これまでも何度かご紹介したとおり、不貞行為が発覚した場合に不貞相手にその後の配偶者との接触を禁止し(接触禁止条項)、これに違反した場合には一定額の違約金を支払うことを誓約させることがあります(違約金条項)。
違約金条項には、①接触行為1回ごとにいくら払うと定めてこれを積み上げていくパターンのほか、②①のように接触行為ごとに発生するとするのではなく、接触行為によって高額の違約金が発生すると定めるパターンがあります。
このうち①については、違約金条項が夫婦関係の修復を目的としたものであるため、夫婦関係が破綻した後の接触行為に対しては違約金が発生しないという裁判例が存在するところですが、今回は②のような高額な違約金を設定した場合に、その一部が無効と判断された裁判例を紹介します。
違約金の合意が公序良俗違反を理由として(一部)無効になり得ることは過去の裁判例でもいくつかみられるところですが、この裁判例では接触禁止条項の目的や不貞行為に基づく慰謝料との均衡を考慮し、公序良俗に違反するかどうかのライン(上限)を設定しています。
違約金は高額すぎても問題ですが、逆に低すぎても抑止力として不十分であり夫婦関係の修復という接触禁止条項の目的に反することになります。実際のケースにおいてどの程度の額が上限となるかは不貞行為の態様や期間、発覚後の相手方の対応なども影響してくるのではないかと思われ、裁判官の価値観によって判断に幅が出てきそうなところではありますが、接触禁止条項と違約金条項も万能ではないことを示す一例としてご紹介した次第です。
弁護士 平本丈之亮