今回は、訪問販売で契約をした場合の解決法のひとつである「クーリング・オフ」についてのお話です。
たとえば、以下のような場合、一般の消費者は事業者と交わした契約を自由に解消することができるのでしょうか?
<設例>
先日、一人暮らしの母親が住む実家に行ったところ、茶の間に見慣れない契約書があった。
中身を見たら実家のリフォーム工事を依頼するものだったので母親に確認したところ、2月21日に自宅にリフォーム業者が訪問してきたため説明を聞き、その場で契約したということだった。
実家は古くなったもののこまめに手入れしており、まだまだリフォームは必要ないと思うので契約を解消したい。
このようなケースで威力を発揮するのが、「クーリング・オフ」です。
<クーリング・オフとは?>
クーリング・オフは、契約書等(法定書面)を受領した日から8日以内であれば無条件で契約を撤回できるという制度であり、訪問販売で契約をしてしまった場合にはよく利用される解決方法です(なお、契約の対象はリフォーム工事に限られず、一部適用が除外される取引はあるものの訪問販売であれば幅広く対象になっています)。
そのため、上の設例でもまずはクーリング・オフの利用を検討し、期間内に契約を撤回する旨の意思表示をすれば、契約はなかったことになります。
<注意点>
クーリング・オフは撤回の理由を問わないため、使い勝手の良い便利な解決法なのですが、いくつか注意点もあります。
①契約書面を受領してから8日以内に事業者に通知する必要があること(※1)
受領日から起算するため、上記の例でいえば2月28日までに通知しなければなりません。
point 8日以内に発送すればOK(「発信主義」)
×8日以内に業者に到着することは不要
②配達証明付の内容証明郵便で通知することが望ましい
ご自分で出すことも可能ですが、不安があれば弁護士に依頼することも検討した方が良いと思います。
③営業のためもしくは営業として契約された場合には適用されない(※2)
訪問販売のトラブルは、迅速に対処すればクーリングオフによって解決できる可能性がありますので、お悩みの方は弁護士や最寄りの消費生活センターなどにご相談なさってはいかがでしょうか。
※1 ただし、契約書面の記載に不備がある場合、8日を過ぎても認められる場合があります。
※2 なお、零細事業者が電話機リース契約をしたケースにおいて、営業のためもしくは営業として締結したものではないとしてクーリング・オフを認めた事例(名古屋高裁平成19年11月19日判決)もあります。
弁護士 平本丈之亮