財産分与の対象になるもの、ならないもの(預貯金)

 

 前回のコラム(「財産分与の対象かどうかの基準は?~離婚・財産分与~」)で、財産分与の対象になるかどうかは、夫婦が築き上げた財産といえるかどうかで決まる、という一般的なお話をしました。

 

 これを踏まえ、今回からは具体的な財産(預金や不動産など)ごとに、財産分与の対象となる場合とならない場合について説明していきたいと思います。

 

 第1回目は、預貯金です。

 

夫婦名義の預貯金

 まず、もっとも多いのは、夫婦のどちらか、あるいはそれぞれの名義でまとまった預貯金があるケースです。

 

いつの時点の残高が対象か?

 

 共有財産か特有財産かが不明な場合、その財産は共有財産と推定されますので、夫婦の一方名義の預貯金については、特有財産であることが明確でない限り財産分与の対象となります。

 

 そして、前回のコラムでも述べたとおり、財産分与の基準時は原則として別居時ですから、財産分与をするときは別居時の預貯金残高を対象とすることが多いと思われます(なお、別居後も夫婦の協力関係が継続していたような特殊なケースや離婚まで同居を継続するケースでは、夫婦間の経済的協力関係が終了したと思われる時点の残高を対象にすることがあります)。

 

別居直前に預金の持ち出しがあった場合は?

 

 これもよく見られるケースですが、別居直前に夫婦の一方が無断で他方の預貯金を持ち出していた場合、これを持ち戻し、別居時の残高に加算して分与額を計算することになります。

 

 その上で、持ち出した額が本来分与されるべき金額に満たないのであれば、基本的には不足分の支払いを受ける形で清算することになります。

 

 これに対して、持ち出した額が本来分与されるべき金額を超えていたような場合だと、その超過分を返還しなければならなくなる場合がありますので注意が必要です(東京高裁平成7年4月27日判決では、妻が財産分与の申立をしたところ、判決で妻が持ち出した財産は相当な分与額を超えているという認定がなされ、夫側は財産分与を申し立てていなかったにもかかわらず、妻から夫に超過分を支払うように命じられており、いわばやぶ蛇な結果となっています)。

 

結婚前の貯蓄の取り扱い

 

 夫婦の一方が結婚前に貯蓄していた場合に、別居時の残高から結婚時点での残高を差し引くべきだ、という主張がなされる場合があります。

 

 この点は、まず、結婚前からの貯蓄を結婚生活と分離して保管していたようなケース(定期預金など)であれば、特有財産として財産分与の対象から除かれます。

 

 これに対して、貯蓄用の口座を結婚後にそのまま生活口座として使用したり、貯蓄を生活口座に移し、その後、その口座で頻繁に入出金を繰り返していたようなケースでは、特有財産である貯蓄と共有財産である収入等が混ざり合ってしまい、どこからどこまでが特有財産であるか特定することが困難であるため、別居時の残高全体が財産分与の対象とされる可能性があります(=別居時の残高から結婚時の残高は差し引かない)。

 

 ただ、このような考え方を採る場合でも、実質的な結婚期間が短いときは、別居時の残高の中に特有財産である貯蓄がまだ残っていると評価できる場合もあり得ることから、別居時の残高全体を財産分与の対象としつつ、夫婦の寄与度に差をつけて貯蓄部分をある程度考慮するという考え方もあります(たとえば、夫名義の預貯金について、通常であれば分与割合を夫:妻=50:50とすべきところを、婚姻期間が短く、預貯金の中に夫の結婚前の貯蓄が多分に残っていることを考慮し、70:30にするなどが考えられます)。

 

 また、結婚前から別居時までのお金の流れを通帳や取引履歴をもとに丁寧にたどっていくことによって、預金の一部を特有財産であると認めてもらえるケースもあります。

 

 

親からの相続や贈与によるものが含まれているときは?

 

 ほかに良く問題となるのは、預貯金の中に相続によって取得したものや、贈与によって取得したものが含まれている場合があります。

 

 原資が相続や贈与によるものであることが証拠上明らかであれば、その部分は特有財産として財産分与の対象にはなりません。

 

 ただ、この点も、贈与などの入金先が生活口座であり、別居までに入出金が頻繁に繰り返されて相当期間が経過しているような場合だと、結婚前の貯蓄と同じように特有財産部分と共有財産部分を区別できず、別居時の残高全体が財産分与の対象とされてしまう可能性があると思われます。

 

子ども名義の預貯金・・・ケースバイケース

 これもよく問題となりますが、子ども自身が小遣いやお年玉などを自分で預貯金口座に貯めていた場合や、親が祖父母から子ども宛に渡された小遣いやお年玉などを子ども名義の口座に入金したような場合には、その部分は子ども自身の財産であるため、財産分与の対象にはなりません。

 

 これに対して、親が自分の収入の中から子ども名義の口座に入金して貯蓄していたような場合だと、原則として財産分与の対象となります。

 

 例外的に、親から子どもに対する贈与といえるようなものだった場合は財産分与の対象にならないこともありますが、この点の判断はなかなか難しく、口座の残高、入金の趣旨・目的、口座の管理状況、子どもの年齢などを総合的に検討して実質的に判断していくことになります。

 

 例えば、普段、子ども自身が通帳を管理してキャッシュカードでお金を下ろして小遣いとして使っており、問題となる口座への入金額や別居時の残高も少額であれば、親の収入が原資であっても、それは子どもが自由に処分して良いという趣旨で贈与したものと言えますので、財産分与の対象にはなりません。

 

 しかし、子どもの年齢が幼く、通帳などは親が管理して子どもは一切タッチしておらず、残高も子どものものというには高額である、というようなケースであれば、形式的には子ども名義であっても実質的には親に帰属する共有財産として財産分与の対象になり得ることになります。

 

両親など親族名義の預貯金・・・ケースバイケース

 これも、結局は夫婦の共有財産といえるかどうかの問題ですが、口座の開設者が誰であるか、口座の管理をしていたのは誰か、その口座の残高の原資は何か、などの点から実質的に判断することになります。

 

 たとえば、夫の母親名義の預貯金口座があるときに、その口座を開設したのは夫で、通帳や印鑑・カードを持っていたのも夫、入出金も夫が行って母親はタッチしておらず、原資も夫の収入である、という場合であれば、母親名義の預金であっても財産分与の対象となります。

 

 これに対して、母親が開設して自分で通帳等を管理していた口座に夫が送金していたような場合には、共有財産を減らす目的で別居直前に多額の預貯金をまとめて送金したなどの事情がない限りは、基本的には夫から母親に対する贈与にすぎず、財産分与の対象にはならないものと思われます。

 

 いかがだったでしょうか?

 

 ひとくちに預貯金といっても、その内容によって財産分与の対象になるかどうかは様々です。財産分与で預金の取り扱いが問題になるケースでは、どの時点の残高を基準にするのかや特有財産かどうかを巡って争いになることが多く、適正な解決には法的知識が要求されますので、当事者同士での解決が難しい場合には専門家への依頼をご検討いただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

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財産分与の対象かどうかの基準は?

 

 離婚を検討する場合に問題となることが多い分野として財産分与があります。

 

 財産分与の対象となる財産は、簡単に言ってしまえば、夫婦が共同で築き上げた財産ですが、いざ実際に協議を進めようとしたところ、そもそもどういう財産が対象になるか判断がつかない、あるいは、財産分与の対象にするかどうかで揉めてしまった、として相談に来られる方がいらっしゃいます。

 

 そこで、今回は、財産分与の対象になる財産とはどのようなものか、という点について基本的な考え方を説明したいと思います。

 

 なお、財産分与には、正確には「清算的財産分与」「慰謝料的財産分与」「扶養的財産分与」の3つがありますが、後2者が問題になることは多くないため、ここでは一般的な意味での財産分与である「清算的財産分与」についてのみ取り上げます。

 

財産分与の対象=(実質的)共有財産

 財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産(=「共有財産」・「実質的共有財産」)について、夫婦それぞれの貢献度に応じて離婚後に分配するという制度です。

 

 ちなみに、「共有財産」は名実ともに夫婦の共有名義の財産、「実質的共有財産」は夫婦の一方名義だが、夫婦が協力して形成した財産を意味します。

 

 これに対して、財産分与の対象にならない財産のことを一般的に「特有財産」といいます。

 

 以上のような基本的な考え方から、財産分与の対象になる財産かどうかについては、以下のように考えられています。

 

夫婦が協力して築いたものだけが対象となる

 

 財産分与の対象となる財産は夫婦が協力して築き上げた財産ですが、これをより具体的にいうと、以下のとおりになります。

 

①結婚中に、相続や贈与など夫婦の協力とは無関係に得た財産 → ×対象外

 

②夫婦名義の財産だが、第三者の資金が原資であるもの → ×対象外

 

③第三者名義の財産だが、夫婦の収入・資産が原資であるもの → ○対象

 

 ②や③でよく問題となるのは、子どものお年玉や祖父母からの小遣いが夫婦名義の預金に混入しているケースや親から住宅ローンの頭金を出してもらったケース、子どもあるいは親族名義の預金(いわゆる名義預金)がある場合の取り扱いです。

 

対象は原則として結婚~別居までに形成されたもの

 

 財産分与は夫婦の協力関係が前提ですから、夫婦の協力関係が生じる前に取得した財産や、夫婦の協力関係が失われた後に取得した財産は対象外となります。

 

 これをより具体的にいえば、概ね以下のようになります。

 

①別居後に取得した財産 → △原則対象外

 

②結婚前に取得した財産 → △原則対象外

 

 ①に関しては、同居と別居を繰り返していたケースや、いわゆる家庭内別居でいつの時点で夫婦の協力関係が失われたかが判然としないケース、当初は単身赴任で協力関係があったが次第に夫婦関係が冷めていき、最終的に破たんしたケースなどにおいて、いつの時点での財産が財産分与の対象になるかが争いになる場合があります。

 

 結局は個々の事情次第ではありますが、たとえ別居したとしても、その後も引き続き夫婦の協力関係が続いていたといえる場合には、その協力関係が失われた時点までに取得した財産は財産分与の対象になります。

 

 同様に、②のように結婚前に取得した財産であっても、実質的にみて夫婦の協力関係によって形成されたものは、夫婦が協力した限度で財産分与の対象になります。

 

 そのため、たとえば結婚前に夫が住宅を購入していたり生命保険に加入していたが、結婚後は住宅ローンの支払いや掛金の支払いについて妻が協力していたと評価できる場合や、夫が結婚前から勤めていた会社の退職金などについては、妻が貢献したといえる限度で財産分与の対象になり得ます。

 

(実質的)共有財産か特有財産か不明な場合=夫婦共有財産

 以上のとおり、財産分与の対象となるかどうかは夫婦が協力して得た財産と評価できるかどうかにかかっているため、財産分与の協議の場面ではしばしばこの点を巡って争いになります。

 

 別居した時期などはある程度客観的に明確になりますが、財産形成の原資が何であったかを明らかにするのは意外に難しい場合があります。

 

 というのも、夫婦がうまくいっている間は財産取得の原資についていちいち資料を残していないことも多く、離婚に至るまでに長い婚姻期間がある場合はそもそも古すぎて資料自体が残っていないこともあるからです。

 

 このように、調査をしても財産形成の原資が何であったかが不明な場合、民法762条2項ではその財産は夫婦共有財産と推定するとされているため、争いとなっている財産が特有財産であることを立証できない場合、その財産は財産分与の対象になります。

 

適正な財産分与には専門的知識の活用が有効

 財産分与については、財産の種類や名義が誰のものかという形式的なことよりも、実質的にみて夫婦の協力によって築き上げたものといえるかどうかや、どこからどこまでの範囲について夫婦の貢献があったいえるのかという視点で整理していくことが肝要です。

 

 しかし、ご本人が財産分与の対象財産になるかどうかを判断することは簡単ではなく、誤った知識を前提に協議等を行った結果、不必要にこじれてしまうケースもあります。

 

 たとえば、夫婦の協力関係が終了した時点はどこかという視点(基準時)を考慮せず、単純に離婚する時点での財産を半分にしてほしいという主張がなされることがありますが、長期間の別居を経たケースではそのような主張は誤りである可能性が高く、知らずに過大な要求をしてしまい協議や調停が紛糾するケースがあります。

 

 また、一度離婚の申出があったものの、そのまましばらく同居を継続して生活状況にも何ら変化がなかったにもかかわらず、過去に離婚を申し出た時点での財産を分与すべきであるという主張がなされることもあります。

 

 しかし、財産分与の基準時はあくまで夫婦の経済的協力関係が終了した時点がどこかという観点から決めるものであり、夫婦関係の破綻とは必ずしも一致しないため、不相当に過小な提案となっているが故に協議が紛糾する場合もあります。

 

 このように、財産分与については専門的な知識が要求されることがあり、正しい知識をもとに交渉することで無益な紛争に至らず解決できるケースもありますので、財産分与を巡って協議が難航していたりその可能性があるような場合には、一度弁護士への相談をご検討いただきたいと思います。

 

 弁護士 平本丈之亮

 

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婚姻費用・養育費の計算で「収入」に入れないもの

 

 これまで何度か婚姻費用・養育費の計算方法について説明をしてきましたが、(計算方法を修正すべきではないかとの議論はあるものの、)現在の実務では、婚姻費用・養育費は「簡易算定表」によってある程度機械的に金額が定まります。

 しかし、簡易算定表に当てはめるには、権利者・義務者双方の収入がいくらであるかを確定する必要があり、いざ実際に簡易算定表を用いて計算しようとしてみると、児童(扶養)手当を収入に含めるべきかどうかなど色々と迷うところが生じて、必ずしも簡単に金額を計算できないケースがあります。

 そこで、今回は、婚姻費用・養育費を計算するにあたって「収入」として扱うべきかどうかが問題となるものについてご紹介したいと思います。

 

収入=原則として実収入

 簡易算定表に当てはめる際に参照するのは、原則として当事者双方の実収入(給与所得者であれば、源泉徴収票の「支払金額」)です。

 なお、当事者が無職であったり自営業などの場合で例外的に実収入以外の金額を用いる場合がありますが、これはまた別の機会にお話したいと思います。

 

児童手当・児童扶養手当

 児童手当は、児童の福祉に資することを目的として政策的に支給される公的扶助であるため、収入には加算されません。

 

実家からの援助

 これもしばしば問題となりますが、実家からの援助は好意に基づく贈与にすぎないことなどから、収入には加算しない扱いです(福島家裁会津若松支部平成19年11月9日審判、和歌山家裁平成27年1月23日審判)。

 

高等学校等就学支援金

 この制度は、経済的負担の軽減を通じて教育の実質的な機会均等に寄与することを目的とした一種の公的扶助であることから、児童手当・児童扶養手当と同様に収入には加算されないものと思われます(現行制度よりも前の制度の事案ですが、公立高校の授業料が無償化されたことが婚姻費用の計算において考慮すべきものではないとした審判例として、福岡高裁那覇支部平成22年9月29日決定があります)。

 

 

 以上の通り、今回ご説明したものについては、基本的には婚姻費用・養育費の計算にあたって収入としてカウントする必要はないと考えられますので、交渉の際には気をつけていただきたいと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

 

(元)妻が実家で暮らしている場合、婚姻費用や養育費の計算はどうなるか?

 

 前回のコラム(→「妻(夫)の住居費用を夫(妻)が負担している場合の婚姻費用・養育費の計算方法~離婚②~」)でもご紹介したとおり、婚姻費用・養育費については簡易算定表が普及しているものの、実際にはこれをそのまま適用して良いかどうか迷う場面があります。

 

 今回は、婚姻費用や養育費を計算する上で問題となることが多いケースとして、(元)妻が実家に住んでいる場合についてお話したいと思います。

 

実家に住んでいることは減額理由となるか?

 

 別居あるいは離婚後に(元)妻や子が妻側の実家に身を寄せて生活するというのは、実際にご相談を受けていて非常に多いパターンです。

 

 そして、このような状態で(元)妻が(元)夫側に婚姻費用や養育費を請求したところ、「実家に暮らしていて住居費がかからないのだから、その分、金額を減らすべきだ。」と主張されるということもよくあります。

 

 似たようなケースとして、夫が妻子の住む借家の家賃を負担したり、夫名義の住宅に住んでいる妻子のために住宅ローンを負担している場合がありますが、この場合に夫側が負担している部分を考慮しないと夫は自分の住居費と妻側の住居費を二重に負担することになり酷であるため、このような事情は減額の理由として考慮するという扱いが一般的です(→上記コラム参照)。

 

 これに対して、(元)妻や子が妻の実家に暮らしている場合は(元)夫が二重に住居費を負担しているわけではありません。

 

 また、これを理由に減額を認めてしまうと、妻あるいは子に対して第一次的な扶養義務(生活保持義務)を負っている夫がそれよりも順位の下がる扶養義務(生活扶助義務)を負うに過ぎない妻側の実家に自分の義務を押しつける結果になり、かえって不公平とも考えられます。

 

 また、親族から援助を受けていた場合に、そのような事情は養育費の金額を定めるに当たって考慮しないとした審判例もあり(①福島家裁会津若松支部平成19年11月9日審判、②和歌山家裁平成27年1月23日審判)、実家に無償で住まわせることも一種の援助といえることからすると、今回のようなケースも同様に考えるのが妥当と思われます。

 

 そのため、(元)妻側が実家暮らしであることは婚姻費用や養育費の減額事由としては考慮されないのではないかと思われます。

 

働けるのに働いていないと減額の可能性がある

 

 ただし、(元)妻が実家からの援助を受けながら生活している場合に本当なら働くことができる状態であるにもかかわらず働いていないという事情があるときは、実家から援助を受けているからという理由ではなく、働ける能力があること(=潜在的稼働能力)を理由として婚姻費用や養育費が減額される可能性があるとも言われていますから、(元)妻が働けるのに働かず、実家から生活費の援助をしてもらっているような場合は注意が必要です。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

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離婚をするための手続について

 

 弁護士の川上です。

 

 当事務所でお受けするご相談で最も多いのは、実は離婚に関するご相談かもしれません。今回は離婚をするための手続についてお話しします。

 

1 協議離婚

 まずは夫婦間で話し合いをする(協議)のが基本です。離婚するかどうかに加え、未成年のお子さんがいる場合には、夫婦のどちらが親権者(しんけんしゃ)となるかを話し合います。離婚と親権について合意できれば、離婚届を記入して提出することで、協議離婚が成立することになります。

 なお、養育費(よういくひ)面会交流(めんかいこうりゅう)、慰謝料(いしゃりょう)財産分与(ざいさんぶんよ)などの条件についても話し合うことになりますが、これらについては別の機会にご説明します。

 

2 調停離婚

 当事者間で合意できない場合には、家庭裁判所で夫婦関係調整(ふうふかんけいちょうせい)の調停を行います。いきなり裁判を起こしても、「まずは調停をしてください」と言われます(ちなみに、夫婦関係調整の調停の中には離婚と円満調整の2種類があります)。

 家庭裁判所での調停の手続は、2名の調停委員が中心となって進められます。当事者が面と向かってやり取りをするのではなく、調停委員が当事者から交互に事情を聞き、ポイントを整理しながら調整していくというイメージです。調停手続については、別の機会でご説明します。

 

3 裁判離婚

 調停でも合意できない場合、家庭裁判所で離婚訴訟を行うことになります。裁判で離婚が認められるためには、離婚原因(りこんげんいん)が必要となります。

 民法770条1項には5つの離婚原因が定められており、裁判所が離婚原因ありと判断すると、一方が同意していなくても離婚が認められます。具体的には、相手に不貞行為(ふていこうい)があったとき等ですが、これについても別の機会にご説明します。

 

法律相談のススメ ~ 離婚編 ~

 

 弁護士の川上です。

 離婚問題で弁護士に依頼するかどうか悩ましいケースとして、①当事者間の協議により解決が見込まれるケース、②協議や調停段階から弁護士に依頼する金銭的余裕がないケースなどが挙げられます。

 実際に協議や調停の段階では、弁護士に依頼せずご自分だけで対応される方も多くいらっしゃるのではないかと思われます。

 しかし、このようなケースでも、実際にご依頼いただくかどうかは別として、なるべく早い段階で一度法律相談を利用することをお勧めしたいと思います。

 ご相談いただいた結果、弁護士に依頼した方が良いとご判断されれば、その段階でお引き受けしますが、場合によっては無料相談(震災相談援助制度では3回まで)を活用し、弁護士がご本人による解決をバックアップさせていただくという方法もあります。

 たとえば、協議や調停は1回では終わらないことが多いと思われますので、協議や調停の前後にご相談いただき、今後の対応(条件案の検討、協議書の文案作成など)についてアドバイスさせていただくという形で対応し、弁護士を付けずに解決に至ったケースも多数存在しております。

 なお、このようなバックアップ態勢をとっていると、万が一調停が不成立となって訴訟に移行した場合にも、調停の経過や争いのポイントをあらかじめ把握できていますので、訴訟段階から事件をお引き受けすることになったとしても、迅速な対応が可能となります。

 離婚で悩まれている方は、法律相談を是非ご活用ください。