個人再生の認可決定後、支払いできなくなったらどうする?

 

 個人再生は、債権の一部を減免してもらい、残りの借金を3年から5年以内で支払っていくことを内容とする法的手続ですが、自己破産と違って一定期間支払いを継続していくことが予定されている手続であるため、何らかの事情で支払いができなくなるケースもあります。

 

 認可決定された再生計画に基づく支払いを怠った場合、裁判所が評価した債権額の10分の1以上の債権を有する債権者は再生計画の取消を申し立てることできますが(民事再生法189条1項2号、同3項)、そうなった場合、それまで支払った分は無駄にはならないものの(同法189条7項)、元々の債務が復活してしまうという大きな不利益を受けることになります。

 

 そのため、事情によって再生計画の履行が困難となったときは何らかの対策をとる必要がありますが、今回は、再生計画の遂行が難しくなったときにどのような方法があり得るかお話ししたいと思います。

 

・再生計画の変更

 

 再生計画を遂行することが困難となった場合、一定の条件をみたせば、当初の再生計画の最終期限から2年以内に限り支払期限を延長することができます。(民事再生法234条1項)。

 

 なお、解釈上、全体で2年以内の範囲に収まれば延長回数自体は2回以上でも認められるとされていますが、変更できるのは期間のみであり金額の減免は認められていません。

 

 再生計画の変更が認められるには、①やむを得ない事由により、②再生計画を遂行することが著しく困難となったことが必要であり、具体的には債務者のコントロールが及ばない事情によって当初の計画では弁済を継続することは困難だが、期間を延長すれば何とかやりくりできそうだという場合を意味しますが、適用条件が厳しいため実際の利用件数は多くないようです。 

 

・ハードシップ免責

 

 また、再生計画の遂行が極めて困難な場合には「ハードシップ免責」(民事再生法235条)という制度により残債務の免除が認められますが、以下のとおり条件は非常に厳しいものとなっています。

 

①債務者の責めに帰することができない事由により再生計画の遂行が極めて困難となったこと

 

②各債権の4分の3以上の弁済を終えていること

 

③免責することが再生債権者の一般の利益に反しないこと

 

④再生計画の変更が極めて困難であること

 

 再生計画の変更は再生計画の遂行が「著しく困難」となったことが必要であるのに対し、ハードシップ免責では再生計画を遂行することが「極めて困難」となったことが要求されており(①)、再生計画の変更よりも条件が厳しく制限されています。

 

 また、③の要件についても、当初の再生計画案における清算価値を下回らないことが必要であることを意味することから、たとえば、当時の清算価値が200万であったため再生計画案に基づく米債総額が200万円になったようなケースだとこの条件を満たすたすことはできません(他方、負債の5分の1が200万円で、清算価値が100万だったため弁済総額が200万になったようなケースであればこの要件をクリアできます)。

 

 このように、ハードシップ免責は非常に条件が厳しいことから、この制度によって免責が得られる例は少ないと思います。

 

・再度の個人再生

 

 以上のような方法以外にも、再生計画の認可決定確定後に支払いが困難となった場合、再度の個人再生の申立が可能です(民事再生法190条)。

 

 再度の個人再生手続が開始されると、当初の認可決定によって減免された債務は元に戻りますが、それまでの間に行った弁済は有効です(民事再生法190条1項但書)。

 

・自己破産

 

 以上のいずれも難しい場合、そのままでは支払いができないわけですから、最終的には自己破産をせざるを得ないものと思われます。

 

 再生計画履行中に破産手続開始決定があった場合、個人再生によって減免された債権は既に支払った分を除いてもとに戻りますが(民事再生法190条1項)、破産手続によって免責されれば支払いをする必要はなくなります。

 

 

 以上の通り、個人再生の認可決定後に支払いが困難となった場合には法的な対処法がいくつかありますが、再生計画の変更などは要件が厳しくなっているため、早めに弁護士に相談していただきたいと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

個人再生で3年を超える弁済計画が認められるのはどういう場合か?

 

 個人再生は、住宅ローンや税金などを除く一般の債権者への債務の一部を減免し、残る負債を原則3年間で支払う法的整理手続です。

 

 しかし、債務額や資産が多い、あるいは収入が低いなどといった事情から、原則である3年間では完済できないというケースもあります。

 

 この場合、民事再生法では、最長で5年まで返済期間を延長することができるとされているのですが、それではいったい、どのような条件をみたせば3年を超える期間の再生計画案が認められるのでしょうか?

 

・「特別の事情」が必要

 

 民事再生法上、3年を超える再生計画案が認められるには「特別の事情」が必要とされていますが(民事再生法229条2項2号括弧書、244条)、これをわかりやすくいえば、3年では返済しきれないものの、収入の安定性や家族からの援助の可能性など本人の生活状況に照らし、返済期間を延長すれば支払えるといえることが条件となります。

 

・実際にはある程度広く認められている

 

 このように、3年以上の再生計画案が認められる条件が「特別の事情」と規定されているため、字面をみるといかにも条件が厳しいように見えますが、実際の運用上はそこまで厳しく制限されているというわけでもなく、(もちろん事情次第ですが)比較的緩やかに認められているという印象です。

 

・延長した期間でも履行可能といえることが必要

 

 もっとも、返済期間を延長できるとはいっても、あくまでも延長した期間内で完済できるといえることが必要であるため、たとえば5年間の返済計画案を立案しても、4年目に入った時点で定年退職し、収入が大幅に減少してしまうようなケースだと認められない可能性があります(定年後に年金を受給し、それで払えるといえるのであればできるケースもあります)。

 

 3年を超える再生計画案が認められるかどうかは、本人の収入や勤続年数、職歴、定年がある場合には定年までの残り年数、本人や家族の健康状態、家族の就業状況・収入、再生計画案における返済総額とこれを返済期間で割った場合の毎月の負担見込額、現時点における家計収支の状況、家族構成に照らした将来の支出増加の可能性の有無・程度など様々な要素が絡むため、裁判所に対してはこのような事情を説明し、3年以上の再生計画案であっても履行可能であることを積極的に説明することが重要です。

 

 個人再生は、様々な書類の提出だけではなく再生計画案を作成して提出することが必要であり、清算価値保障原則を満たす内容でなければならないなど手続自体が自己破産に比べて複雑ですが、それ以外にも、3年を超える再生計画案を作成する場合には上記のとおりやや難易度が上がりますので、個人再生に慣れた弁護士への相談をお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

主婦(主夫)は、個人再生を利用できるのか?

 

 債務整理の相談を受ける中で、相談者が主婦(主夫)であり自分自身には収入はないものの配偶者には収入があるというケースがあり、このよう場合、個人再生が認められるかが問題となることがあります。

 

 典型的な事案は、住宅ローンの主たる債務者が主婦(主夫)であり、ローンを組んだ時点では収入があったが、その後に主婦(主夫)になったケースや、年式が新しいため自己破産をすると売却されてしまう自動車を持っており、これを残したいといったケースですが、このような場合に、配偶者からの援助が得られることを理由として主婦(主夫)が個人再生を利用できるのでしょうか?

 

・無収入の場合、個人再生は難しい

 

 個人再生の基本的な利用条件の一つに「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあ」ることがありますが(民事再生法221条1項)、申立の時点において主婦(主夫)であって収入がまったくないという場合、たとえ配偶者からの援助が見込まれたとしてもこの条件をみたさないとして申立が認められられない可能性があり、実際、当事務所でも裁判所からそのような指摘を受けたケースがあります。

 

・パート収入等があれば認められる可能性はある

 

 以上に対して、全くの無収入ではなくパート収入を得ているようなケースであれば、勤続年数や本人の収入額、配偶者からの援助額などの事情次第ではあるものの手続を認めてもらえる可能性があります。 

 

・早期就労が鍵

 

 このように、全くの無収入の場合だと主婦(主夫)が個人再生を利用するのは難しいところですが、たとえ相談の時点では無収入であっても、その後に弁護士が介入して請求を止めつつ、その間に早期に就労することができれば、状況次第では個人再生を利用できる場合があります。

 

 就労までにあまりに時間を要するようでは債権者から裁判を起こされる等のリスクもあり、無限に先延ばしできるわけではありませんが、やり方次第では利用できる可能性はありますので、主婦(主夫)の方で個人再生をお考えの方は一度弁護士へのご相談をご検討いただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

小規模個人再生と給与所得者等再生の違いとは?~個人再生⑧~

 

 自宅を残して債務の一部を減免してもらうことのできる債務整理の手続として、「個人再生」というものがありますが、実は、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの手続が存在します。

 

 今回は、この2つの手続の違いや、どちらの手続を先に検討するべきかなどについてお話しします。

 

債権者の書面決議の要否

 小規模個人再生では再生債権者の書面決議の制度があり、債権者の過半数あるいは債権額の過半数の反対があった場合には不認可になります。

 

 これに対して、給与所得者等再生では、このような書面決議が不要とされています。

 

最低弁済額の計算方法の違い(可処分所得要件の有無)

 小規模個人再生では、①債権額に応じた一定の金額(多くは100万から総債権額の20%程度までの間)か、②自由財産を除いた資産総額のいずれか高い方が最低弁済額になります(→「個人再生をすると、負債はどれくらい減るのか?~個人再生②・最低弁済額~」)。

 

 これに対して、給与所得者等再生の場合は、最低弁済額を計算する際、①②の条件に加えて、③2年分の可処分所得以上の金額であることが必要とされています(可処分所得要件)。

 

対象者の違い(定期・安定収入)

 給与所得者等再生は、給与やこれに類する定期的な収入があり、かつ、その変動が少ないことが要件となっています。

 

 そのため、個人事業者や、給与所得者でも過去2年以内に大きな変動(概ね2割程度の変動)があるようなケースだと、収入の定期性や安定性を欠くとして給与所得者等再生の利用ができないことがあります。

 

 なお、ここでも求められているのはあくまで収入が定期的・安定的であることであり、給与であることまでは必要ではありません。

 

 そのため、たとえば年金収入や家賃収入も定期的に入ってくるもので変動が少なければ要件をみたす可能性がありますし、個人事業者であっても、給与生活者と変わらないような収入状況であればケースによっては要件を満たす場合もあり得ます。

 

過去に破産している場合等における利用の可否

 給与所得者等再生の場合、いわゆるモラルハザード防止の観点より、過去7年以内に破産免責を受けている場合、過去7年以内に給与所得者等再生の認可決定を受けている場合、過去7年以内にハードシップ免責を受けている場合には、改めて給与所得者等再生を利用できないという制限があります。

 

 小規模個人再生については、そのような縛りはありません。

 

どちらを先に検討するべきか?

 給与所得者等再生は、再生計画の認可について債権者の議決を必要としないという独自のメリットがある一方で、安定的かつ変動の少ない収入を得ているという要件が必要であり、2年分の可処分所得以上の金額を支払う必要があるため小規模個人再生よりも最低弁済額が高くなりがちです。

 

 また、実務上、小規模個人再生で不同意の意見を提出する債権者は少なく、仮に不同意を出しそうな債権者がいたとしても、それが過半数を超えない場合には不認可になることはありません。

 

 そのため、債権者数あるいは債権額の過半数の不同意が見込まれるような場合を除き、債務者としてはまずは小規模個人再生を検討した方がよいと思います(当事務所でもほとんどが小規模個人再生です)。

 

 実際、裁判所の利用件数としても以下の通り圧倒的に小規模個人再生が利用されていますが、これは上記のような理由からと思われます。

 

令和元年の司法統計

小規模個人再生  12,764件

給与所得者等再生    830件

 

弁護士 平本丈之亮

個人再生をする場合、財産処分はしなければならないのか?~個人再生⑦~

 

 個人再生は、自己破産と同様に法律に基づいた債務整理の手続(=法的整理)です。

 

 このように「法的整理」という点だけを聞くと、個人再生も自己破産と同じように自分の財産処分をしなければならないのではないか、と不安に思われる方がいらっしゃいます。

 

 この点は個人再生のメリットというコラムでも少しお話ししているところですが、今回は個人再生と財産処分との関係についてもう少し詳しくお話ししたいと思います。

 

住宅

 

 自己破産の場合、残念ながら住宅は失うことが一般的です。

 

 これに対して個人再生の場合は、「住宅資金特別条項」という特別の条項を再生計画案に盛り込むことにより、住宅を確保しながら他の債務の減免が認められていますので、財産処分の必要はありません。

 

 なお、住宅価値と住宅ローンを比較して住宅価値の方が高い場合(=アンダーローン)でも、その差額分を一括で支払う必要性はなく、差額分を資産として計上し、分割での返済計画の場面で考慮すれば足ります。

 

 これに対して、住宅価値よりも住宅ローンの方が高い場合(=オーバーローン)の場合は、住宅価値は0と評価され、返済額の計算にも影響はありません。

 

自動車

 

 自動車については、信販系のローン付で購入したかどうか、また、債務整理の時点でローンが残っているかどうかによって結論が異なります。

 

 ローン付で購入し、債務整理を始める段階でもローンが残っている場合には、銀行系や信金系、労働金庫などのカーローンを利用した場合を除き、基本的には契約に従って自動車は失うことが一般的です(所有権留保)

 

 これに対し、ローンが残っていない場合には、個人再生を申し立てても自動車を売却する必要はなく、自動車の価値を返済計画の中で考慮すれば足りることになります。

 

保険

 

 保険についても、特に解約の必要はありません。

 

 もっとも、解約返戻金が多額であり、他の財産と合算した結果、財産総額が高額になってしまう場合には、その影響で債権者に支払わなければならない最低弁済額が高額になることがありますので、そのようなケースではあえて保険を解約して解約返戻金を頭金にあて、残りを3~5年の分割にする形で再生計画案を作成しなければならないこともあります。

 

 また、その他にも、保険料が過大な負担となって返済原資が捻出できないケースでも、やむを得ず解約せざるを得ないことがあります。

 

退職金

 

 個人再生をするからといって退職する必要はありませんので、退職金を直接債権者への支払いにあてることはありません。

 

 退職した結果、支払能力を失ってしまえば支払いができなくなり、本末転倒な結果になるからです。

 

 退職によって退職金が発生する場合の扱いについてには、既に支給が決まっているようなレアケースを除き、その時点での退職金支給見込額の8分の1を資産として計上し、返済額を計算すれば足りることになっています。

 

預金・積立金など

 

 このようなものも基本的には財産処分の必要はなく、他の資産と同様に債権者への返済額を計算するための資料として扱えば足ります。

 

 もっとも、資産を全て合算した結果、返済総額が高くなりすぎてこのままでは支払いができないというケースでは、保険のところで述べたのと同様に、預金などを頭金に充てて返済計画を成り立たせるよう工夫せざるを得ないことはあります。

 

財産処分をしなくても良いのが個人再生の大きなメリット

 

 以上のとおり、個人再生については、一定の例外はあるものの、多くの財産は実際に処分することなく、負債の一部について減免が認められる手続です。

 

 個人再生というと住宅を確保できることや負債の減免というメリットにのみ目が行きがちですが、住宅以外の財産処分が不要である点も大きなメリットですので、住宅以外に残したい財産があるようなときは個人再生について検討する価値があります。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

退職が近い時期に個人再生は利用できるのか?~個人再生⑥~

 

 個人再生手続の利用を希望する場合、その時点で既に退職が間近に迫っているケースがあります。

 もっとも、個人再生は債務の一部を免除してもらい、一定額を3~5年で支払うという手続であるため、このように退職の近い時期にある方が利用できるのかが問題となります。

 

継続的に又は反復的な収入がある見込みがあれば可能

 個人再生の基本的要件の一つとして、継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることが必要ですが、仮に退職が迫っていたとしても、退職後もそのような収入を得る見込みがあれば利用することは可能です。

 もっとも、退職が近いことによって、個人再生の利用に次のような問題が生じる場合があります。

 

給与所得者等再生の利用は難しくなる場合がある

 個人再生には、債権者の議決を要する「小規模個人再生」と、そのような議決を要しない「給与所得者等再生」の2つがあります。

 

 このうち給与所得者等再生については、最低弁済額の計算において2年分の可処分所得以上であることを求められるため、小規模個人再生よりも最低弁済額が増える場合がありますが、単独で過半数の債権額を有する債権を持つ債権者がいるようなケースでは再生計画が否決されるリスクを避けるため、給与所得者等再生を選択せざるを得ないことがあります。

 

 しかし、給与所得者等再生では、給料やこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、収入の変動の幅が少ないという条件が必要であり、収入に5分の1以上の変動があると変動の幅が大きいと判断されやすいことから、退職後の収入の見込みによっては給与所得者等再生の利用が難しくなる可能性があります。

 

高額な退職金があると、個人再生が使えない場合や最低弁済額が増える可能性がある

 個人再生で再生計画案を立案する場合、破産した場合に債権者に配当される額以上の支払いができることが必要(=清算価値保障原則)ですが、退職金が存在するとその支給見込額を最低弁済額の計算に組み込む必要があります。

 

 通常、退職金についてはその時点における支給見込額の8分の1相当額で評価すれば足りるため、実際には退職金を考慮しても返済額に影響がないか、影響があっても微々たるものであることが多いのですが、退職がもう決まっているなど退職金の支払いが具体化したタイミングだと清算価値の計算においては4分の1として評価しなければなりません(なお、実際に支給されてしまった場合には全額で評価します)。

 

 そのため、退職までの期間が近いと最低弁済額が跳ね上がってしまい、再生計画を履行できなくなったり、弁済計画の履行自体は可能であっても毎月の負担額が大きく上がってしまう可能性があります。

 

 たとえば、負債総額が500万円のケースだと、その5分の1である100万円と本人の財産額を比べて高い方が最低弁済額になりますが、仮に財産は退職金しかなく、その時点で退職したら800万円の退職金が支払われる見込みという場合、退職金は8分の1の100万円と評価すれば足りるため返済総額は100万円になりますが、4分の1として評価しなければならない場合には返済総額は200万円になってしまうため、退職金の支払いがどの程度現実化しているのかによって負担額が大幅に変わることになります。

 

 このように、退職間近であっても個人再生を利用できる可能性はあるものの、状況によっては様々な問題が生じることがあります。

 

 そのため、個人再生の利用をお考えの方で退職が徐々に近づいている方については、時機を逸することで結果に大きな違いが生じる可能性があるため、決断のタイミングには注意を要します。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

個人再生でやってはいけないことは?~個人再生⑤~

 

 個人再生は、経済的困窮に陥った債務者にとって自宅を確保できるなど大きなメリットのある制度ですが、裁判所を通じて行う公的手続であるため手続の公平性や透明性が重要であり、不適切な行為があった場合にはうまくいかなくなることがあります。

 

 そこで今回は、個人再生において、どのようなことをすると失敗してしまう可能性があるのか、すなわちどのような行為をしてはいけないのかついて、いくつか問題になりやすいものに焦点を当ててお話したいと思います。

 

 

1 財産目録などに不正の記載をすること

 個人再生も自己破産と同様に手続の公正さが強く要求され、財産隠しなど不正な手段を用いた場合には債務カットという恩典を与えるべきではないため、このような場合には再生手続が廃止されます。

 

 また、盛岡では、弁護士が代理人に就任した場合、通常は個人再生委員は選任されないことが一般的ですが、もし、裁判所の審査の過程でそのような疑いを招いた場合、事実関係の調査等のため、数十万円の予納金を上乗せして個人再生委員の選任が必要となることもあります。

 

 そのため、個人再生を進めていく上では、このような疑いを招くことのないよう、些細な財産などでもしっかりと申告するよう気をつける必要があります。

 

 当職自身、過去に一度だけ口座を隠していた方がおり、口座を隠していた理由やその間の取引状況などからやむなく申立前に辞任せざるを得なかったケースがありますが、そのような行為は自分自身の首を絞める結果になりますので、行うべきではありません。

 

2 決められた期限に再生計画案を提出しないこと

 個人再生においては再生手続開始決定時にその後のスケジュールについても決められますが、その中でも再生計画案の提出期限は重要であり、万が一期間を経過してしまった場合、個人再生手続は廃止されてしまいます。

 

 専門家が代理人についているケースでは提出期限を気にしすぎる必要はありませんが、ご本人でチャレンジするという場合には注意すべきポイントです。

 

 なお、本来の期限に提出することができない場合には、事前に期限を延長してもらうよう裁判所に求めることも可能です(民事再生法163条3項)が、必ず認められるとは限りませんので、できる限り当初の期限内に提出する方が無難です。

 

3 裁判所の指示した積立をしないこと

 個人再生は、一定の金額(最低弁済額)を3~5年間で支払うことができる場合に認められるものですので、再生手続開始決定がなされると、想定される最低弁済額を念頭に、再生計画案を提出するまで毎月一定額の積立を行い、再生計画案の提出時には積立状況報告書を提出することになっています(履行テスト)。

 

 このように、手続開始後には裁判所から毎月の積立を求められることになりますが、この点を甘く見て途中で積立をしないことがあると、履行可能性がないとして再生手続が失敗する危険性がありますので注意が必要です。

 

4 一部の債権者を除外したり、優先して返済すること

 個人再生に限らず、法的整理では債権者平等の原則が強く働きますので、一部の債権者のみを優遇することはできません。

 

 ご相談をお受けしていると、親族やお世話になった方などという理由で一部の債権者を手続から除外したり支払いをしたいと希望される方もいらっしゃいますが、そのような行為をすると不当な目的あるいは不誠実な申立であるとして個人再生自体が認められなくなる可能性がありますので要注意です。

  

5 申立の直前に財産を移転すること

 財産目録の不正記載に似た話ですが、申立の直前に財産を他人名義に移転すること(たとえば自動車や不動産など)や誰かに自分のお金をあげたりすること(贈与)はいわゆる否認対象行為として、その財産が自分のものであることを前提に最低弁済額を考えていくことになりますので、意味がありません。

 

 もっとも、このような行為についてはその程度で済めば良い方で、これも最悪の場合、不当な目的ないし不誠実な申立として再生の申立が棄却されてしまう危険がありますので、絶対にしてはいけない行為の一つです。

 

6 弁護士への依頼後に新規に借入をしたり債務を負担すること

 このような行為も、不当な目的ないし不誠実な申立として、個人再生の申立が棄却されてしまう可能性があります。

 

 いかがだったでしょうか?

 

 幸い、これまで当職が申立に関与したケースでは、このような理由によって手続自体が頓挫したものはありませんが、個人再生においては、今回申し上げたように手続の進行状況に応じて気をつけるべき点が多くありますので、申立をお考えの際には専門家への依頼をご検討いただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

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個人再生の流れと期間~個人再生④~

 

 債務整理の方法として個人再生を選択する場合、実際にどのような流れで、どれくらいの期間がかかるのかが気にかかると思います。

 

 そこで今回は、個人再生を弁護士に依頼した場合の具体的な流れについて、当事務所で手掛けることの多い小規模個人再生をもとにご説明したいと思います

 

 なお、これからお話するのは盛岡での運用を前提にした当職の経験に基づくものですので、他庁や他の弁護士が代理するケースにおいては異なる流れを辿る可能性があります。

 

【STEP1】 相談~委任

 個人再生を行うには、まずはご相談の中で①債務の件数・内容・大まかな金額、②資産の内容、③収入状況などについて詳しく聞き取りを行い、今後の大まかな方針を立てる必要があります。

 

 これらを確認し、再生計画案の認可決定が下りる可能性があると判断できた場合には、正式に個人再生の申立についてご依頼を受け、準備を開始します。

 

Q1 初回相談時に債務額は正確に分からないといけないのか?

 債務額は最低弁済額を計算するための基準になる場合がありますので、最初の相談の時点で分かっていた方が望ましいのは確かです。

 

 しかし、当職の経験上、債務額よりも、むしろ債権者名の漏れがないかの方が重要です。

 

 正確な金額は後で調査するのでいずれ分かりますが、債権者の漏れがあるとリカバーが困難な場合もあるため、どちらかと言えば、ご相談の際は正確な債務額より債権者名に漏れがないかどうかに気を配っていただいた方が良いと思います(特に知人・親族からの借入や保証人、過去の通信契約の滞納などが漏れやすいところです)。

 

Q2 個人再生に弁護士への依頼は必要か?

 ちなみに個人再生は、法律上は必ずしも弁護士に依頼しなくても申立可能です。

 

 もっとも、個人再生では、申立のための書類準備のほかにも、負債額や資産状況をもとに最低弁済額(→「個人再生をすると、負債はどれくらい減るのか?~個人再生②・最低弁済額~」の計算をしたり、それを前提として具体的な再生計画案を作り、期限内に裁判所に提出するといった作業があり、お仕事や家事などをしながらこういった作業を行うことは難しい場合もあると思います。

 

 また、弁護士などの専門家に依頼しない場合には、申立までの準備期間中は債権者からの督促は止まりませんので、そういった事情から自分で申し立てるのが難しいという方は専門家に依頼して進めた方がスムーズに進むと思います。

 

【STEP2】 受任通知・支払停止

 弁護士への依頼後、まずは弁護士から各債権者に対して受任通知を発送し、住宅ローン以外の債務についてはいったん支払いを停止します。

 

 受任通知が発送されることにより、一般の貸金業者や信販会社などは個別の取り立てを停止しますので、厳しい督促から一時的に解放されて精神的に一息つくことができます。

 

 ただし、受任通知発送の時点ですでに滞納期間が長いケースだと、受任通知後まもなく裁判を起こされることがありますし、ご相談を受けた時点ですでに裁判を起こされていたり給与の差押えまでされているケースもありますので、相談するタイミングには注意が必要です。

 

【STEP3】 申立の準備

 受任通知発送の時期とほぼ同時に、個人再生の申立に向けた書類収集などの準備を開始します。

 

 準備していただく書類は多岐にわたり、また、人によって提出するものもまちまちですので、ここは弁護士と二人三脚で十分に準備を行います。

 

 申立てまでの期間も事案によりけりですが、支払能力や家計管理能力に大きな課題がなく、ご本人も迅速に書類を揃えられるケースであれば、通常、受任から2~3ヶ月程度で申し立てが可能となります。

 

 これに対して、依頼時点での家計状況に課題があり(収支がトントンなど返済原資が出ない場合等)、このままでは認可決定が得られない可能性が高いというときには、家計収支の改善に取り組んでいただき時間をかけて支払可能な状況にまでもっていく必要がありますし、また、ご本人が忙しく書類の準備が進まないというケースもありますので、そのような場合だとやむを得ず申立までに期間を要することもあります。

 

【STEP4】 申立~開始決定

 書類が揃い、家計状況にも問題がないことが確認できたら、裁判所に対して個人再生の申立てを行います。

 

 申立後、今度は裁判所が提出書類の審査を行い、不明点や疑問点への報告を求められ、書類の不足があればそれを補い、問題がないと判断されれば再生手続の開始決定が出されます。

 

 申立から再生手続開始決定までの期間も事案と申立時期によってまちまちですが、問題のないケースでは感覚的には1~3週間、長くても1か月程度で出ることが多い印象です(岩手県内の支部の事案ですが、最短で申立から2日で決定が出たケースもありました)。

 

 なお、弁護士が代理人についている場合、基本的にはご本人は裁判所に行く必要はなく、書面審査だけで手続が進んでいくのが通常です。返済能力などに問題があるケースだと裁判所に行く手続(=審尋)が設定されることもありますが、少なくとも当職自身は盛岡地裁管内の裁判所で審尋期日が設定されたことはありません。

 

【STEP5】 開始決定~再生計画案の提出

 再生手続の開始決定が出されると、その後は債権者の債権届出、届出債権に対する異議申述、財産目録・報告書(民事再生法第124条、125条)の提出と手続きが進んでいき、債権額と資産の内容を踏まえて、定められた提出期限までに再生計画案を作成して裁判所に提出するという流れをたどります。

 

 再生手続の開始決定から再生計画案の作成・提出といった一連の作業については弁護士が行います。

 

 その間、ご本人は、開始決定のときに裁判所から指示された金額を毎月積み立て(履行テスト)、住宅ローンがある場合にはこれまで通り支払いを継続する必要がありますが、それ以外には普段通りの生活を送っていただいて問題ありません(新たな借り入れや浪費などしないことは当然の前提です)。

 

 再生計画の開始決定から再生計画の提出までは通常3ヶ月弱程度ですが、やむを得ない事情により提出期限を延長する必要がある場合には事前に裁判所に申請をして認めてもらい、その上で提出することもあります。

 

【STEP6】 認可決定~返済開始

 再生計画案の提出後、裁判所が再生計画案に自体に問題があるかどうかを審査し、問題があるときは修正します。

 

 提出された再生計画案に問題がないという判断になった場合には、裁判所は再生計画案を債権者の決議に付し(付議決定)、議決権を有する債権者の過半数、かつ、議決権額の過半数の反対がなければ再生計画案が認可されます(小規模個人再生の場合。給与所得者等再生の場合にはそもそもこの書面決議自体がありません)。

 

 このようにして再生計画案が認可されると概ね1か月程度で確定し、その後、再生計画に定められたスケジュールに沿って改めて支払いをスタートすることになります。

 

 ちなみに、認可決定後の返済方法は依頼する事務所によって異なり、ご本人に支払いをお任せするところもあれば返済期間中の支払いまで代行するところもあり、依頼する弁護士との契約内容によって違います。

 

 どちらがいいかはご本人のニーズにもよるため一概には言えませんが、認可決定後の返済期間は短くても3年と長丁場ですから、自分で支払いを管理するのが難しい場合には確定後の支払いの代行まで引き受ける事務所を選んだ方が良いと思います(なお、当事務所では認可決定後の支払い代行も行っています)。

 

 以上、個人再生の大まかな流れについてお話ししました。

 

 個人再生は同じく法的整理手続である自己破産にはない独自のメリットのある手続ですので、債務整理をする際の一つの選択肢としてご検討いただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

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個人再生のメリットについて~個人再生③~

 

 以前、借金問題の解決の手段の一つとして個人再生をご紹介しました。

 

 法的な債務整理の方法としてはほかにも自己破産がありますが、個人再生には自己破産にない独自の利点がありますので、今回は自己破産にはない個人再生のメリットについてご紹介したいと思います。

 

住宅ローンのある自宅を残して、その他の債務を圧縮できる可能性がある

 個人再生の最も大きなメリットが、住宅ローンを払って自宅を確保しながら、それ以外の債務の圧縮が可能になる点です。

 

 同じく自宅を残すことが可能な方法としては個別に債権者と交渉する任意整理がありますが、分割払いの任意整理では債務の圧縮は期待できないため、これを両立できる点が個人再生の大きなメリットです。

 

 もちろん、住宅ローンについては支払いを続けることが大前提ですが、このメリットがあるため、当事務所では、住宅ローンのある方についてはまずもって個人再生を検討します。

 

 ただし、このメリットを受けるためには居住用の不動産(床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること)であることが必要ですので、たとえば投資用マンションやセカンドハウスのケースでは対象になりませんし、不動産に住宅ローン以外の担保権がついている場合も対象にならないことには注意が必要です。

 

 また、上記の条件を満たしても、不動産の評価額が高く、逆に住宅ローン残高が少ない場合(アンダーローン)には、債権者に最低限弁済しなければならない金額(最低弁済額)が高くなり、個人再生が利用できない場合もあります。

 

不動産以外の財産も処分を避けられる可能性がある

 個人再生で住宅ローン債権者以外の一般の債権者に支払う必要のある最低弁済額は、多くの場合、100万円~負債額の5分の1か、債務者の財産評価額の合計額(清算価値)のどちらか高い方となります(詳しくはこちら→「個人再生をすると、負債はどれくらい減るのか?~個人再生②・最低弁済額~」)。

 

 これは要するに、財産を処分して債権者に分配したのと同等以上の金額を支払えば足り、必ずしも手持ちの資産をお金に換えて返済に充てなければならないわけではない、ということを意味しています(ちなみに、あえて財産の一部を処分してこれを頭金として初回の返済に充て、2回目以降の返済額を大幅に減らすという返済計画も可能です)。

 

 そのため、たとえば以下のような保険がある事案だと、自由財産である99万円の現金を除いて計算した最低弁済額は200万円となり、これを原則3年(最大5年)で分割返済していく必要はあるものの(3年だと毎月約5.5万円+送金手数料)、毎月の返済資金さえ捻出できるのであれば保険そのものを処分されることはありません。

 

 これに対して、自己破産のケースだと、合計299万円の資産のうち99万円までは手元に残せる可能性があるものの(自由財産の拡張)、特別の事情がない限りそれを超える金額を残すことは難しい場合が多いため、保険は諦めざるを得ないことがあります。

 

【設例】

債務額:600万円

 

保険解約返戻金:200万円

 

現金:99万円

※自由財産のため清算価値には計上しない

 

最低弁済額:600万円÷5<200万円 

    → 200万円

 

浪費等がひどくても利用できる可能性がある

 借金の原因がギャンブルや飲食などの散財であり、その程度があまりにもひどい場合、自己破産では解決が難しいことがあります。

 

 もちろん、免責不許可事由があっても多くの場合には免責が許可されているため(詳しくはこちら→「免責不許可になる割合は?~自己破産⑧~」、浪費があるから即個人再生をすべきということではありませんが、弁護士からみてもあまりにもひど過ぎるという場合には、自己破産ではなく個人再生で進める方がよい場合もあります。

 

 というのも、個人再生については、自己破産に比べて借金の原因が問題になることが少なく(もちろん、不正な目的で個人再生を申し立てた場合は却下されるため限界はあります。)、最低弁済額以上の返済ができるだけの収入がある場合には、自己破産は難しくても個人再生は認可される可能性があるためです。

 

 当職自身が過去に担当したケースでも、負債のほとんどがギャンブルであり、それによって作った負債額も非常に多額であったという事案で、ご本人が個人再生を選択したというものがあります。

 

資格制限がない

 自己破産の場合、警備員や宅地建物取引士など一定の資格に制限がかかりますが、個人再生ではそのような制限がかかりません。

 

 実際には資格制限のかからない職業に就いている方も多いため、そのような方にとっては関係のない話ですが、職業の関係で自己破産を選択できない場合でも債務を圧縮できるというのも個人再生のメリットの一つです。

 

対外的イメージ

 これはメリットといえるかどうか評価が分かれるところではないかと思いますが、自己破産という言葉の持つネガティブなイメージを避けたいということで、あえてご本人が個人再生を選択なさる場合もあります。

 

 個人再生も自己破産と同様に信用情報や官報に載りますし、保証人に影響が出るというデメリットも共通なのですが、残念ながら自己破産に対してはマイナスイメージがあることは否めませんので、経済的なメリットよりもそちらを重視したいという方には個人再生をお勧めすることがあります。

 

 以上、個人再生について思いつく限りのメリットをご紹介しました。

 

 個人再生は、うまくはまれば経済的な立ち直りに大きな威力を発揮する制度ですが、破産に比べて最低弁済額の計算や弁済計画案の作成などの面で難しいところがありますので、手続を希望する場合には専門家への依頼をお勧めします。

 

 なお、弁済計画の認可決定が確定した後、債権者への配当についても代行してもらえるかどうかは依頼先によって異なります。

 

 当事務所では認可決定確定後の弁済代行までお引き受けしていますが、依頼先によっては配当自体は自分でしなければならない場合もあり、長い弁済期間のため債権者数が多いと配当作業が大変なこともありますので、認可決定後の配当代行まで希望する場合には、事前に依頼先に確認しておいた方が良いと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

個人再生をすると借金はどれくらい減るのか?~個人再生②・最低弁済額~

 

 以前のコラムで(→自宅を残して負債を整理する方法はあるか?~個人再生~」)、自宅を残すことのできる債務整理の方法として「個人再生」という手続をご紹介しました。

 それでは、個人再生を利用した場合、具体的にはどれくらい負債を減らせる可能性があるのでしょうか。今回は、個人再生のうち、これまで当事務所で多く手掛けてきた「小規模個人再生」について、具体的なケースをもとにご説明したいと思います。

 

住宅ローン

 まず、住宅ローンについては、残念ながら減免されせんので、個人再生をする場合でも支払いを継続していただく必要があります。

 

その他の負債

 これに対して、その他の負債については、法律で定められた最低金額まで負債を減らせる可能性があります。

 個人再生手続で払わなければならない最低額のことを「最低弁済額」(さいていべんさいがく)といいますが、小規模個人再生では、住宅ローン以外の負債について以下の①と②を比べて高い方の金額以上の額を支払い、残りを免除してもらうことが可能です(なお、税金は減免の対象にはなりませんので注意が必要です)。

 

小規模個人再生における最低弁済額の計算

【①負債額】

 100万円未満            →        総額
 100万円以上500万円以下     →     100万円
 500万円を超え1500万円以下   →   総額の5分の1
 1500万円を超え3000万円以下  →     300万円
 3000万円を超え5000万円以下  →  総額の10分の1

【②資産総額】

 ※法定の自由財産など一定の財産は除く。

 

 【最低弁済額=①と②を比べて高い方の金額】 

 

ケース1

 住宅ローン      2000万円(住宅の査定額:1400万円)

 住宅ローン以外の負債  500万円

 資産総額         50万円(※)

 ※住宅はローンの方が多いため無価値と評価し、住宅以外の財産のみをカウントします。

 

 ケース1では、住宅ローン以外の負債が500万(①)、資産が50万円(②)ですので、①の基準を当てはめると100万円となり、これと②を比較すると①の方が高いため、最低弁済額は100万円となります。

 個人再生が認可された場合、債務者は100万円を3~5年の分割で支払い、残りの400万円を免除してもらえることになります。 

 

ケース2

 住宅ローン      2000万円(住宅の査定額:1400万円)

 住宅ローン以外の負債  500万円

 資産総額        150万円(※)

 ※住宅はローンの方が多いため無価値と評価し、住宅以外の財産のみをカウントします。

 

 ケース2では、住宅ローン以外の負債が500万(①)、資産が150万円(②)ですので、①の基準を当てはめると100万円となり、これと②を比較すると②の方が高いため、最低弁済額は150万円となります。

 個人再生が認可された場合、債務者は150万円を3~5年の分割で支払い、残りの350万円を免除してもらえることになります。

 

 ケース1、2ともに、住宅ローン以外の債務について相当程度減免されることがお分かりになるかと思いますが、当事務所にご相談いただいた方については、最低弁済額が100万円程度になるケースが比較的多い印象です。

 

 個人再生は住宅ローンのない方であっても利用できる制度ですから、ギャンブルやショッピング(最近ではスマホやPCでの課金等)などの浪費が著しく自己破産できなさそうなケースでも、最低弁済額以上の金額を支払うことで負債の一部を減免してもらうことが可能です。

 

 しかし、この手続の一番のメリットはやはり自宅を残すことができる点にあると思いますので、収入がそれなりに安定していて、かつ、住宅ローンもあるという方の債務整理については、当事務所でも積極的に個人再生を検討するようにしています。

 

弁護士 平本丈之亮