生活保護と自己破産について~自己破産⑨~

 

 失業、病気等により収入が減少し、借金の支払いはおろか、当面の生活すら困難となる場合がありますが、このような状態に陥った場合、生活の維持と借金の整理という2つの大きな問題に挟まれ、どうやって解決したらいいか途方に暮れてしまう方もいらっしゃいます。

 

 今回は、そのような状況に陥った場合に取り得る選択肢の一つとして、生活保護と自己破産の関係についてお話してみたいと思います。

 

生活保護を受けてから自己破産をすることはできる

 そもそも、生活保護を受けている方が自己破産できるのか、と疑問に思われる方もいらっしゃいますが、自己破産をすることは問題なく、むしろ、生活保護を受給する方に支払えないほどの借金がある場合には、保護費を支払いに充てることは望ましくないため、自己破産が適当です。

 

自己破産をした人も生活保護を受けられる

 逆に、自己破産した人は生活保護すら受けられないのではないかと言われる方もいますが、これも誤解であり、自己破産をしたから生活保護を受けられないということはありません。

 

順番は生活保護→自己破産の方が良い

 では、生活保護と自己破産が両立するとして、どちらを先にすれば良いのかというと、この点は生活保護を先に受給した方が良いと思います。

 

 というのも、生活保護を受給している場合、法テラスを利用して弁護士に自己破産の手続を依頼する際、法テラスが立て替える弁護士費用と申立費用実費の返還が事件終了まで猶予され、さらに、法テラスに免除申請をすることでこれらの支払いをしなくてもよくなる場合があるためです(ただし、必ず免除になるわけではなく、最終的には法テラスの判断になります)。

 

 それ以外にも、何らかの事情(免責不許可事由がある、売却できない不動産の共有持分があるなど)によって破産管財人の選任が必要になった場合、20万円を上限に法テラスが破産管財人の費用も立て替えてくれ、これも猶予や免除の対象になりうるというのも大きなメリットです。

 

 このように、生活保護を受給している状態で自己破産の手続を行うことにはメリットがありますので、債務整理とは別に生活再建にも同時に取り組まなければならない状態となった場合には、今回ご紹介した方法を前向きに検討していただきたいと思います。

 

借金問題で生活保護や自己破産を考えた場合、どこに相談したらよいか?

 では、生活が成り立たないため生活保護を考えたい、また、自己破産も検討しているという場合、どこに相談したらよいでしょうか?

 

 この点については、住居確保給付金や生活保護等の各種制度への繋ぎ、再就職に向けた就労支援など、生活上の困りごとについて幅広く相談できる窓口として、各地に自立相談支援機関というものがあります。

 

 盛岡市であれば、盛岡市くらしの相談支援室がこの自立相談支援機関となっていますが、具体的にご自分の地域でどこが相談窓口になっているかは各自治体のホームページに記載されていますので、相談を検討するときには確認していただければと思います。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

免責不許可になる割合は?~自己破産⑧~

 

 債務整理を考え、自己破産を決断したときに次に気になるのは、自分の借金が本当に免除されるかどうかだと思います。

 

 以前のコラム(「自己破産できない場合とは?~自己破産⑤・免責不許可事由2~)でもお話ししたように、自己破産しても借金が免除されない場合はありますが、では、実際上、免責が不許可になるのはどれくらいの割合なのでしょうか?

 

 この点について、日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会では、3年に一度、破産事件についての調査を行っています。

 

不許可となったケースはわずか

 

 直近の調査(2017年)は2016年6月1日から11月30日までの間における各地の破産記録から無作為に抽出した1238件についてのものであり、1年間のすべての破産記録を調査したわけではありませんが、これによると、免責不許可となったのは7件(0.57%)だったそうです(取り下げや死亡による終了などの割合も除くと,許可率は96.77%)。

 

 なお、過去の調査結果は以下の通りであり、これをみると、調査対象が全ての事件ではないことを考慮しても、多くの事件で免責が許可されていると言って良い状況と思われます。

 

 

 2014年調査 0%

 

 2011年調査 0.08%

 

 2008年調査 0.17%

 

 2005年調査 0.26%

 

 

 このように、免責については広く許可が出ている状況ですが、他方で、裁判所から免責について否定的な見解を示されて申立の取り下げを促された結果、個人再生に方針を変更したとか、安全策をとって最初から個人再生の方向で進めたなど、免責不許可という事態が表面化しなかっただけというケースもそれなりにあるのではないかと思っています

 

 免責不許可となる可能性がどの程度あるのかはその人自身の抱えている問題によって大きく変わり、この調査結果だけでは結論を出せませんので、ご自分で破産を申し立てることを検討している方でも、気になる方は一度弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

自己破産しても手元に残せるものとは?~自己破産⑦・自由財産~

 

 「自己破産をすると、全ての財産を処分しなければならない」。

 

 自己破産というと、このように考える方が大半だと思います。

 

 しかし、実際にはこのようなイメージは不正確なものであり、自己破産をしても手元に残すことができるもの(=「自由財産」といいます)はそれなりにあります。

 

 今回は、自己破産をしても手元に残せるものは何か、というテーマについてお話していきます。

 

現金

 破産手続では、99万円までの現金は自由財産として扱われますので、99万円までは手元に残すことができます(破産法第34条第3項1号、民事執行法第131条3号)。

 

 ただし、預金を破産申立直前に下ろして現金にした場合や破産申立直前に保険を解約して現金にしたような場合、現金としてはカウントされず元の預金や保険として扱われますので、直前に預金を下ろしたり保険を解約して99万円にしても意味はありません。

 

 

預金

 合計で20万円までであれば自由財産として扱われます。

 

家財道具

 自己破産をすると、家具や布団、テレビや冷蔵庫など、家財道具を一切合切処分しなければならないのではないかと思われる方がいらっしゃいますが、実は家財道具の多くは差押禁止財産(=自由財産)とされていますので、個人の破産手続の中で処分されることはほぼありません(少なくとも、当職は個人の破産事件で家財道具を処分されたという経験はありません)。

 

 ただし、高価な貴金属、最新型で高額な家電製品など、客観的に見て財産価値のあるものについては、その評価額次第で処分されてしまうことはあり得ます。

 

不動産

 不動産に関しては、基本的に処分されてしまうことを覚悟しなければなりません。

 

 ただし、ほとんど価値のない農地、山林や雑種地など売却できる可能性がないものは、破産管財人の判断で処分されない場合もあります(これを財団からの放棄といい、放棄された不動産は結果として処分されないまま残ります)。

 

 また、そのようなケースではない場合でも、破産者の親族が資金を用意して、不動産の評価相当額や住宅ローンの残額を支払うことで不動産の処分を避けられる例もあります。 

 

 このように、不動産については例外的に残せる場合もいくつかあるのですが、通常、不動産は高額であり資金を用意するのも簡単ではないため、宅地や建物などについては自己破産すると手放さなくてはならないのが一般的といえます。

 

 そのため、住宅ローンを組んでいる方である程度安定した収入のある方については、まずは自己破産ではなく「個人再生」(→「自宅を残して負債を整理する方法はあるか?~個人再生~」)を検討することになります。

 

 

(軽)自動車

 自動車関係については、ローンが残っているかどうか、初年度登録から何年経過しているか、普通自動車か軽自動車か、国産か外国車かなどによって自由財産となるかどうかの結論が変わってきます。

 

 この点は、別のコラム(→「自己破産すると、自動車はなくなるか?~自己破産①~」で詳しく説明していますので、興味のある方はそちらをご覧下さい。

 

退職金・保険関係

 退職金や保険については、概ね20万円を超える価値があるかどうか、あるいは退職金の性質によって結論が変わります。この点は資産価値をどのように評価するのかが絡むところですが、以下のコラムで詳しく説明していますので、そちらをご覧下さい。

 

 

自由財産にあたらない財産を残すには?~自由財産の拡張~

 このように、自己破産の手続では手元に残せるものと残すことが難しいものがありますが、では、そのままでは手元に残すことができないような資産(20万円を超えるような資産がある場合)はすべて処分されてしまうのでしょうか?

 

 実は、このような場合には「自由財産の拡張」という制度を利用し一定の限度で資産を手元に残すことが可能となる場合があります。

 

 自由財産の拡張は、原則として、現金を含めて総額99万円の範囲内であれば比較的広く認められています。

 

 この制度を利用した場合、たとえば、現金が20万円、預金が30万円、保険の解約返戻金が50万円、というケースでは、資産の合計が100万円になりますので、99万円を超えた1万円を破産管財人に納め、残りの99万円分は手元に残すことが可能になります。

 

 また、いくつかの財産のうちどの財産を残すか選択することも基本的には可能ですので、たとえば現金が19万円、預金が30万円、保険1の解約返戻金が50万円、保険2の解約返戻金が50万円というようなケースでは、保険1と保険2のどちらかを選んで残すということも可能です。

 

 なお、自由財産の拡張の対象にならない財産(これを拡張不相当の財産といいいます)もあり、典型的なところでいうと、①不動産、②破産手続開始後に破産管財人の調査によって発見された隠匿財産などがこれにあたります。

 

例外的に99万円を超える拡張が認められる場合もある

 さきほど述べたように、自由財産の拡張が認められるのは原則として99万円の範囲内です。

 

 しかし、例外的に99万円を超えて拡張が認められるケースもあります。

 

 たとえば、破産者が脳梗塞などの病気で働くことができず、今後、継続的に高額の医療費がかかり、他の財産ではそのような医療費をまかなうことができないようなケースが典型例です。

 

 当職自身も、申立代理人、破産管財人の双方の立場で99万円を超える拡張が問題になったケースを何度も担当したことがありますが、ご本人が病気のケースだと、金額次第ではあるものの裁判所も比較的拡張を認める傾向にあると思われます。

 

 当職の経験上、これまでに99万円を超える拡張が認められたケースとしては、入院給付金や生命保険の解約返戻金などがあります。

 

 また、財産の原資が給与や年金などその全部ないし一部が本来は差押禁止財産であった場合には、たまたま破産申立の直前で振り込まれて預金になってしまい99万円を超えたようなケースでも、本来は差押禁止財産だったことを考慮して超過分の拡張が認められることがあります。

 

 以上ご説明したとおり、自己破産をしても一定の範囲で財産を残せる場合があり、【自己破産=すべての資産の没収】ではないことがお分かりいただいたと思います。

 

 当職のところに債務整理のご相談にいらっしゃった方の中には、保険などの資産を全て処分して支払いに回し、まったく財産がなくなった段階で初めてご相談に訪れる方もおり、タイミング次第は財産を残せたかもしれないという残念なケースもあります。

 

 このように、自己破産するタイミングによっては残すことができる資産が大きく変わることがありますが、では適切なタイミングはいつなのかという点をご本人が判断するのは難しいところですので、自己破産を含め債務整理を検討されている場合には、早い段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士 平本丈之亮

 

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「特別定額給付金・子育て世帯臨時特別給付金と差押・自己破産」

 

 

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破産管財人の役割とは?~自己破産⑥・破産管財人~

 

 これまでの自己破産のコラムの中で、何度か「破産管財人」(はさんかんざいにん)というキーワードが出てきました。

 

 破産管財人は破産の手続の中で重要な役割を果たしていますが、これから自己破産を申し立てようと考えている人や破産手続中の人にとっては、破産管財人というものが一体どういう人で、どのようなことをするのか分からないという方もいらっしゃるかと思います。

 

 当職もこれまで数多くの破産管財人を務めてきましたが、今回はその経験を踏まえ、主に個人破産を前提に、破産管財人がどういうことをするのかについてQ&A方式でお話ししたいと思います。

 

Q1 破産管財人には、誰が選ばれるのか?

 弁護士が選任されます。

 

Q2 どういう場合に選ばれるのか?

 ざっくり言うと、①財産がある場合、②借り入れの理由に問題がある場合です。

 

 どの程度の財産や問題があれば破産管財人が選ばれるかはケースバイケースとしか言えませんが、財産について言えば、20万円を超える評価の財産があるかどうかが一応の目安にはなります。

 

Q3 破産管財人がつく場合とつかない場合で、費用は違うのか?

 破産管財人がつかない事案(同時廃止)では、郵便代を含め申立の費用は概ね2万円弱程度ですみますが、破産管財人がつく事案では規模に応じて追加の予納金が必要になります。

 

 当職の経験では、非事業者の個人であれば10~30万円、個人の事業者では20~50万円程度ですが、資産や負債の規模が大きくなれば、それに従って予納金も高額になります。

 

 追加で納める予納金は、破産手続を進めていく上で必要な各種費用や管財人の報酬にあてられます。

 

Q4 破産管財人は具体的にはどういうことをするのか?

 大きく分けて、①資産の調査・管理・回収・債権者への配当と、個人の破産事件の場合であれば、①に加えて、②自由財産拡張の申立・上申に対する意見を述べること、③免責不許可事由の有無を調査して裁判所に報告することです。

 

Q5 破産管財人が選ばれると、普段の生活にはどういう影響があるか?

 大きいところでいえば、破産者宛の郵便物が破産管財人宛に転送されます。

 

 これは破産者の資産調査の一環として行われるものですが、転送された郵便物から隠しごとがばれることもあります。

 

 また、破産に至った理由や経緯について説明するため、破産管財人の事務所に出向いていただく必要があります。

 

Q6 破産管財人はどのような調査ができるのか?

 先ほど述べた転送郵便物の調査のほか、破産管財人は、金融機関に対して口座の有無を確認したり保険会社に保険の有無を確認するなど、必要に応じて関係各所に対する調査が可能です。

 

 このように、たとえ口座や保険などを隠していても管財人がその気になって調査すればすぐにばれてしまいますし、ばれた場合には資産隠しと評価され免責が不許可になるリスクがありますので注意が必要です。

 

Q7 破産管財人に対する調査を拒否したらどうなるか?

 破産者には破産管財人に対する協力義務・説明義務がありますので、これを拒否したり虚偽の説明をすると犯罪になります(破産法268条1項、同40条第1項1号)。

 

 また、当然ながら、誠実な債務者ではないとして、破産管財人は裁判所に免責は許可すべきでないという意見を出すことになります。

 

Q8 自由財産の拡張について、破産管財人は何をするのか?

 破産手続では、一定の範囲の財産(概ね99万円以下の範囲)を手元に残せる場合があるのですが(「自己破産すると、保険は解約しなければならないのか?~自己破産②~」)、これを自由財産の拡張といいます。

 

 自由財産の拡張については、破産者から財産の一部を残して欲しいという申立・上申があった場合に、破産管財人がその適否を調査して裁判所に意見を述べ、裁判所が判断するという流れになっています。

 

 このように最終的な判断は裁判所が行うのですが、実際には破産管財人の意見が重視される傾向がありますので、どうしても一部の財産を残したいというときは、その財産の必要性を破産管財人に理解してもらえるかどうかが鍵となります。

 

 

 いかがだったでしょうか?

 

 このように、破産の手続では破産管財人の役割がとても大きいということをご理解いただけるかと思います。

 

 これから自己破産を考えている方にとっては、破産管財人がつく可能性があるかどうかで進め方や費用が大きく変わりますので、財産や借り入れの理由などで問題がありそうだという場合には、積極的に弁護士に相談することをお勧めします。

 

弁護士 平本 丈之亮

 

自己破産できない場合とは?~自己破産⑤・免責不許可事由2~

 

 以前のコラムで、自己破産を認めない理由(=「免責不許可事由」(めんせきふきょかじゆう)」のひとつであるギャンブル、浪費についてお話ししました(「ギャンブルなど浪費がある場合、自己破産できないのか?~自己破産④・免責不許可事由~」)。

 

 それでは、ギャンブルや浪費以外で、自己破産が認められない場合としてはどのようなものがあるでしょうか?

 

 今回は、免責不許可事由全般について説明していきます。

 

代表的な免責不許可事由

 免責不許可事由については、「破産法」という法律で定められているのですが、その中でも代表的なものは以下のとおりです。

 

 ・債権者に害を与える目的で財産を隠したり、債権者に不利益に処分したり、あるいはその価値を減少させた場合 

 

 ・現金を得る目的で、クレジットで買い物をし、品物を安い値段で売り払ったり質入れしたりしたような場合 

 

 ・浪費・ギャンブルなどによって借金を増やしたような場合 

 

 ・既に借金を返すことができない状態にあるにもかかわらず、そうではないかのように債権者を信用させ、お金を借りた場合 

 

 ・自分の財産について「陳述書」や「財産目録」にうその事実を書いたり、嘘の事実を書いた「債権者一覧表」を提出したり、自分の財産について裁判所に嘘を述べた場合 

 

 ・過去7年以内に免責を受けたことがある場合 

 

 ・破産法で課せられた一定の義務(裁判所に対する説明義務、重要財産開示義務など)に違反した場合 

 

 ・「破産管財人」(=破産者の財産をお金に換えて債権者に分配したり、免責不許可事由がないかを調査したりするため、裁判所が選任する弁護士)の職務を妨害したこと 

 

免責不許可事由があると、絶対に免責は認められないのか?

 このように、法律では借金の免除をみとめてもらえない理由が列挙されていますが、これに該当する事情があるからといって、必ずしも免除が認められないわけではありません。

 

 破産法第252条第2項では、免責不許可事由に該当する場合であっても、「裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」と定めており、事情次第では借金の免除を認めても良いとなっています。

 

 この制度を「裁量免責」といい、形式的には免責不許可事由があるケースでも、裁判所のいわば温情によって立ち直りの機会を与えていただくという制度です。

 

 先ほど述べた7年以内の2度目の自己破産の場合も、この裁量免責を求めていくことになりますが、そのためには、破産に至った経緯や、今後の生活の見通し、破産者の反省状況などについて積極的に資料を提出する必要があり、どのような資料をどれだけ提出できるかが勝負の分かれ目になってきます。

 

 当職が過去に取り扱った事案では、7年以内のケースではないものの、ギャンブルが原因で2度目の自己破産を検討したケースにおいて、ギャンブル依存症が疑われる方にギャンブル依存症の立ち直りのためのカウンセリングに通っていただき、カウンセリングの資料を裁判所に提出して、将来同じ間違いを犯さないように積極的に努力していることをアピールし、裁量免責をいただいた例があります。

 

 なお、当職の印象ですが、免責不許可事由としてギャンブルや浪費などの問題がある場合でも、そのことを正直に裁判所に申告すれば裁量免責は認めてもらいやすいですが、裁判所に対して提出する書類に嘘を書いたり、嘘をついたことが後で判明した場合には非常に厳しく見られる気がします。

 

 過去には、本人が一部の通帳の存在を隠し、破産手続中の破産管財人の調査に対しても申告漏れはないと説明していたにもかかわらず、その後の追加調査で隠し口座が発見された例があり、代理人として大変苦い思いをした経験があります。

 

 免責制度は誠実な債務者を救済する制度ですから当然のことですが、自分に不利な事情や隠したいことがあるからといって隠すことは、破産手続を進める上ではデメリットしかないと考えておいた方が良いと思います。

 

自己破産が認められない場合の解決方法は?

 では、免責不許可事由に該当し、どうがんばっても借金の免除が認められなさそうだというケースはどうしたら良いでしょうか?

 

 このような場合には、債権者と長期の分割払いについて交渉する「任意整理」にチャレンジする場合や、借金の一部を免除してもらい、残額を3~5年の長期分割で支払うという法的整理手続である「個人再生」を検討することになります。

 

 また、岩手県では、債務整理資金の貸付を専門に行う生協組織があるため、本人にある程度の返済能力があり、かつ親族の協力が得られるケースでは、そういった機関を紹介する場合もあります。

 

 いずれにせよ、自己破産を認めてもらえるかどうか自分では判断が難しいという場合には、弁護士や最寄りの消費生活センターなどに債務整理の方法をご相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

ギャンブルなど浪費がある場合、自己破産できないのか?~自己破産④・免責不許可事由~

 

 債務整理のご相談の中で、借金の原因にギャンブルやショッピング(最近だとスマホの課金)などの浪費があるので、自己破産できないのではないか、という質問を受けることがあります。

 

 確かに、ギャンブルなどの浪費は、自己破産による借金の免責が認められない理由(「免責不許可事由」(めんせきふきょかじゆう))の中でも代表的なケースです。

 

・ギャンブルがあっても「裁量免責」になるケースがほとんど

 

 もっとも、ひとくちにギャンブルや浪費といっても程度の問題であり、たとえギャンブルなどが借金の一因となっている方でも自己破産による免責が認められる場合はあります(これを「裁量免責」といいます。)し、当事務所の弁護士が担当した事案でも、ほとんどの方が免責を認めてもらっています。

 

 ただし、ギャンブルなどが原因となって自己破産をする場合には、裁判所が選任する「破産管財人」(はさんかんざいにん)と呼ばれる弁護士による調査が必要となり、裁判所に納めなければならない費用が上がってしまうことがありますので、その点はあらかじめ覚悟が必要です。

 

・あまりにも浪費がひどい場合は、「個人再生」による債務整理を考える

 

 また、あまりにもギャンブルや浪費がひどすぎて自己破産による免除が認められない可能性が高いという方については、自己破産ではなく、借金を一部免除してもらい、残りを3年程度の分割で支払っていく「個人再生」によって解決するケースもあります。

 

 個人再生では、負債の理由に浪費があっても支払能力があれば基本的には受け付けてもらえますので、ご本人の意向や借入の理由、返済能力次第ではそちらをお勧めすることもあります。

 

 いずれにせよ、ギャンブルや浪費があったとしても自己破産を認めてもらえることは十分にありますし、仮に自己破産ができなくても個人再生など他の債務整理の方法を活用して整理ができることがありますので、諦めることなく、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

弁護士 平本丈之亮

 

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自己破産すると、退職金はどうなるか?~自己破産③~

 

 会社員や公務員など退職金のある方が自己破産する場合、退職金はどのように扱われるでしょうか?

 

 これは、債務整理の方法として自己破産を検討する場合に問題となることの多いテーマの一つです。

 

 そこで、今回は自己破産と退職金をテーマにお話ししたいと思います。

 

既に退職金を受け取ってしまっている場合

 この場合、支給額全額が自己破産による処分の対象となります。

 

 ただし、受け取った金額が20万円以下であれば、そもそも処分されません。

 

 また、20万円を越えてしまう場合でも、他の資産と合算して、合計で99万円までであれば「自由財産拡張」(じゆうざいさんかくちょう)という制度を利用し、手元に残せる場合があります(なお、病気で高額の医療費がかかるなど特別な事情があれば、99万円を超えてさらに手元に残せる場合もあります)。

 

退職予定がなく、定年が何年も先の場合

 このような場合は、退職した場合に支給される金額の8分の1が自己破産による処分の対象となります。

 

 たとえば、自己破産した時点で退職したら400万円の退職金が支給される見込みの場合には、その8分の1である50万円が処分されます。

 

 もっとも、退職金が自己破産で処分されるといっても、実際に退職することを求められることはなく、資産としてカウントした金額(上の例では50万円)を、給料などを使って裁判所に納める形となることが通常です。

 

 これに対して、支給見込額が160万円以下であれば、その8分の1は20万円以下となりますので、自己破産による処分対象にはならないことになります。

 

 なお、8分の1が20万円を超える場合でも、他の資産と合算して99万円までは手元に残せる場合があるというのは、上の事例の場合と同じです。

 

退職していないが、退職日が決まっている等支給が具体化している場合

 この場合には、退職金の4分の1が自己破産による処分の対象です。

 

 たとえば、近々400万円の退職金が支給される見込みの場合には、その4分の1である100万円が処分の対象となります。

 

 これに対して、支給見込額が80万円以下であれば、その4分の1は20万円以下となりますので、処分の対象にはならないことになります。

 

 20万円を超える場合でも、他の資産と合算して99万円までは手元に残せる場合があるというのは、上の2つの事例の場合と同じです。

 

中小企業退職金共済、建設業退職金共済など

 退職金の中でも、上記のようなものについては、そもそも法律で差押が禁止されているため、自己破産手続の中でも処分されることはありません。

 

 以上のとおり、自己破産をするタイミングや退職金の種類によって、退職金を残せるかどうか大きく変わることがお分かりになるかと思います。

 

 支払不能であることが明らかであれば、早期に自己破産することがかえって老後の安定につながるケースもありますので、自己破産する場合にはタイミングを誤らないよう注意が必要です。

 

弁護士 平本丈之亮

 

 

自己破産すると、保険は解約しなければならないのか?~自己破産②~

 

 債務整理の相談を受けていると、自己破産を考えているが、生命保険など加入している保険を解約しなければならないのか、というご相談を受けることがあります。

 

 そこで今回は、自己破産の手続の中で保険契約がどのように取り扱われるかを御説明します。

 

掛け捨ての保険(医療保険、自動車保険など)

 この種の保険では、基本的に解約する必要はありません。

 

 ただし、多数の保険に加入した結果、保険料負担によって家計がマイナスになっているようなケースでは、保険に加入していること自体が浪費と捉えられる可能性もあり、また、自己破産の目的である経済的な立ち直りを実現するため、事実上、解約せざるを得ない場合もあり得ると思います。

 

解約するとお金が返ってくる保険(生命保険、学資保険など)

 解約してお金が戻ってくる保険の場合、20万円を超える金額が返ってくるときは、原則として解約されてしまいます

 

 これに対して、そもそも20万円以下の解約返戻金しか戻ってこない場合や、破産手続中あるいは破産手続が終わった後に新たに加入した保険については、処分の対象外となります。

 

 解約返戻金が発生する保険については、解約されてしまうと保険料や健康上の問題などから、新規に同じような保険に加入するのは大変だというケースもあり、破産者にとって酷な場合もあります。

 

 そこで、このような場合には、保険を破産者の手元に残すことを裁判所に申請する「自由財産拡張」(じゆうざいさんかくちょう)という制度を利用して、20万円を超える解約返戻金がある場合でも保険を解約せずに自己破産できる場合があり、実務上、広く活用されています。

 

破産手続中に保険金の支払事由が発生すると、受け取ることができない場合がある

 ただし、ここで一つ注意が必要なのが、破産手続前に加入した保険について、破産手続の進行中に保険金の支払事由が発生した場合です。

 

 このような場合、破産前に締結した保険契約によって発生する保険金請求権は破産財団に帰属し、破産管財人が取得した上で債権者への配当に回すことになります(自由財産の拡張は可能ですが手元に残す金額は制限がかかります。)ので、手続中にそのようなことがあった場合には破産管財人に速やかに報告して対応を検討する必要があります。

 

 

 どのような場合に保険を残せるか、また、残せるとしてもどこまで残せるのかはケースバイケースですが、今回ご紹介したとおり必ずしも解約しなくても良い場合があります。

 

 支払いに困ってしまい、保険を解約して戻ってきたお金も返済に注ぎ込んだ後で御相談に来られる方もいらっしゃいますが、適切な時期に相談に来られていれば手元に残せたというケースがありますので、保険加入中の方で自己破産などの債務整理をお考えの方は解約する前に弁護士にご相談下さい。

 

弁護士 平本丈之亮

 

自己破産すると、自動車はなくなるか?~自己破産①~

 

 岩手にお住まいの方であれば、自動車は生活必需品に近い物ですので、なくなってしまうと非常に困ります。

 

 支払いができなくなった場合の代表的な債務整理の方法に自己破産がありますが、自己破産をした場合に自動車がどうなるかというのは多くの方にとって大きな関心事です。

 

 そこで、今回は「自己破産すると、自動車はなくなるか?」というテーマについてお話します。 

 

クレジット会社でローンを組んで車を購入し、ローン残っている場合:難しい

 

 この場合、自己破産の結果というよりも、クレジット会社との契約(所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)といいます。)に従って自動車が引き揚げられてしまいますので、自動車を残すのは難しいことになります。 

 

ローンのない自動車を持っている場合:年式による

 

 この場合は、自己破産をしたことの結果として、自動車は処分されてしまうことになりますが、以下のようなケースでは、例外的に自己破産しても処分されないことがあります。

 

処分されないケース

①初年度登録から6年以上経過した国産普通自動車

 

②初年度登録から4年以上経過した国産軽自動車

 

 また、①②に当てはまらない新しい自動車や外国車でも、その自動車の価値相当額を用意できれば、その額を納めることで自動車を処分しないですむ場合もあります

 

 

銀行のカーローンを組んで自動車を購入した場合は?

 

 銀行のカーローンは、いわゆるクレジット会社のローンと異なり、契約時に自動車に担保(所有権留保)をつけていないことが一般的です、

 

 そのため、この場合はローンを完済した自動車を持っている場合と同様に、その車の年式によって処分されるかどうかが変わります。

 

 

 以上のように、自己破産をした場合でも自動車を手放さずにすむケースは結構あり、当事務所が手掛けたケースでも多くの方が自動車を手放すことなく自己破産することができています。

 

 また、どうしても自動車を手放さなくてはならないケースであっても、ローンの滞納が嵩んでしまう前に準備しておくことによって、自己破産に伴う生活への影響を最小限に抑えることが可能となります。

 

 どのような場合に自動車を手放さなくてすむのか専門的な判断が必要になりますので、自己破産などの借金相談をお考えの方は当事務所までごお問い合わせ下さい。

 

弁護士 平本丈之亮