衣類や装身具は財産分与の対象となるのか?

 

 離婚協議の中で財産分与が問題になる場合、通常は不動産や預金、有価証券などの処理を巡って話し合いがなされることが多いところですが,まれに、婚姻中に夫婦それぞれが購入した衣類や装身具(指輪など)が財産分与の対象になるかを巡って議論になることがあります。

 

 では、このような物が果たして財産分与の対象になるのか、というのが今回のテーマです。

 

夫婦それぞれの専用品は基本的に財産分与の対象にはならない

 

 以下の裁判例でも触れられているとおり、衣類や装身具など、社会通念上、夫婦それぞれの専用品とみるべき物は、基本的には財産分与の対象にはならないと考えられています。

 

名古屋家裁平成10年6月26日審判

「本件記録によれば、本件内縁期間中に申立人が相手方から買い与えられた宝石類は、ネックレス一点、指輪三点であり、その購入価格は、指輪一点が約八〇万円、他の指輪一点が約三〇万円であったことが認められ、なお、その余の価額は不明である。
 これらの宝石類は、社会通念に従えば申立人の専用品と見られるから、申立人の特有財産であるというべきであり、したがって、本件財産分与の対象とはならない。」

 

東京地裁平成16年2月17日判決

「前記美術品は夫婦共同財産であり、現在被告が管理している。この点について、被告は、被告の特有財産によって被告の好みにより購入したもので、被告の特有財産であると主張する。しかし、衣類や装身具等とは異なり、社会通念上これを被告の専用品とみることはできないうえ、相続財産を原資として取得されたと認めるに足りる証拠はないから(相続した預貯金あるいは現金等によって購入されたと認めるに足りる証拠はないから)、被告の特有財産ということはできない。」

 

 このように、衣類や装身具は、通常それぞれの専用品、すなわち特有財産として扱われるため基本的には財産分与の対象にはなりません。

 

 ただし、裁判例によれば、専用品として扱われるかどうかの基準は結局のところ「社会通念」という曖昧なものであるため、たとえば装身具ひとつみても、それ自体が非常に高額であったり、購入目的が着用という装身具本来の目的ではなく資産形成であったようなケースであれば、例外的に財産分与の対象となる可能性は残ります

 

 多くの場合、この点は話し合いによって解決されていると思われますが、専用品かどうかを巡って離婚協議等が難航する可能性もありますので、装身具などの処理を巡って本格的に問題が生じたときは、一度弁護士へのご相談をご検討いただければと思います。

 

 弁護士 平本丈之亮

離婚前に渡した財産は、離婚の際にどのように扱われるのか?

 

 夫婦間においては、婚姻中、配偶者の一方が他方に財産を渡すことがありますが、離婚のご相談をお受けしていると、離婚の条件を協議する際に、結婚中の財産の移転をどのように処理するかを巡りトラブルになることがあります。

 

 そこで今回は、離婚の前に渡した財産が離婚の際にどのように扱われるのかについてお話しします。

 

財産分与として渡したものは、離婚の際に清算される

 

 離婚前に渡した財産が夫婦の財産関係の清算である財産分与の趣旨であることが明らかな場合、前渡しした財産は最終的な財産分与の場面で清算されます。

 

 具体的には、夫婦の共有財産を全て合算して必要な限度で負債を控除し、それに取得割合を乗じて、そこから離婚前に前渡しを受けた分を控除するというやり方です(このような計算方法をとっている裁判例として、東京家裁平成30年3月15日判決)。

 

財産分与の前渡しをするときは、その趣旨を明確にしておくべき

 このように、離婚前に渡した財産が財産分与の前渡しであることが明確であれば、上記のように最終的な分与額の計算において考慮されることがあります。

 

 もっとも、ある財産を離婚前に前渡しする場合、そのお金の移動の趣旨はいくつかの可能性があり、それが財産分与の趣旨ではないと判断された場合には、このような控除計算はなされないことになります。

 

 たとえば、離婚前の別居段階で婚姻費用の未払いが長期間続いており、その清算として、離婚前にまとめて過去の婚姻費用を支払ったというケースが典型例ですが、このような未払婚姻費用の清算は財産分与とは性質上別個のものであるため、この場合は財産分与の計算上、考慮されません。

 

 実際のケースとしても、さきほど紹介した東京家裁平成30年3月15日判決では、離婚前に前渡しした金銭が財産分与の前渡しであるのか、それとも過去の未払い婚姻費用の清算であったのかが争われていますが、結論的には、前渡しした側が保育料や光熱費等を負担していたことなどの事情から、渡したお金は婚姻費用の清算ではなく財産分与の前渡しであったと認定されています。

 

 以上のように、具体的な離婚協議をする過程において、離婚成立前に一定の財産を相手に動かすことは、その趣旨が曖昧だと後々問題となることがあります。

 

 そのため、前渡しする必要がある場合には、その金銭の移動がいかなる趣旨であるかについてきちんと合意したうえで、書面等で明らかにしておく必要があります。

 

離婚が問題になる前に贈与した財産は?

 

 以上のように、離婚問題が浮上してから財産を移転するというのではなく、離婚が問題になる以前に、配偶者の一方が相手に財産を贈与することもよくみられます。

 

財産分与の前渡しとは評価されない

 このようなケースでは、贈与した側から、その贈与財産も財産分与の計算をする上で考慮してしてほしいという希望が出されることがありますが、そもそも離婚が現実的な課題として意識されていない段階での財産移転であれば、財産分与の前渡しとは評価できませんので、このような理屈で考慮してもらうことは難しいと思われます。

 

夫婦共有財産を贈与した場合、離婚時に清算の対象にしてもらえるか?

 また、贈与の対象となった財産が夫婦共有財産であった場合には、単に共有財産の名義や占有を相手に移転しただけにもみえるため、離婚時にこれを財産分与の対象として扱うべきではないか、具体的には、支払うべき金額からその分を控除したり、逆に相手が取りすぎであるため一部返還してもらいたい、という希望が出ることもあります。

 

 この点については、贈与当時の当事者双方の意思などにかかわるためケースバイケースの判断となりますが、当事者の意思によって確定的に財産の帰属を決めたのであれば、そのような贈与は清算的要素をもち、贈与対象財産はその時点で特有財産になるため財産分与の対象にはならない、と判断されることがあります。

 

 たとえば、大阪高裁平成23年2月14日決定では、不貞行為が疑われる状況下で配偶者の不満を抑える目的のもと不動産の持分を移転したというケースにおいて、そのような持分移転は清算的要素をもち、贈与の時点で不動産は特有財産になったと判断されています。

 

弁護士 平本丈之亮

 

財産分与の支払いを確保するために不動産への抵当権設定を命じられた事例

 

 離婚に伴う財産分与の具体的方法については、当事者間で合意する場合は基本的にどのような方法でも自由ですが、裁判所によって財産分与を命令してもらうときは一定の金額の支払いか、不動産等の名義そのものを変更する内容となるのが一般的です。

 そして、このうち金銭の支払いについて相手の支払能力や支払意思に問題があったり、何らかの理由によって現時点ではなく将来の一定時点での支払いとせざるを得ないことが想定される場合には(将来の退職金など)、相手の支払いを確保するために相手名義の不動産に担保(抵当権)をつけたいというニーズがあります。

 そこで今回は、財産分与の内容として、金銭の支払いとともに相手名義の不動産への抵当権の設定を命じた裁判例を一つご紹介します。

 

東京地裁平成11年9月3日判決

 このケースでは、財産分与として一定額の清算金の支払いを命じるとともに、その清算金の履行の確保のため、併せて支払義務者名義の不動産に対する抵当権の設定を命じました。

 

「そして、原告が平成〇〇年〇月〇〇日に成立した家事調停に基づく婚姻費用の支払を一部怠っていること(第〇回口頭弁論調書参照)等を考慮し、右清算金の支払を担保するため、人事訴訟法一五条二項により、原告の取得する本件マンションに抵当権を設定し、その旨の登記手続を命じることとする。」

※この判決のいう人事訴訟法15条2項は旧法であり、現在は改正後の同法32条2項がこれに相当します。

 

 この判決が金銭の支払いに加えて抵当権の設定まで命じたのは、相手が過去に裁判所で取り決めた婚姻費用の支払いを一部怠っていたということが主な理由でしたが、そのような場合でなくても、財産分与の方法として、たとえば退職金をそれが実際に支給された将来の時点で分与することを命じたり、扶養的財産分与として、一定期間、定期的に金銭を支払うことを命じるようなときは、相手が支払いをしない場合に備えて担保権を設定する必要がある場合もあります。

 金銭給付に加えて相手の不動産に抵当権を設定するかどうかは、相手の財産状況や履行意思、金銭給付の内容(将来における給付や定期金給付など)といった事情を考慮して裁判所がその必要性を認めるかどうかにかかわると思われますが、そもそもこのような担保権設定は命じるべきではないとして反対する見解もあるようですので、求めれば必ず認められるというものではありません。

 もっとも、相手の支払意思などに具体的な問題があったり必要性が高いようなときは、その必要性を積極的に示して抵当権の設定を求めるのも一つの方法と思われます。

 

弁護士 平本丈之亮

2021年3月11日 | カテゴリー : 離婚, 財産分与 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

離婚後に相手の財産隠しが判明した場合、どうするか?

 

 離婚事件の中でシビアに争われることの多いものとして財産分与がありますが、その中で問題になることがあるのが相手方の財産隠しです。

 もしも離婚当時、相手方が夫婦共有財産に該当する財産を隠しており、そのことが後で発覚した場合、隠されていた方としてはどのような対処が可能か、というのが今回のテーマです。

 

財産分与の取り決めがなかった場合

 【離婚から2年以内】 

 まず、離婚時に財産分与の取り決めが何もなかった場合、離婚から2年以内であれば、新たに判明した財産を含めて財産分与の請求をすることが可能です。

 もっとも、どのような財産であっても財産分与の請求ができるというわけではなく、あくまで夫婦が共同で築き上げたと評価できるもの(夫婦共有財産)に限られますから、隠していた財産がいわゆる特有財産であった場合には財産分与として請求することはできません。

 

 【2年が経過してしまった場合】 

 この場合は財産分与の請求期間が経過してしまったため、改めて財産分与を請求するという方法は難しいところです。

 ただし、相手方が財産を隠していた場合には、本来財産分与として認められた可能性のある金額について、損害賠償を請求できる可能性があります(これを認めた裁判例として、浦和地裁川越支部平成元年9月13日判決があります)。

 

財産分与の取り決めをしていた場合

 以上に対して、財産分与の合意をしたが、その中に本来入るべき財産が入っていなかったという場合には、その財産が重要なものであり、その財産の存在を事前に知っていれば当初の合意はしなかったといえる事情があるときは、財産分与に関する合意が錯誤によって無効(2020年4月1日以降は取消)となる可能性があります(→「財産分与をやり直すことはできるか?」

 

 以上の通り、相手が財産隠しをしたとしても、後日そのことがわかった場合には救済されるケースもあります。

 もっとも、このようなケースは幸運にも隠し財産の存在が判明したからこそ可能だったものであり、そもそも見つからなければ請求することはできないという限界がありますので、実際に離婚するにあたっては、事前にどれだけ相手方の財産に関する情報を得られるかの方がより重要となります。

 

 弁護士 平本丈之亮

 

財産分与と不利益変更についての話

 

 財産分与は離婚の協議・調停・裁判のそれぞれの段階で問題となるものですが、今回は、協議や調停の段階で相手から提案されていた条件や、訴訟手続における第一審裁判所の判断が、その後の手続で拘束力があるのか、つまり、当初の提案内容や一審裁判所の判断内容が最低保証としての意味を持つのかどうかについてお話したいと思います。

 

協議→調停

 協議段階で相手から提案されていた財産分与の条件は、あくまで交渉段階における提案にすぎませんので、協議がまとまらず調停に移行したときに、協議時点よりも不利な条件を提案されることはあります。

 協議段階で提案した条件をあとで撤回することについては、協議では早期解決や円満解決を目指すという目的があり、そのような目的のために協議限りの提案として譲歩案を提示することは不合理ではないため、このような条件変更に問題はありません。 

 

調停→訴訟第一審

 調停後の訴訟の場面でも、調停段階で提案されていた条件よりも不利な条件に変化することはあり、これもあまり問題視されません(ただし、あまりに不合理な条件変更があった場合には裁判所の心証が悪化するなど、手続を進めるうえで不利益が生じることはあり得ると思います)。

 もちろん、裁判所は当事者が前に提案していた条件に拘束されませんので、裁判所は独自の立場から妥当な財産分与を定めることになります。

 

第一審→上訴審

 ここで問題となるのは、財産分与を命じた第一審判決について、相手側は不服はないものの、こちら側だけが不服があり不服申立をした場合に、第一審の裁判所の判断よりも不利な内容に変更される可能性はないのかどうかです。

 通常の民事訴訟では、こちらが不服を申し立て相手は不服を申し立てなかった場合、単にこちらの上訴の妥当性だけが判断されるため、たとえこちら側の主張が排斥されても一審の判断より不利になることはありません(これを不利益変更禁止の原則といいます)。

 しかし、財産分与についてはこの原則の適用がないとされており(最高裁平成2年7月20日判決)、こちら側だけが不服を申し立てた場合でも、裁判所が財産分与について原審よりも不利な内容に変更してしまうことがあり得ます。

 たとえば、離婚訴訟の第一審でこちらが200万円の財産分与を求めていたところ、判決では100万円の財産分与が認められ、その判決に対してこちらだけが不服があるとして控訴した場合、ケースによっては控訴審で100万円を切る財産分与の判断が下る可能性があります。

 相手が不服を申し立てたのであれば仕方ない面がありますが、そうでない場合にこちらからアクションを取った場合には結果的に藪蛇になってしまう危険性があることに注意が必要です。

 

 このように、財産分与について協議、調停、訴訟のそれぞれの段階で相手が示した条件や裁判所が下した判断は、後の手続で最低保証としての意味を持ちません。

 今の条件を受け入れるべきなのか、それともその次の段階に進むべきなのかについては難しい判断が求められることがありますので、迷われた場合には弁護士へのご相談をお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

2020年12月2日 | カテゴリー : 離婚, 財産分与 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

家庭内別居と財産分与の基準時

 

 財産分与で問題になるものとして、どの時点での財産を基準に財産分与を決めるのかということがあります。

 この点については原則として別居時に存在した財産が基準となりますが、ご相談を受けていると、実際に別居した時期よりも相当前から家庭内別居の状態だったので、家庭内別居が始まった時点の財産を基準にするべきではないかというご質問を受けることがあります。

 このような話は、別居時点を基準とするよりも家庭内別居開始の時点を基準とした方が分与すべき財産が少なくなるケースで生じるものであり、自分名義での財産を多く保有している側(多くの場合は夫)から呈される疑問ですが、このような主張がどこまで通るのかが今回のテーマです。

 

財産分与の基準時が原則として別居時とされる理由

 財産分与はそれまで夫婦が築き上げた財産を清算する制度であるため、財産形成に対する夫婦の経済的協力関係が終了した時点を基準に清算するのが公平です。

 そして、夫婦が別居に至った場合、通常、その時点で夫婦間の経済的協力関係が終了するため、財産分与の基準時は原則として別居時とされています。

 このように財産分与の基準時を別居時とする根拠は、通常は別居の時点で夫婦間の協力関係が終了するところに求められます。

 

家庭内別居の場合は?

 そうすると、逆に言えば、たとえ同居していても既に財産形成に対する経済的協力関係が終了したといえる場合であれば、その時点を基準時とすることも不可能ではないことになります。

 もっとも、曲がりなりにも同居を継続している場合に、夫婦間の経済的な協力関係が完全に終了していたと証明することは困難であるため、実際には家庭内別居であるとの主張によって基準時を別居以前に遡らせることは難しいところです。

 たとえば東京地裁平成17年6月24日判決は、「財産分与は,夫婦が協力して形成した財産を対象とするものであるから、本件においては、協力関係の終了したと考えるべき別居時点(平成15年○月○日)を一応の基準時として、財産分与の対象とすべきと考える。」「被告は,平成13年秋以降,原告において被告の食事を一切作らなくなった経緯を考慮し,同年○月の住宅ローンボーナス支払いの前の時点を基準時とすべき旨主張するが,平成15年○月○日までは同居しており、同居中は財産形成の協力関係は一応継続していたというべきであって,その間の財産の増減は、一切の事情として分与にあたり考慮すれば足りるというべきである。」と判断し、別居時点を基準時とする判断を下しています。

 

 以上のように、家庭内別居を理由に財産分与の基準時を別居以前に遡らせるのはなかなか難しいところですので、この点について争う場合には単に家庭内別居であったという抽象的な話ではなく、夫婦間の経済的協力関係がなくなっていたことを裏付ける事実を丹念に拾い上げて主張・立証していくことが必要となります。

 

弁護士 平本丈之亮

 

2020年10月28日 | カテゴリー : 離婚, 財産分与 | 投稿者 : 川上・吉江法律事務所

自衛官の若年定年退職者給付金と財産分与

 

 財産分与の対象となり得るものとして退職金がありますが、退職金に似たものとして財産分与の対象となるかどうかが問題になることがあるものとして、自衛官の退職後に支給される「若年定年退職者給付金」というものがあります。

 あまり一般的なお話ではありませんが、この点については参考になる文献等が乏しいため、自衛官の方と配偶者の方との間でこの点が問題となった場合の一助になるよう、今回は若年定年退職者給付金と財産分与をテーマに取り上げてみたいと思います。

 

若年定年退職者給付金とは?

 若年定年退職者給付金とは,自衛官が通常の公務員や私企業に勤める方に比べて大幅に若年で定年を迎えることから,早期退官による収入減少がもたらす隊員の生活不安を解消し,優秀な自衛官を確保するという政策的な目的に基づき給付されるものです(法的根拠は防衛省の職員の給与等に関する法律第27条の2ないし16)。

 

なにが問題か?

 このように若年定年退職者給付金は、いわゆる通常の退職金とは異なる趣旨・目的のもと政策的に支給されるものであるため財産分与の対象になるのか、というのが問題の所在です。

 

若年定年退職者給付金が財産分与の対象となるかどうかについて、確定的な見解はない

 この問題を考える上では、そもそも退職金がなぜ財産分与の対象になるかという点から考える必要があると思いますが、退職金が財産分与の対象となるのは、これが過去の労働の対価の後払いとしての性質を有し、そのような過去の労働部分について、他方配偶者には財産形成上の貢献が認められるからとされています。

 そうすると、若年定年退職者給付金が財産分与の対象となるかどうかは、この給付金が過去の労働の対価としての性質を有するかどうかという観点から検討していくことが有効なアプローチであると思われますが、この給付金には以下のような特徴があります。

 

 ・若年定年退職者給付金は、若年定年制から生じる他の労働者との収入の格差という不利益を補い、優秀な隊員を確保するという政策目的で給付されるものであること 

 

 ・退職後の収入水準によっては、返納や支給調整があること 

 

 上記のとおり、自衛官は若年定年制によって他の労働者との間で将来の収入格差が生じる可能性があるため、そのような経済的格差の発生を政策的に補うものであることや、若年定年退職者給付金が過去の対価としての性質を有しているならば退職後の収入水準と連動させる必要はなく過去の勤務実績に応じて支給すれば足りることからすると、個人的には当該給付金が過去の労働の対価としての性質を有するというのは違和感を覚えます。

 したがって、退職金が財産分与の対象となる根拠を過去の労働の対価であるという退職金の性質論に求め、若年定年退職者給付金がこれと同視できるかどうかという点を判断要素とするならば、財産分与の対象にはならないという結論につながっていくと考えます。

 

 他方で、若年定年退職者給付金は自衛官の地位にあったことに基づき支給されるものであり、過去の労働に対して配偶者が貢献した結果、定年時に給付金を得られる地位を得るに至ったと評価したうえで、そのような自衛官たる地位の維持に対する貢献があれば十分であると考えるならば、当該給付金が財産分与の対象になるとの解釈も成り立ち得るように思われます。

 もっとも、地位や資格については、その取得に配偶者が貢献した場合でもそれ自体を財産分与の対象とすることはできないという見解もあり(東京地裁平成19年3月28日判決・・・医師免許,認定医の資格及び博士号の各取得について寄与があり,これらの資格,地位を無形の財産と評価して分与対象とすべきとの主張について、分与対象財産はないとして排斥したもの)、自衛官という地位の維持について貢献があることを根拠に給付金が財産分与の対象となるとの結論にも疑問は残ります。

 

 当職が調べた限り、この論点について明確に判示した裁判例は見つけられなかったため、実際に裁判になった場合にどのような結論になるかは分かりかねますが、財産分与を求める側、求められた側のどちらであっても、若年定年退職者給付金の取り扱いは見解に違いが生じ得るところであり、簡単に結論が出ない可能性があるということを踏まえた上で協議等を進める必要があると思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

財産分与をやり直すことはできるか?

 

 離婚の際に財産分与の合意をしたが、いろいろな事情によってやり直したいというご相談を受けることがあります。

 では、このようなやり直しは可能なのか、というのが今回のテーマです。

 

当事者で合意してやり直すことは可能

 まず、当事者双方が合意によって財産分与をやり直すことは特段禁止されていませんので、この場合は可能です。

 ただし、すでに財産の移転がなされた後に改めて財産の移動があった場合、財産分与としての資産移動ではなく元夫婦の間における単なる贈与であると判断され、課税される可能性があり得ます(遺産分割協議のやり直しでも同じ問題があります。)ので、そのようなやり直しをする場合には事前に税理士に相談しておくのが無難です。

 

相手が約束を守らない場合に合意を解除できるか?

 それでは、いったん取り決めた財産分与の内容を相手が守らなかった場合、その財産分与の合意について債務不履行を理由に解除し、やり直すことはできるでしょうか?

 通常、財産分与の約束を守らない場合には訴訟や強制執行により解決を図ることになりますが、たとえば、早期にまとまった財産を受領することを優先し、本来もらえるはずだった内容よりも大幅に減額した内容で財産分与の合意をしたような場合には、合意自体をなかったことにしたいというニーズがあるため問題となります。

 この点については、調べた範囲ではこれを認める見解もあるものの、下級審ですが以下のように否定した裁判例がありましたので紹介します。

 

福島地裁昭和49年2月22日判決

「財産分与契約は、身分法上の法律行為であり、夫婦財産関係の清算と離婚後の扶養を目的とし、法律によって認められた財産分与請求権の内容を確定するものである。(中略)民法第五四一条による契約解除の制度は、終局的に自己の給付義務を免れることによって取引の自由を回復しようと図るものであるといえるが、このような要請は、財産分与には存しないものと考えられる。なぜならば、財産分与契約の解除を許すとしても、民法第七六八条によって認められた財産分与の義務そのものが消滅するものではなく、財産分与をやり直すことになるだけだからである。そして、複雑な財産分与のやり直しは望ましいことではなく、前記制度の趣旨に鑑み、財産分与の効力の安定を図ることが強く要請されるといわなければならない。このように考えると、財産分与契約につき民法第五四一条による解除は許されないものと解するのが相当である(なお、財産分与の意思表示に錯誤または詐欺・強迫等の瑕疵が存する場合は、別に検討を要するものと考える。)。」

 

合意に錯誤がある場合

 そのほか、財産分与の合意に重要な錯誤があり、その錯誤がなければそのような合意はしなかったといえる場合には、その合意は無効(2020年4月1日以降のものについては取消)の主張が可能であるため、財産分与のやり直しができる場合があります。

 

最高裁平成元年9月14日判決

「上告人において、右財産分与に伴う課税の点を重視していたのみならず、他に特段の事情かない限り、自己に課税されないことを当然の前提とし、かつ、その旨を黙示的には表示していたものといわざるをえない。そして、前示のとおり、本件財産分与契約の目的物は上告人らが居住していた本件建物を含む本件不動産の全部であり、これに伴う課税も極めて高額にのぼるから、上告人とすれば、前示の錯誤かなければ本件財産分与契約の意思表示をしなかったものと認める余地が十分にあるというべきである。」

 

※差戻審の東京高等裁判所平成3年3月14日判決では財産分与の錯誤無効が認められました。

 

 上記判決のほか、財産分与の対象財産である株式の価値について錯誤があったとして、裁判上の和解のうち解決金と清算条項を定めた部分を無効としたものもあります(東京地裁18年10月16日判決)。

 

本人の自由意思に基づかない場合

 たとえば、暴力や脅迫などによって相手を支配し、相手の自由意思を奪ったうえで財産分与の合意を結ばせたようなケースの場合は当然ながらそのような合意に効力はありません。

 このようなケースでは、過大な支払義務を課せられるパターンのほか、著しく低額ないしまったく分与をしない内容の合意をさせられるパターンがありますが、前者については以下のような裁判例があります。

 

仙台地裁平成21年2月26日判決

「(中略)本件財産分与合意書及び本件慰謝料等支払約束書は,いずれも,原告が,被告の不貞行為を責める態度に終始し,被告に対する暴力を繰り返し,被告を自己のコントロール下に置いた上で,被告をして原告の指図どおりの内容で本件財産分与合意書及び本件慰謝料等支払約束書を作成させたものであって,被告の自由意思に基づいて作成された文書ではないと認めるのが相当である。したがって,本件財産分与合意書及び本件慰謝料等支払約束書に表示された被告の意思表示は,意思表示としての効力を有さず,いずれも無効というべきである。」

 

合意の効力がないことが確定した時点で離婚から2年が経過している場合

 財産分与は離婚から2年以内に請求をする必要があり、これは途中でその期間を止めることができないもの(除斥期間)と考えられています。

 そうすると、財産分与の合意が裁判所で争われ、合意の効力が確定的に否定された時点ですでに2年が経過しているというケースもあり、その場合に改めて財産分与の請求ができるのか、ということが問題となります。

 この点について、先ほど紹介した最高裁判決の差戻審である東京高等裁判所平成3年3月14日判決では、民法161条を類推適用して、除斥期間が経過後も一定期間は財産分与の請求が可能であるとしています。

 

東京高等裁判所平成3年3月14日判決

「本件財産分与契約の錯誤無効が認められた場合には、当事者間で改めて財産分与について協議を行うことになるが、右協議が調わないとき又は協議をすることができないときに家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができるかどうかについては、右請求の除斥期間を離婚の時から二年と定める民法七六八条二項ただし書の規定との関係で疑問がないではない。しかし、右規定の趣旨と、本件事案の下において被控訴人に右協議に代わる処分の請求をあらかじめ行わせることは期待できないことを考えると、時効の停止に関する民法一六一条の規定を類推適用する余地があり、本件財産分与契約の錯誤無効が確定した後に行う右協議に代わる処分の請求が前記除斥期間の定めによって妨げられるものとは解されない。」

 

 なお、民法161条は改正によって猶予される期間が2週間から3か月に変更されており、この東京高裁の見解に従った場合、改正民法施行(2020年4月1日)後に合意したものについては、効力否定から3か月間は時効の完成が猶予されると思われます。

 他方、改正民法が施行される前に合意し、施行後に合意が否定された場合にどちらの期間が適用されるのかは判然としませんので、そのようなレアケースの場合には念のため2週間以内に裁判所に対して財産分与の請求を行っておくのが無難だと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

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別居時に持ち出した夫婦共有財産と財産分与

 

 離婚を考えて当事者の一方が別居に踏み切った場合、別居時に相手方配偶者の財産を無断で持ち出したり預金を引き出したりしてトラブルになる事例があります。

 そのような行動は、自分や子どもの当面の生活費の確保のためにやむを得ず行われることもありますが、持ち出し行為があった場合、相手の感情を害するほか、持ち出し行為自体が違法であるとして相手から訴訟を起こされることもあります。

 そこで、今回は、このような持ち出し行為が法的にどのように扱われるのかについて解説したいと思います。

 

持出額について直接返還等を請求することは難しい

 夫婦が共同で築き上げた共有財産の清算は、本来、財産分与の手続きで解決することが予定されているため、無断で財産を持ち出したことを理由に返還や損害賠償を請求しても、その請求は原則として認められないと考えられています。

 

 では、例外的に持ち出した財産について直接返還等が認められる場合があるのかというと、裁判例の中には、持ち出した財産が財産分与として認められる可能性のある対象や範囲を著しく逸脱した場合、また、他方を困惑させるなど不当な目的で持ち出した場合には、例外的に持ち出し行為が違法になるとするものもあります(東京地裁平成4年8月26日判決)。

 

 他方で、近時の裁判例としてこれを否定するものもあり(東京地裁平成25年4月23日判決)、持ち出し行為が例外的にでも違法となる余地があるのかどうかについては裁判所でも見解が分かれているところです。

 

東京地裁平成25年4月23日判決

「原告は,夫婦共有財産にあたる預金についても,原告と被告間の婚姻関係が破綻し,被告が払い戻した預金が将来財産分与として考えられる対象範囲を著しく逸脱しており,被告が原告を困惑させるなど不当な目的で払戻しを行ったという特段の事情がある場合には,不法行為に基づく損害賠償請求をすることができると主張する。

 しかしながら,原告主張の前記事情が存在する場合であっても,原告が夫婦共有財産について具体的な権利を有する状態に至らないことには変わりがなく,原告主張の前記事情は,離婚に伴う財産分与の範囲を決定する際に考慮すべき事情に過ぎないというべきであるから,原告の主張は採用することはできない。」

 

相手の口座から婚姻費用として定期的にお金を引き出していた場合

 ところで、別居後の婚姻費用についてはいわゆる算定表が広く用いられていますが、共有財産に該当する相手の預金口座から婚姻費用名目で定期的にお金をおろして使用していたところ、引出額が算定表に基づいて計算した額を超えていたという場合に、その差額分は不当利得として返還すべきである、という主張がなされることがあります。

 

 このような引き出しに関する裁判例としては、差額分の不当利得返還請求を否定したものがあります(東京地裁平成27年12月25日判決)。

 ただし、この裁判例は、あくまで夫婦共有財産に該当する預金からの出金については不当利得に該当しないと判断したものですから、仮に、出金元の預金が明らかに一方の特有財産(相続など)だったような場合だと、また違った結論になる可能性がある点に注意が必要です。

 また、不当利得として直接返還請求できないということと財産分与の問題は全く別の問題ですので、財産分与の場面において差額分が考慮され、その分、最終的な分与額が減少する可能性はあり得ると思います。

 

東京地裁平成27年12月25日判決

「夫婦共有財産について,当事者間で協議がされるなど,具体的な権利内容が形成されない限り,相手方に主張することのできる具体的な権利を有しているものではないと解すべきであるから,被告が,平成22年11月8日から平成23年6月末までの間に,いわゆる算定表にしたがって計算した額の婚姻費用の原告負担分を超える額を本件預金口座から払い戻していたとしても,その行為によって,原告に具体的な損失が生じたということはできない。」

 

持出額を使っていた場合の財産分与の考え方

 それでは、別居時に持ち出した金額をその後に使用し、財産分与の協議等をしている時点では額が目減りしていた場合、財産分与の場面ではどのように扱われるのでしょうか。 

 

 原則:別居した時点の金額をもとに財産分与を決める 

 清算的財産分与の基準時は原則として別居時であるため、別居後に一方が夫婦共有財産を使用したとしても、基本的には別居時の金額を基準に財産分与額を決定します(=目減りした金額は持ち戻して計算する)。

 

 例外:適正な範囲で婚姻費用に使用した場合 

 もっとも、別居から財産分与までの間の使途が婚姻費用(生活費)であって、その額も適正な範囲であった場合、例外的に、財産分与の対象額からその使用分が差し引かれることがあります(=使用金額については清算を要しない)。

 なぜなら、離婚が成立するまで夫婦は婚姻費用を負担する義務がありますので、婚姻費用を請求できる側が何らかの理由により相手から支払いを受けられない場合、夫婦共有財産から婚姻費用として適正額を支出したとしても、本来、その分は夫婦共有財産から負担すべきものであった以上、財産分与の場面において清算を要しないとしても不当ではないからです。

 

 たとえば、別居時の夫名義の全財産が1000万円で、その全額が夫婦共有財産だった場合において、自己名義の資産のない妻の持ち出し額が600万円、妻が財産分与までにそこから200万円を婚姻費用として適正に使ったという場合には、財産分与の対象となるのは夫が保有している400万円と、妻の持ち出し額600万円から適正支出額200万円を差し引いた400万円の合計800万円となります。

 そして、夫婦間における財産形成に対する寄与割合が平等(50:50)だとすれば、財産分与額はそれぞれ400万円(=800万円÷2)となるため、夫婦間ではそれ以上財産分与として互いに金銭をやりとりする必要はないことになります。

 

 以上のとおり、別居時の持ち出し行為についてはそれ自体が違法と判断される可能性は高くはないものの、持ち出しがなされるとその後の協議等が複雑になりますし、感情面も相まって難航するおそれがあるため慎重な判断が必要となります。

 別居をする際には短期間に様々な決断を迫られることがありますが、初動を間違えると後の離婚手続に大きく影響しかねませんので、別居するかどうか迷っている場合にはできるだけ事前に専門家へ相談することをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

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離婚後の生活保障を求めることはできるか?(扶養的財産分与)

 

 離婚のご相談をお受けしていると、離婚後に元配偶者から生活費をもらえるのか、というお話を受けることがあります。

 

 特に幼いお子さんをお持ちの専業主婦の方や高齢の方など、離婚後に働くことが容易ではない方からそのようなお話をよくいただきますが、では、このような請求は認められるのか、というのが今回のテーマです。

 

原則は自立

 夫婦は離婚することにより互いの扶養義務が消滅するため、離婚後も婚姻中と同じような生活費の負担を求めることはできないのが原則です(子どもの養育費は別問題です)。

 

例外:扶養的財産分与

 もっとも、先ほど述べたように、幼い子どもの面倒を見る必要があり仕事に就くことが容易ではない、高齢のため働けず年金も少ない、というように、離婚によって当事者の一方の生活が成り立たなくなる場合にこのような原則を貫くのは不公平なことがあります。

 

 たとえば、夫婦共有財産として清算対象となる財産はないが、元配偶者が相続によって多額の資産(=特有財産)を持っていたり収入が高いような場合、離婚によって他方配偶者が生活困窮に陥ることはバランスを欠く場合があります。

 

 そこで、離婚に伴い自立できないような経済状況に陥ることになる配偶者に対して、一定の範囲で将来の扶養のための財産分与を認めるという考え方があり、これを「扶養的財産分与」と呼んでいます。

 

 そもそも財産分与には、夫婦共同で築き上げた財産を清算する清算的財産分与、精神的苦痛に対する慰謝料的な性質をもつ慰謝料的財産分与がありますが、扶養的財産分与はこれらとは別のものと考えられています。

 

どのような場合に認められるか

 先ほど述べたように、離婚後は元夫婦間ではお互いの扶養義務はないため、原則として扶養的財産分与は認められず、相手方に十分な扶養能力(資力)があり、かつ、請求する側が自立して生活することができない事情がある場合(扶養の必要性)に限って認められると解されています(名古屋高裁平成18年5月31日決定参照)。

 

 もっとも、どのような場合であれば扶養的財産分与が認められるのかという具体的な基準はなく、実務上は、以下のような各要素を総合的に考慮して相手方の資力や扶養の必要性を判断し、最終的に分与を認めるのが公平に叶うかどうか、認めるとしてその額や分与の方法はどうするか、ということを決めているのが実情です。

 

 【扶養的財産分与の考慮要素の例】 

 以下、扶養的財産分与が認められる方向に働く事情の一例を紹介します(認めない方向に働く事情は基本的にその反対となります)。

 

 1 請求者の財産状況 

  めぼしい財産がない

 

  離婚の際、十分な清算的財産分与や慰謝料などをもらえる見込みがない

 

 2 請求者の収入の有無 

  収入がない又は収入が低い

 

 3 請求者が無職の場合、就労可能性 

  就労経験がない又は乏しい

 

  高齢である

 

  就職に役立つ資格をもっていない

 

  持病やケガの後遺症などで働くことが難しい

 

  幼い子どもがいるため、働くことが難しい

 

 4 請求者の住居を確保する必要性 

  子どもが小さく環境を変えることが困難

 

  高齢であり長年その家に住んでいたため環境を変えることが困難

 

 5 請求者の家族関係 

  財産分与を請求した時点で再婚(内縁含む)していない

 

 6 双方の有責性の有無・程度 

  不倫や暴力など相手方の問題による離婚である

 

 7 相手方の財産状況 

  多額の固有財産(相続など)がある

 

 8 相手方の収入 

  安定した収入がある

 

 9 相手方の家族関係 

  高齢の親や障がいのある家族を扶養する必要がない

 

どのような内容・方法で認められるのか

 扶養的財産分与の方法についても、先ほど述べたような色々な事情から裁判所が裁量で判断することになりますが、わかりやすいやり方として、毎月一定額の生活費の支払いという形を取ることがあります。

 

 具体的な金額について絶対的な基準はありませんが一つの目安として離婚前の婚姻費用額が指標とされることがあるようです。

 

 支払いの期間についても、結局のところは元配偶者が自立して生活できるようになるまでの期間であり、この点は夫婦の事情によって千差万別のため基準はありませんが、離婚する以上無制限に認められるわけではなく(論者によってまちまちですが)概ね数年程度が限界と考えられているようです(ちなみに過去の裁判例では、支払期間を3年間としたものがあります(横浜地裁川崎支部昭和43年7月22日判決))。

 

 以上のような金銭給付以外でも、たとえば、相手方所有の不動産に居住権を設定する、不動産の所有権を移転させる、清算的財産分与として支払いを命じる額に一定額を加算するなどという内容が認められることもあります。

 

 扶養的財産分与は例外的なものであることや考慮要素が複雑であることから、認められるかどうかの判断が難しい分野ですので、請求をお考えの場合には一度弁護士へご相談いただくことをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮