相続人ではない孫への贈与は特別受益に該当する?

 

遺産分割において具体的相続分を計算したり遺留分侵害額請求において侵害額の計算をする際、相続人以外の者に対する贈与を相続人の特別受益として持ち戻して計算すべきかどうかが問題となることがありますが、相続人以外の者に対する贈与が問題となる典型的なケースの一つとして孫に対する贈与があります。

 

原則として特別受益に該当しないが、例外もある

特別受益は相続人間の公平を図るための制度であることから、相続人ではない孫に対する贈与は原則として特別受益には該当しませんが、例外的にそれが実質的にみて相続人に対する贈与と同視できる場合には特別受益として扱うという考え方が一般的と思われます。

 

近時の裁判例でも、被相続人が、相続人ではない大学生の孫に大学の授業料と下宿代として4年間で約514万円の贈与をしたことが親である相続人の特別受益に該当するかどうか、すなわち、遺留分の計算においてそれを持ち戻すべきかどうか争われたケースがありますが、裁判所は、実質的にみて相続人に対する贈与に当たると評価するに足りる事情が認められない限りは特別受益には当たらないとしたうえで、本件の贈与は孫に対する扶養義務の履行の一部ともみることができ直ちに相続人に対する贈与の実質があるとは評価できず、また、証拠上もそのように評価するに足りる事情はないとして持ち戻しを否定しています(東京地裁令和7年8月28日判決)。

 

上記裁判例では結論として特別受益にはあたらないとされましたが、孫に対する贈与を親である相続人に対する贈与と同視できるかどうかは事実認定の問題であり、贈与対象者の年齢、贈与の目的や意図、贈与物が何か(金銭か否か)、お金であればその資金の実際の流れ、贈与に対する孫自身の認識の程度などの様々な事情を考慮することになりますから、たとえば孫の年齢が低かったり、贈与物が金銭以外のもので受贈者による複雑な財産管理が必要な場合など(例えば収益不動産など)のようなときは、例外的に親への贈与と同視すべきではないか慎重に検討すべきケースもあると思われます。

 

弁護士 平本丈之亮