を侵害するか否かという観点から、不法行為の成否を判断するのが相当である。」

 

慰謝料請求が認められた被告について裁判所が指摘した事実関係

・被告がBとの間で、被告とBが、従前、性的関係を有していたことを前提として、LINEに性的行為の内容を露骨に記載して性交渉を求めるやりとりをしたこと
・従前、性的関係を有していたことを前提として、性的行為の内容を露骨に記載して性交渉を求めることは、不貞行為には該当しないもののこれに準ずるものとして社会的に許容される範囲を逸脱するものといえ、婚姻関係の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するものであるというべきであるから、原告に対する不法行為を構成すると認められる。

 

 なお、被告は,上記のようなやり取りは冗談であり,その内容をBに確認すれば分かるのであるから婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性があるとはいえず不法行為に該当しない旨も主張しましたが、裁判所は、このようなやり取りを目にした原告が被告との関係をBに問い質し,真意の確認を求めること自体,Bとの信頼関係に影響し夫婦関係を悪化させるものであることは容易に推察することができるから,Bに確認をすることにより冗談であるとの回答が得られたとしても不法行為の成否を左右するものとはいえないとして被告の主張を退けています。

 

 以上のように、たとえ性交渉がなかったとしても、その関係が社会通念上許容される範囲を逸脱する場合には、配偶者に対する慰謝料の支払義務が発生することがあります。

 どの程度の交際関係があれば社会通念上許容される程度を逸脱するのかについて明確な基準はなく、2番目に紹介した裁判例が指摘するように行為の態様や内容、経緯等を総合的に判断するほかはありませんが、少なくとも今回ご紹介したような行為については実際に慰謝料の支払いを命じられる可能性がありますので、性交渉がなければ慰謝料が発生しないわけではないという点については注意が必要です。

 

 弁護士 平本丈之亮

2020年7月10日 | カテゴリー : 慰謝料, 男女問題 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

不貞行為に基づく慰謝料請求でLINEデータの証拠能力と信用性が争われた事例

 

 不貞行為に基づいて慰謝料請求をする場合、もっとも頭を悩ませるのが証拠の確保ですが、最近ではメールやSNSでのメッセージのやりとりが証拠として提出される例が多くなっています。

 

 しかし、このようなものを証拠として使用する場合、相手から証拠の収集方法に不正があり証拠としては使えない(証拠能力)とクレームがつく場合があり、また、デジタルデータは改ざんが容易であり、このデータも改ざんされたものであって証拠として信用できない(信用性)、という反論がなされることもあります。

 

 そこで今回は、不貞行為の慰謝料請求について、LINEデータの証拠能力と信用性が問題となった最近の裁判例を一つご紹介したいと思います(なお、本件で問題となったのは、スマートフォンアプリのLINEのトーク履歴ではなく、ログイン機能のあるPC版のLINEでのやりとりに関するものです)。

 

東京地裁平成30年3月27日判決

 この裁判は配偶者の一方が不貞相手に対して慰謝料請求をした事案ですが、その中で提出されたLINEデータについて、①不正に取得されたものであるから証拠として使用できない(証拠能力)、②使用できるとしても中身が改ざんされたものであるため証拠として信用できない(信用性)、という形で争われました。

 

証拠能力に関する判断

 

 【証拠能力に関する判断基準】 

 この判決では、まず、民事訴訟において使用できる証拠の範囲(証拠能力)について、以下のように判示しています。

 

「民事訴訟に関しては,証拠能力の制限に関する一般的な規定は存在しない。この点,訴訟手続を通じた実体的真実の発見及びそれに基づく私権の実現が民事訴訟の重要な目的の一つであるとしても,同時に,民事訴訟の場面においても信義則が適用されることからすれば(民事訴訟法2条),訴訟手続において用いようとする証拠が,著しく反社会的な手段によって収集されたものであるなど,それを証拠として用いることが訴訟上の信義則に照らしておよそ許容できないような事情がある場合には,当該証拠の証拠能力が否定されると解すべきである。」

 

 【証拠能力に関する被告の主張と裁判所の判断】 

 

 1 住居侵入 

 まず、被告は、原告は持っていた鍵を使って別荘に無断で侵入してLINEデータを取得したとして、この証拠は住居侵入罪を犯して不正に入手したものであるため証拠能力がないと主張しましたが、裁判所は以下の事情からこの主張を退けました。

 

①原告がLINEデータを入手したのは別居を開始した約2か月後であるものの,その時点ではまだ別荘の鍵を所持しており,それを使用して入ったこと

 

②別荘は,婚姻後に配偶者が購入し,以後,配偶者とその家族が使用してきたものであること

 

③別荘は平成25年の贈与を原因として、平成26年に親名義に名義変更されているが,実際に名義変更がなされたのはLINEデータの入手後であること

 

④別荘は,平成25年の贈与日以降も配偶者及びその家族が使用し続けていたこと

 

→①~④からすると,原告に建造物侵入の故意があったかどうかも定かではなく,また,別荘への立入方法が著しく反社会的であると評価できるものではない。

 

 2 不正ログイン 

 次に、被告は、原告が無断でIDとパスワードを入力してログインし、LINEデータを不正に取得したと主張し、配偶者もその主張に沿う供述をしましたが、裁判所は以下の事情を示してこの主張も退けました。

 

 ・配偶者の供述内容 

①別荘に置いてあるパソコンは自分専用のものであり,パソコンにログインするためにはパスワードが必要であるが,それは誰にも教えていない

 

②LINEデータはアカウント内にのみ保存してパソコンのハードディスクには保存しておらず,このデータにアクセスするためには,アカウントのIDとパスワードを入力してログインする必要がある

 

③アカウントのIDはGmailアドレスと同一のためGmailアドレスを知っている者であればIDを知り得るが,パスワードは誰にも教えておらず,このパスワードはパソコンにログインするためのパスワードとは別のものである(ただし、いずれも,家族で共用している他のパスワードから推測することは可能)

 

④原告が立ち入った当時、建物内にあるパソコンとアカウントがいずれもログイン状態にあったことはない

 

 ・裁判所の判断 

①仮に、配偶者の言うとおりであったとすれば、原告はLINEデータを取得するためにPCとアカウントそれぞれに設定されていた二重のパスワードをいずれも探し当ててログインしたことになるが,いくら配偶者が他に似たようなパスワードを使っていて、原告がそれを知っていたとしても,そのような行為を成し遂げる可能性は相当に低い

 

②そもそもアカウントのパスワードを探知できるのであれば、自分のパソコンを使用するなどして配偶者のアカウントにログインできるのであって、別荘で行う必要性はない

 

③原告はLINEデータ入手の翌日、代理人弁護士に対し、昨夜別荘に行ったところ運良くログインしたままのPCがあったので中を見てみたこと、旅行中に証拠隠滅されたLINEのやり取りがフォルダに分けられ保存されていたこと、そのデータとともに、女性と別荘で過ごしたかも知れない写真があったためこれも一緒に送る、といった趣旨のメールを送信している

 

④約1週間前に配偶者と被告が別荘を訪れていることがうかがわれ,失念等の原因からアカウントにログインしたままの状態であった可能性は否定できないこと

 

→①~④からすれば,不正ログインによってLINEデータを入手したとは認められず,その入手方法が著しく反社会的であると認めるに足りる事情もない。

 

【証拠能力に関する判断のまとめ】

 このように、裁判所は、住居侵入、不正ログインの主張についていずれも認めず、結果として問題となったLINEデータの証拠能力を認めました。

 

 このうち住居侵入については、住居侵入の故意があったとまでは言い切れないのではないか(本人の認識)という点や、原告が以前に渡された鍵を使って入ったという事情(立入の態様)を考慮して、立ち入りは著しく反社会的な方法ではないと判断しています。 

 

 また、不正ログインについては、二重のパスワードを突破することができる可能性は低いことや、パスワードを知っていればわざわざ別荘に入る必要がないこと、データ入手後の弁護士へのメール内容といった事情を総合し、不正ログインがあったとは言えないという事実認定がなされています。

 

 以上のとおり、本件は具体的な事実関係をもとに証拠能力が認められましたが、仮に住居侵入や不正ログインがあったという認定だった場合、証拠能力が否定された可能性があった事案と思われます。

 

信用性に関する判断

 

 次に,証拠としての信用性について、裁判所は以下のように判断してLINEデータが被告と配偶者とのやりとりであることを認め、記載内容の正確性についても認めました。

 

 ・被告の主張 

①LINEデータがテキストデータであり、ねつ造ないし改ざんが可能である

 

②LINEデータの一部はやり取りの相手が「Unknown」となっており、その相手が被告かどうかも疑わしい

 

 ・裁判所の判断 

①被告は,平成26年のある時期から毎日のようにLINEのやり取りをするようになったと供述しているが,LINEデータはその期間に対応していて、やりとりもほぼ毎日であること(供述と証拠の整合性)

 

②被告自身,細かい部分はともかくLINEデータにあるようなやり取りをしたことはあった旨供述していること

 

③やり取りの相手が「Unknown」となっている部分においても、いたる所で被告の名前に相当する名称が記載されていること

 

④LINEデータには、原告が知り得ない被告の子の名前や愛称、被告の知り合いの名前が記載されていること

 

⑤LINEデータが約3か月半に及ぶ期間のほぼ毎日の膨大なやり取りのデータである(A4用紙で147頁分)ことからすれば、一から作成することはもとより、つじつまを合わせながら原告に都合が良いように改変することも極めて困難であること

 

⑥被告が具体的な改変箇所を一箇所も指摘していないこと

 

→①~④の事情からすれば、LINEデータは原告の配偶者と被告との間のやりとりと認められ、⑤⑥の事情からすればLINEデータの正確性は担保されていると認められる

 

証拠収集は慎重に行う必要がある

 本判決では、民事訴訟における証拠能力が制限される場合について一般的な基準を示していますが、その判断内容自体は特段目新しいものではなく、住居侵入や不正アクセス禁止法違反など刑事上罰せられるような行為によって取得した証拠については証拠能力が否定される可能性があります。

 

 不正アクセスの点について、本件ではLINEデータの取得時にパソコンとアカウントがログイン状態にあったかどうか(=IDとパスワードを入力してログインしたかどうか)が争点となりましたが、この判決は具体的な事実関係から不正ログインの主張を排斥したものにすぎませんので、事案が異なれば証拠能力が認められるとは限りません。

 

 少なくとも、今回ご紹介したように、実際の裁判で集めた証拠の証拠能力が問題とされるケースがあることは事実ですので、慰謝料請求などを考えて証拠を集める場合にはやり方を工夫する必要があります。

 

弁護士 平本丈之亮

 

2020年5月21日 | カテゴリー : 慰謝料, 男女問題 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

最近の裁判例に見る不貞による(離婚)慰謝料

 

 弁護士として離婚問題を扱っていると必ず出会う相談に、不貞による離婚と慰謝料に関するものがあります。

 

 もっとも、不貞によって離婚する場合に慰謝料の請求ができることは皆さんご存知ですが、ではその金額はいくらが妥当なのかと言われると、なかなか分からないという方が多いと思います。

 

 正直に申し上げると慰謝料の金額は弁護士でも判断が難しいところなのですが、今回は、慰謝料を請求する側、あるいは請求された側の解決のヒントとして、最近の裁判例ではどの程度の金額が認められているのかを紹介してみたいと思います。

 

 なお、今回ご紹介する判決は、夫婦の一方が他方に対して、不貞行為により婚姻関係が破綻したことを理由に慰謝料を請求した事案をピックアップしたものであり、近時重要な最高裁判決の出た不貞相手に対する慰謝料請求や、婚姻関係が破綻に至らなかったケースについては参考になりません。

 

 また、あくまで当職が利用可能な判例集で見つけた範囲のものにすぎず、慰謝料の算定にはそれぞれの判決で認定された個別の事情が大きく影響していると思われますので、ここで紹介した判決が認めた金額がすべてのケースで妥当するとは限らないこともあらかじめお断りしておきます。

 

東京地裁平成30年2月22日判決

【慰謝料】

 150万円

 

【婚姻期間】

 不貞行為が開始されたと思われる時点で約17年

 

【不貞行為の期間】

 約9か月間

 

【離婚】

 未成立(ただし、双方離婚の意向あり)

 

【その他判決で指摘された事情(一部)】

①不貞行為者は不貞相手との結婚まで考えていたこと

 

②夫婦間に実子がいなかったこと

 

③他方配偶者側の言動や不貞発覚後の対応にも問題があったかのような指摘(詳細は割愛)

東京地裁平成30年2月1日判決

【慰謝料】

 200万円

 

【婚姻期間】

 約39年(ただし、そのうち約18年弱が別居期間)

 

【不貞行為の期間】

 離婚成立まで約18年(うち不貞相手との同居期間約12年)

 

【離婚】

 成立

 

【その他判決で指摘された事情(一部)】

①離婚調停において、約530万円の財産分与が約束されたこと

 

②不貞行為者が、別居後、約15年強で5000万円を超える生活費を支払ったこと

東京地裁平成30年1月12日判決

【慰謝料】

 200万円

 

【婚姻期間】

 約5年

 

【不貞行為の期間】

 不明確

 

【離婚】

 成立  

 

【その他判決で指摘された事項(一部)】

①原告が再婚であったこと

 

②不貞行為者が複数の者と不貞行為に及んでいたこと(少なくとも3名以上)

東京地裁平成30年1月10日判決

【慰謝料】

 150万円

 

【婚姻期間】

 婚姻関係破綻時までで約6~7年 

 

【不貞行為の期間】 

 約1ヶ月

 

【離婚】

 不明(ただし、婚姻関係が破綻したことは認定)

 

【その他判決で指摘された事情(一部)】

①不貞行為者が短期間で別居を決意するに至っており、不貞行為が破綻の決定的要因になったこと

 

②不貞行為者である実親が、自分の実子に対して、他方配偶者は実の親ではないという事実(養子縁組したこと)を明かしたこと

 

③不貞行為者は、離婚を切り出してからわずかの間に、秘密裏に家財等の財産を持ち出し、これによって他方配偶者は子どもとの別居生活を余儀なくされたこと

 

④不貞行為に及ぶ前の段階で婚姻関係は破綻に近づいていたこと

東京地裁平成28年11月8日判決

【慰謝料】

 200万円

 

【婚姻期間】

 婚姻関係破綻まで約4年弱

 

【不貞行為の期間】

 少なくとも約1年3か月

 

【離婚】

 成立

 

【その他判決で指摘された事情(一部)】

①不貞行為者が不貞相手の裸の写真を所持し、これを他方配偶者が発見したこと

 

②夫婦間に子どもがないこと

 

 以上、慰謝料についていくつかの裁判例をご紹介しましたが、離婚が成立している、あるいはまだ離婚に至っていなくても婚姻関係が破綻しているケースでは、判決で150~200万円程度の金額が認容される可能性があることはお分かりになったかと思います。

 

 もっとも、冒頭でもご説明した通り、慰謝料は個別の事情によって変わるため最終的には事案次第としか言いようがありません。また、不貞がからむ離婚問題は非常にデリケートであるため裁判に至らず協議や調停で解決することも多く、早期あるいは穏便な解決のためやむを得ず金額にこだわらない形で処理せざるを得ないこともあるため、具体的にどのような金額が妥当かは悩ましい問題です。

 

 一口に慰謝料といっても、金額のみならず、具体的な請求の仕方や支払いの方法、履行の確保など検討しなければならないことが多くありますので、不安がある方は弁護士へのご相談をご検討ください。

 

弁護士 平本丈之亮